「もう年齢的にも後がないから、今回の転職はぜひ成功させたい」
転職を検討中の40代は、誰しもそう考えていることでしょう。ところが終身雇用や年功序列という風土で長期間働いてきた40代には、これまで転職の経験がない方が多いのが実情です。
そのため、どうしても転職を甘く考える傾向にあり、転職に幻想を抱いてしまいがちです。転職に対して正しい認識をもち、適切な対応をしていかない限り、40代の転職はかなり厳しいものになるでしょう。
そこで今回は、40代の転職の実情や転職を成功させるためのポイントについて、詳しく解説していきます。
=目次=
40代の転職市場の現状と見通し
40代が転職を成功させたいなら、なによりも「40代の転職が厳しいといわれる理由」をきちんと理解しておくことが重要です。さらに転職市場が今後どのように動いていくのかも、冷静に判断する必要があります。
40代の転職「やめた方がいい」と言われる理由
40代の転職「やめた方がいい」と言われる最大の理由は、「40代以上向け求人案件が絶対的に少ない」からです。では、なぜミドルシニア層は企業から敬遠されてしまうのでしょうか。こまごまとした理由はありますが、結局のところ、「自社とのミスマッチングに対する不安」がすべてです。
転職をすると、仕事内容も仕事の進め方も利用できる社内の制度も、すべてが変わってしまいます。若くて柔軟な思考をもつ20〜30代なら、比較的容易に対応が可能でしょう。
ところが40代ともなれば、よくも悪くもすでに自分のスタイルができあがっています。そのため、「40代の人を採用しても、社風に馴染めずにすぐ辞めてしまうのではないか」と、敬遠されてしまうのです。
しかも、ある程度の給料と待遇を望む40代の転職者に対して、企業側はいきなり高い報酬を支払いたくありません。辞めてしまうかもしれないという不安があるので、最初は低めの給与設定で様子をみたいのが、採用側の本音なのです。
このように「転職する側と採用側のギャップ」が、40代の転職をむずかしいものにしているのは間違いありません。こうしたギャップ(40代に対するマイナスイメージ)の解消法については、のちほど詳しくお伝えします。
40代向け転職市場の将来予想
40代向け転職市場で勝ち残っていくには、今後の大きな変化にうまく対応できるかどうかが、鍵を握っています。
まずひとつめの変化は、テクノロジーの劇的な進化です。AIや自動化が進み、仕事の多くは機械に代わられてしまう可能性があります。株式会社野村総合研究所の試算※1では、その代替率は、約49%にも上るそうです。
将来の正確な予測は困難ですが、今後「AIシステムの開発」「AIの操作」といった、新しいスキルの習得が必須になるのは間違いないと思われます。
ふたつめは、少子高齢化による労働人口減少の影響です。少子高齢化により労働人口が減少するため、これから中高年の活躍が必須になります。ただし、AIや自動化の進化により、「単純労働」と「機械化できないハイレベル業務」の二極化が進む可能性が非常に高いです。
現在単純作業もしくは代替のきく定型業務に就いている人は、早めに「機械化できないハイレベル業務」へシフトしていかないと、いずれ近い将来十分な報酬が得られなくなるでしょう。
この辺の考察については、内閣府の「平成30年度年次経済財政報告※2」で、詳しく解説されています。将来の労働市場を知っておくためにも、ぜひ、一読してみることをオススメします。
40代でも新しい分野へ転職は可能か
結論からいうと、40代でも新しい分野への転職は十分に可能です。リカレント教育(社会人になってから継続的に受ける教育)が当たり前になり、オンラインで学べる環境も整ってきたことが、未経験分野への進出を身近なものにしてくれました。
重要なのは、新たな分野に興味を持ち、新しい知識を得るための投資をいとわない姿勢です。前述のとおり、今後はAIに関する勉強も不可欠になります。もちろん、「これまでに培った経験を新分野へいかに活用していくか」といった視点も必要でしょう。
とはいえ、40代が新分野へ転職するのは、決して簡単ではありません。未経験の中高年に就業のチャンスを与えてくれる企業は、やはり圧倒的に少ないです。さらに転職できたとしても、通常、転職した当初は一時的に収入が下がります。
