転職を成功へ導く「キャリア棚卸しのやり方とコツ」

転職情報をリサーチしていると、「これまでのキャリアを棚卸ししましょう」という話をよくみかけます。しかしほとんどの人は、今までに自分のキャリアを、じっくりと振り返ったことなどないはずです。

さらに、キャリアを棚卸しする方法もよくわからないため、ついおろそかにしてしまう。これが現実ではないでしょうか。

こういった事態を回避するには、キャリアの棚卸しが必要な理由を明確にし、さらに棚卸しの具体的な方法を知ることしかありません。

そこで今回は、「キャリアの棚卸しが必要な理由」「棚卸しの具体的なステップ」「棚卸しのコツ」の3点について、わかりやすくご紹介していきます。

キャリアの棚卸しが必要な理由

キャリアの棚卸しが必要な理由

キャリアの棚卸しは、「これまでの人生で自分がなにをしてきたのか」を振り返る作業です。昔の自分を見つめなおすのは、過去の反省点とも真摯に向き合う必要があり、人によっては苦痛をともなう作業かもしれません。

したがって、キャリアの棚卸しを途中でやめないためにも、キャリアの棚卸しが必要な理由を、しっかりと理解しておいてください。

【キャリアの棚卸しが必要な理由4点】

  • 自分のやりたいことや志向性がわかる
  • できること・これから身につけるべきことが明確になる
  • 転職先へアピールすべき内容が整理できる
  • 自分の改善すべきポイントがわかる

ひとつずつみていきましょう。

自分のやりたいことや志向性がわかる

キャリアの棚卸しをおこなうと、まず自分のやりたいことや志向性が明確になります。やりたいことや志向性がハッキリすれば、今後のキャリア形成がブレることはなくなるでしょう。

具体的にいうと、「自分が興味のない分野の仕事を選んでしまう」「方向性の違う企業へ転職」「実力を発揮できずに結果を出せない」といった、ミスマッチによる失敗が起きにくくなります。

しかし多くの人は、キャリアの棚卸しに、あまり積極的ではありません。やり方もよくわからないし、前述のとおり、面倒で嫌な思いをすることが多いからです。だからこそ、転職前にしっかりとキャリアの棚卸しをしておけば、ほかの求職者よりも断然有利になります。

なんといっても、自分のやりたいことを明確にしたうえで面接に臨めますから、面接官との応対にも迷いがありません。その自信と確信は、必ず転職先に伝わります。

できること・これから身につけるべきことが明確になる

キャリアの棚卸しをおこなうと、前述の「自分のやりたいことや志向性」以外にも、「自分のできること」が明確になります。

ミドルシニア層の求人ともなれば、応募者は、それなりのキャリアとスキルをもつ人ばかりです。よほど特殊なスキルでもない限り、応募者のスキルや知識には、大きな差はないと考えておくべきでしょう。

となると、そういったライバルに勝つには、「自分は転職先のためになにができるのか」をいかに面接官に伝えられるかが勝負です。そのためにも、まずは、現在の自分ができることをしっかりと把握しておく必要があります。

また、できることがわかると、これから進みたい方向性に対して「今の自分になにが不足しているか」が、浮き彫りになってくるでしょう。

もしあまりにも不足している要素が多いようならば、焦って転職を急ぐよりも、まずは不足しているスキルアップに注力するべきかもしれません。いずれにせよ、キャリアを深堀りすれば、これからの自分の動き方が自然と見えてくるはずです。

転職先へアピールすべき内容が整理できる

前述のとおり、転職を成功させるには、転職先への適切なアピールが非常に重要になってきます。もちろん、面接でいきなりアピールする内容を考えるのはムリがありますから、事前にしっかりと内容をまとめておかなければなりません。

そのためには、自分の正確な現状把握が不可欠です。キャリアの棚卸しをしっかりとおこない、アピール内容を簡潔な文章にまとめておいてください。

  • 実績:これまでにどのような実績があるのか
  • 専門分野のスキル:どういった分野のノウハウをもっているか
  • 方向性:これまでのキャリアを入社後にどのように活かしていくか
  • 長所・短所:転職先できちんとした人間関係を構築できるか
  • マネジメントスキルの有無:年齢に応じたマネジメントスキルはあるか