そうならないためには、今まで身につけた経験やスキルをいかにアピールできるかが鍵となります。マネジメント能力やプレゼンスキル、コミュニケーション能力や論理的思考力などのポータブルスキルは、新しい業界への転職に大いに役立つでしょう。
未経験といっても、業種と職種が今までのキャリアの延長上にあることでポータブルスキルを活かすことができるのは強みになり、たとえ未経験であっても採用してもらえる可能性が高まります。報酬にしても、入社後にスキルを活かし結果を出せば、いずれ適正額へ修正されるはずです。
本当に興味のある分野なら、失敗を恐れずにチャレンジする価値は大いにあると思います。
【結論】しっかりと準備をすれば40代の転職も十分可能
40代の転職には、たしかに少なくない困難が伴うものです。しかし、適切な準備をおこなえば、転職の可能性は決して低くありません。
実際、総務省の労働力調査※をみると、35〜44歳の転職者は、56万人もいます。25〜34歳の転職者は75万人ですが、40歳を超えても30代と遜色ないレベルで転職はおこなわれているのです。
では、具体的にどのような準備が必要なのでしょうか。必要な準備は、大きく以下の4点になります。
- 徹底的な自己分析
- 人的ネットワークの構築
- 必要なスキルの習得
- 年齢に見合った転職エージェントの活用
年齢を問わず、転職を成功させるには、採用担当者に「この人を採用すれば会社にメリットがありそうだ」と思ってもらわなければなりません。そのためには、自己分析を徹底的におこない、自分の強みや実績などを明確にしておく必要があるわけです。
また、ある程度の年齢になると、知人からの紹介で転職の決まるケースが非常に多くなります。そういった紹介は、日頃から周囲の人を大事にしていないと決してもらえません。
スキルの習得については、「40代でも新しい分野へ転職は可能か」でも述べたとおりです。年齢に合った転職エージェントのサポートに関しては、別記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらの記事も読んでおいてください。
※参考:労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均結果
40代で転職する理由
「40代はキャリアも経験もあるからすぐ転職先が見つかるだろう」と勘違いしていないでしょうか。なんとなく転職を決断してしまうのはよくありません。40代の転職は厳しいと言われている中、それでも転職を決断する理由は必ずあるはずです。
40代で転職を成功させるために、自分が転職を決断した理由を今一度明確にしておきましょう。ここでは、最も多い40代での転職理由をご紹介します。
会社の将来性が不安
会社の業績や将来性に不安があることが転職を決意する理由の一つです。40代のうちに転職活動を進めておこうと考える方が多い傾向にあります。早期リストラに備えて、割り増しされた退職金を受け取るために率先して転職活動をする方もいるでしょう。今後の将来を見据えて、少しでも長く働ける企業に転職するのも悪くはありません。
人間関係
人間関係の悩みは、40代だけでなくどの世代にも多い転職理由です。キャリアがあり社会人経験が長い40代でもパワハラを受けているケースはあります。人間関係に対する不満を我慢しながら仕事を続けるより、新たな環境で仕事をしたほうが自分の本来の力が発揮できると判断した場合に、転職を決断する方は多いでしょう。
年収を上げたい
現在の年収がスキルに見合っていない、昇給の見込みがないと悩んでいる方は、年収アップのために転職を検討します。自社の業績悪化により給与が下がってしまった方もいるでしょう。40代で家庭を持つ親は、教育資金の確保に不安を感じているケースもあります。自分の実績や持っている資格が、希望年収に適切であれば転職を決断しても良いでしょう。
キャリアアップしたい