アピール内容をまとめる際には、少なくとも上記の項目くらいは、なにを聞かれても即答できるようにしておきましょう。

改善すべき点・ありのままを受け入れる点の両方が明確になる

棚卸しで「できること」が明確になると、将来なりたい自分に不足している要素が、自然とわかってきます。

かりに海外でのキャリア志向の強い人が、現在TOEICが400点しかなければ、優先的に英語力を鍛えていく必要があるとすぐにわかりますよね。でも、こういったスキル的な要素は、これからの努力次第で、しっかりと身につけられる可能性が高いです。

ところが長所や短所といった、もって生まれた性格的な面については、正直そう簡単に修正できるものではありません。もちろん、悪い面を改善しようとする姿勢は大切でしょう。でもそれと同時に、今の自分をそのまま受け入れるマインドも、必要になってくると思うんです。

転職の成功という面からみれば、ムリに自分を変えようとするよりも、長所を受け入れてもらう努力のほうがよほど重要です。さらにいうと、短所をいかにマイナスなイメージを与えずに伝えられるかが、じつはかなり大切なポイントになってきます。

【短所の言い換え表現例】

  • 短気 → 感情表現が豊か
  • 優柔不断 → 慎重
  • 計画性がない → 臨機応変
  • 繊細 → こまやかな心配りができる

上記のように、言葉の使い方ひとつで、短所も長所として伝えることが可能です。ぜひ、上手な表現方法を、事前に準備しておいてください。

キャリア棚卸しのステップバイステップガイド

キャリア棚卸しのステップバイステップガイド

キャリア棚卸しのメリットがわかったところで、今度は具体的な棚卸しの流れについて解説していきます。

  1. キャリアゴールを明確に設定
  2. 過去の経験と実績をリストアップ
  3. 先ほどのリストをもとに強みと弱みを分析
  4. 自分の強みを活かせる求人をリサーチ
  5. 転職エージェントと相談

それでは、順番に解説します。

1. キャリアゴールを明確に設定

キャリア棚卸しで最初におこなうのは、自分のキャリアゴールの設定です。この時点でゴールが明確でない場合は、まず過去の棚卸しをしてから、あらためてゴール設定をおこなうようになります。

いずれにせよ、ある程度ゴールが決まっていないと、これから進むべき道がみえてきません。そうなると、まったく反対の方向へ進んでいることに途中で気づき、それまでの努力や時間がすべてムダになってしまうこともあり得ます。

なので、こまかいステップを決める前に、とにかくゴール設定を必ず優先的におこなってください。以下、キャリアゴール設定のポイントを3点挙げておきます。

  • できるだけ具体的に
  • 定期的に見直す
  • 第三者のフィードバッグをもらう

ゴールは、「2年後にはマネージャーになって部下をもつ」といった具合に、できるだけ具体的に設定するのがオススメです。(実際には、さらにこまかく設定していきます)

また、ゴールおよび途中のステップについては、定期的な見直しが必要です。AIのような技術革新の影響により、時代は驚く速さで変化しています。キャリアゴールも、そのときの状況に応じて、どんどん変更していくほうが自然でしょう。

なお、第三者のフィードバッグについては、のちほど「第三者から客観的な評価を受ける」で、詳しく解説します。

2. 過去の経験と実績をリストアップ

最初からキャリアゴールが決まっている人など、じつはそうそういるものではありません。もしゴールが明確でないのなら、とにかく「これまでの経験と実績のリストアップ」に取りかかってください。

振り返る内容は、基本的にすべてのできごとが対象です。過去の仕事やプロジェクトの成果はもとより、学生生活やアルバイト、ボランティア活動など、どんなことでも構いません。まずは、自分がこれまでに何をしてきたのか、自分の人生の整理をするのが重要なのです。

過去の自分と向き合う過程で、おそらくたくさんの気づきがあるでしょう。「スキルや実績」「強みと弱み」「好きなこと・嫌いなこと」「長所・短所」など、今までとくに意識してこなかった自分に、あらためて出会えるかもしれません。

ただし、棚卸しをする際には、どうしても過去の失敗や後悔と向き合うことになります。もしかすると、人によってはつらい作業になるかもしれません。でも、そうやって棚卸しをした過去のリストは、これからの転職活動の大きな武器になってくれます。