「これまでに積み上げたキャリアを活かしきれていない」「現在の業務内容やポジションを変えたい」と思う人もいます。例えば、企業の管理職の枠が限られていて昇格の見込みが感じられない場合もあるでしょう。「自分はどんなキャリアを歩みたいか」60代以降のキャリアを見据え、今のままでは達成できないと判断したら転職をするのが良いかもしれません。新たな活躍の場を求めて転職をする方は増えています。
40代で転職してよかったこと
40代で転職してよかったことは、今まで抱えていた悩みが解消されたという方が多いです。これまでのキャリアと経験が評価され、年収が上がったり役職が上がった方も少なくはありません。役職が上がることで、その分の権限が与えられるため仕事がしやすくなったと感じている人も多いでしょう。
また、抱えていた人間関係のストレスが解消されることもメリットです。仕事におけるパフォーマンスが上がることで、業績や売上も上がり自身のスキル向上にも繋がるでしょう。中にはストレスがなくなり健康診断の数値が良くなったという方もいます。
40代の転職活動は簡単ではありませんが、仕事に対して抱えているそれぞれの悩みが解決する可能性があります。新しい転職先を見つけるだけなく、転職先での業務内容や環境が自分自身に合っていれば、40代での転職活動を成功させたと言えるでしょう。
40代が転職を成功させるためのポイント
残念ながら、転職市場のメインターゲットは、20代と30代です。40代ともなれば、高度な専門性や経験が必要な上級職での募集になるため、求人数はどうしても少なくなります。
そういった狭き門を突破するには、転職に必要なポイントをきちんと押さえ、適切な対応をしていかなければなりません。この章では、40代が転職を成功させるためのポイントを紹介していきます。
自分の市場価値を高める
自分の市場価値を高めるためには、まず、現在自分が何に長けていて、それが市場でどの程度価値をもつかを知らなければなりません。そのために、まずは徹底した自己分析(後述)をおこなってください。
自己分析がある程度できたら、これからどういう道を進みたいのか「自分の志向性」もわかるので、志向性と現在の市場トレンドの整合性を確認します。いくらやりたいことが明確でも、市場トレンドから外れていたら、市場価値は低いままです。
現在なら、語学・IT・会計、そしてAI絡みのスキルを身につけておくと、どの業界でもかなり高く評価されるでしょう。
また、市場価値は、アピールのしかたでもだいぶ変わってきます。応募者が複数いて、同じようなスキルやキャリアなら、アピールの上手な人が選ばれやすいです。やりすぎない程度に、上手なアピールの方法についても、きちんと考えておきましょう。
40代にマッチした転職エージェントを選ぶ
よい条件で転職をしたいのなら、年齢にかかわらず、転職エージェントの活用が不可欠です。さらに40代以降の世代ともなれば、ミドルシニア向け求人を多く抱える転職エージェントを探さなければ、転職はまずうまくいきません。
冒頭でもお話ししたように、これまで転職の経験がほとんどない40代は、転職についての知識が不足する傾向にあります。
残念なことに多くの40代は、「転職エージェントはどこでも大差ない。どうせ求人案件はたくさんあるから、登録さえしておけば簡単に決まるだろう」と、軽く考えているようです。
ところが、ほとんどの転職エージェントは、20〜30代をターゲットに設定しています。こういった転職エージェントで求人に応募しても、おそらく面接にすら進めないでしょう。
もちろん、40代以降のミドルシニア求人を取り扱う転職エージェントもあります。ただし、40代向け転職エージェントは、ハイエンドもしくはパート・アルバイト向けがほとんどです。
40代の中間層向け求人案件を多くもつ転職エージェントに登録しないと、よほど突出したスキルや経験がない限り、満足のいく転職は厳しいでしょう。
採用企業が40代にもつマイナスイメージを払拭する
今は、40代ミドルシニア採用の転換期です。40代の求人が増加しているとはいえ、市場は流動的であり、絶対数はまだまだ足りていません。
しかし本来、スキルや経験が豊富な40代は、企業にとってもっとも必要とされる人材なはずです。それなのに採用企業が40代以降を積極的に採用しないのは、前述のとおり、40代以降のミドルシニアに対して不安とマイナスイメージがあるからです。