ぜひ、焦らずじっくりと取り組んでいきましょう。

3. 先ほどのリストをもとに強みと弱みを分析

リストアップした経験と実績をもとに、今度は自分の強みと弱みを分析していきます。とくに強みは、あなたという商品をアピールするための大切な武器です。

「こんなことも強みになるのかな……」というレベルであっても、まずは思いつく限りピックアップしてしまいましょう。実際に面接でアピールする強みは、すべての強みを見比べて選び、じっくりと言語化していきます。

かりに、「コミュニケーション能力が高く、チームの中でうまく人間関係を築ける」というのが強みであれば、もしかするとひとりでコツコツやる作業は苦手かもしれませんね。

これはあくまでも一例に過ぎませんが、得意と不得意は裏表の関係になっていることが多いものです。面接では、長所だけでなく短所も必ず質問されます。前述の長所と短所と同様、不得意なことをうまくプラスのニュアンスで表現できるように、準備をしておいてください。

とはいえ、嘘はいけません。経験豊富な面接官になれば、その場限りの誤魔化しや言い訳を見抜くのは簡単です。そもそも嘘をついて採用されても、一緒に働き出したら、すぐにバレてしまいます。

あくまでも、苦手意識を減らして、前向きな気持になるのが目的です。そのあたりは、どうぞ勘違いしないようにお願いします。

4. 自分の強みを活かせる求人をリサーチ

自分の強みと弱みが分かったところで、次は自分の強みを活かせる求人を探していきます。インターネット上の転職サイトにはさまざまな求人情報が載っているので、まずはどういった求人があるのか、ざっくりとリサーチしてみると、いろいろと見えてくるでしょう。

ただし、ほかのコラムで繰り返しお伝えしてきたように、メインとなる活動の場はあくまでもミドルシニア層に強い転職エージェントを選んでください。なんといっても、40代以降をターゲットにした案件が豊富だし、手厚いサポートが期待できますので。

転職エージェントについては、のちほど別途詳しくお話しいたします。

なお、40代以降の転職では、少しだけ発想の転換が必要です。というのも、ミドルシニアの転職先の多くは中小企業であり、よくも悪くも、さまざまな業務をひとりでこなさなくてはなりません。

つまり、専門分野以外に強みがあれば、その強みも高く評価してもらいやすいんです。もし営業以外にITの知識もあれば、営業ではなくオンラインのマーケティング担当として採用されるかもしれません。(並行して営業もやるようになるとは思いますが)

だから、あまり専門分野にこだわりすぎずに、柔軟な姿勢でリサーチしていただければと思います。

なお、給与や勤務地など、一般的な条件については、以下の記事で解説をしています。ぜひ、ご一読ください。

5. 転職エージェントと相談

先ほどもお話ししたように、40代以降の転職なら、必ずミドルシニアに強い転職エージェントを選んでください。20代をターゲットにした転職エージェントには、20代向けのノウハウしかありません。

年齢に合ったエージェントを選ばないと、当然良質なサポートは期待できないし、そもそも40代向けの求人が少ないです。

手前味噌になりますが、弊社のようなミドルシニア案件が豊富なエージェントの場合、あまり表に出てこないオフレコ案件も多く、地方の優良企業とも太いパイプがあります。

もちろん、ミドルシニアの転職サポート実績も豊富なので、多くの人が苦手とする面接対策や履歴書の書き方についても、的確なアドバイスがもらえます。

もちろん、転職エージェントとの相談では、しっかりと自分の強みや志向性を伝えてください。そうすれば、あなたの方向性を理解したうえで、ピッタリの求人情報を探してくれるはずです。

また、転職エージェントは企業の内情や業界の動向にも詳しいため、違った視点によるアドバイスで、見落としていたチャンスに遭遇できるかもしれません。

とにかく、転職エージェントは、あなたの味方です。エージェントと協力して転職活動に取り組めば、きっと満足のいく転職先がみつかるでしょう。

うまくいくキャリア棚卸しのコツとは

うまくいくキャリア棚卸しのコツとは

最後に、うまくいくキャリア棚卸しのコツを3つ紹介します。どれも重要なコツなので、ぜひしっかりと頭に入れておいてください。

自分と会社のキャリアをわけて考えよう

大企業に長く勤めている人や、大きな実績をもつ人に限って、会社の商品名やサービス名を自分のキャリアと考えがちです。

たしかに誰もが知っているような商品に携わった経験は、素晴らしいあなたのキャリアといえます。しかし転職先が知りたいのは、単なる商品名ではありません。あなたがその商品に対してどのように関わり、具体的にどういった成果をあげたのかが知りたいのです。

そういう採用側の心情を考えずに、サービス名や商品名ばかりを前面に打ち出す人は、間違いなく敬遠されます。せっかくの素晴らしいキャリアなのに、これではかえってマイナスにしかなりません。非常にもったいない話です。

繰り返しますが、自分のやってきたことと会社の実績は、きちんとわけて考えましょう。そのうえで、自分がこれまでになにをしてきたか、そのキャリアをもとに転職先でなにができるのかを、しっかりと伝えてください。

第三者から客観的な評価を受ける

キャリアの棚卸しをする際には、必ず第三者から客観的な評価を受けるようにしてください。

キャリアの棚卸しというと、部屋に籠もり、自分ひとりで過去の実績を振り返る。そういうイメージをもつ人が多いと思います。しかし実際には、ひとりで適切な棚卸しをおこなうのは、非常に大変です。

理由は、大きくふたつあります。ひとつは、多くの人は自分を客観視できていないから。もうひとつは、ひとりだとつい自分のよい側面にばかりフォーカスしてしまうからです。

友人に指摘されて、「えっ、自分てそんなイメージなの?」と思ったことはありませんか?「自分を一番知っているのは自分」とよくいわれますが、案外そうでもなく、他人のほうが冷静にジャッジしていることも多いものです。

また前述のとおり、棚卸しは、子どもの頃から現在までをまんべんなく振り返ります。そうなると、どうしても「失敗したこと・嫌だったこと」にも、対面しなければなりません。

もし過去に大きな後悔を抱えていたら……そういうネガティブな側面から目を逸し、都合のよい情報だけをピックアップしてしまう可能性があります。

そういった偏りを客観的な立場から修正してもらえるのが、第三者にサポートしてもらう最大のメリットです。社会人材学舎でも、「知命塾」というサポートシステムを用意しています。これからキャリアの棚卸しをする人は、ぜひ活用してください。

キャリアの棚卸しは、仲間の力を借りるとうまくいく

ここまで何度もお伝えしているように、キャリアの棚卸しには、第三者の客観的意見を取り入れるべきです。ただし第三者といっても、自分の親や友達から適切なフィードバッグをもらうのは、まずムリだと考えてください。

なぜなら普段の関係性から、親しい人の意見は、どうしても偏ったものになりがちだからです。一番親しい家族は、あなたの働く姿を基本的に知りません。これは、友人も一緒です。普段の気のおけないお付き合いをしているあなたのイメージで、アドバイスをしてきます。

そういったバイアス(偏見)を回避するには、キャリア構築の専門家に加えて、同じ条件でキャリアの棚卸しをする仲間のサポートが、非常に役立ちます。

棚卸しをリードしてくれる専門家の意見は非常に的確で役立ちますが、ともすれば「専門家からの絶対的意見」になりがちです。その点、仲間からの意見は、とてもストレートでシンプルです。専門的な知識もなく、また過去のあなたを知らないがゆえに、今のあなたを的確にフィードバッグしてくれるでしょう。

弊社が開催する無料セミナーなら、同じ境遇の仲間とともに、キャリアの棚卸しが可能です。ぜひ仲間と一緒に自分を見つめ直してみてください。

まとめ

転職を希望しているのは、あなただけではありません。条件のよい企業であれば、おそらく驚くほどたくさんの希望者が応募してくるはずです。そういった状況のなかで、あなたが転職を成功させるには、多くの転職希望者のなかからあなたを選んでもらう必要があります。

そのためには、まず自分のキャリアを、しっかりと棚卸ししなければなりません。キャリアの棚卸しがしっかりとできれば、自分のアピールポイントや志向性が明確になります。そうなれば、転職の際にも、しっかりと自分をアピールできるでしょう。

今回の記事を参考にして、転職の武器となる強みを、どうぞみつけだしてください。