なかでも40代転職のメイン市場となる中小企業は、自分たちより規模の大きな企業で働いてきた人材に対して、大きな不安を抱えています。
「いくら優秀な人材でも、大企業出身者はとにかくフットワークが悪くて……」
「大企業の働き方を中小企業に期待されても困るし、ウチの社風に合わない」
こういったマイナスイメージを払拭できれば、あなたの採用される確率は一気に跳ね上がるでしょう。
そのためには、待遇にこだわらず、自分の強みをしっかりとアピールする熱意が必要です。この点については、のちほど詳しく解説します。
希望条件と志望動機を明確化する
転職先の採用担当者が一番気にする点は「志望動機」です。前職に不満があり転職を決断した場合でも、ネガティブな言葉は避けましょう。面接時で悪印象を与えないために、ポジティブな理由に変換した志望動機を用意しておくことが大切です。
また、採用されるために企業が求める人材のニーズを把握しましょう。志望動機を具体的に伝え、今まで積み上げてきた経験とスキルがどのように企業に貢献できるのかアピールすることが重要です。
自分がやりたい仕事と企業が募集する人材がマッチしていると、自社を志望した理由と熱意が伝わりやすく採用に有利です。
ポジティブな理由に結論づけて希望条件と志望動機を明確にしておきましょう。
40代の転職は情報収集が命
先ほどもお伝えしたように、大企業から中小企業への転職には、採用企業の不安を解消する努力が不可欠です。そのためには、まず企業がどういった人材を求めていて、どういう考えのもと事業をおこなっているのか、しっかりと情報収集しなければなりません。
具体的な情報収集の方法ですが、以下の3点が考えられます。
- 自分で調べる
- 担当コンサルタントに相談する
- 転職フェアやマッチングイベントに参加する
なんといっても、転職は情報量が勝負です。転職エージェントに登録しても、自分で積極的に動く意識がないと、なかなかよい情報は入ってきません。その点、常日頃からアンテナを張っておけば、一般には出回らない情報が飛び込んでくる可能性は高いです。
大手転職サイトに掲載されていないだけで、有能な40代を求めている企業は、世の中にたくさんあります。そういった貴重な案件を、高感度なアンテナで、ぜひ探し出してください。
40代転職を成功させる職務経歴書
「職務履歴書」と「履歴書」は異なります。
「履歴書」は自分が歩んできた経歴を記載し、人となりを伝える役割があります。
しかし、採用担当者が知りたい情報はそれだけではありません。企業の即戦力として活躍してくれるかどうかを見極める必要があります。
「職務履歴書」は経験や知識、業務内容を記載した自分をアピールする役割があります。直近の職歴を遡り即戦力として何を行なってきたか記載しましょう。どのような成果を出したか具体的に数値化することが重要です。将来の目標を明確に持ち、ストーリーを組み立てて自己アピールする方法も効果的です。
過去の栄光を記載する書類ではないので注意してください。20年前の実績を記載しても、直接的に関係のない内容は意味がありません。
また、長すぎないように簡潔にまとめるのを意識してください。職務履歴書は書式が決まっていないため、読む人の気持ちを考え作成する必要があります。例えば、細かいですが文字フォントやサイズを読みやすいように整えることも大切です。
入社後の心構え
転職先が決まったからといって油断してはいけません。大事なのは、入社後に少しでも早く職場環境に馴染むことです。職場に馴染むことができれば、より良い人間関係を築けるため働きやすい環境で仕事ができます。
良好な職場環境を作るために、職場の人とのコミュニケーションを大切にしましょう。基本的なことですが、積極的に声をかけて相手の名前をたくさん呼ぶことを心がけてみてください。笑顔で挨拶をするのも効果的です。40代の転職においても、良好な人間関係を築くために初心に戻る意識が必要です。
また、転職先の職場ルールを理解するように努力しましょう。よく「前職はこうでした」と発言する方は多いですが、あまり良い印象は持たれません。前職のほうがやりやすかったとしても、まずは新しい職場のやり方を受け入れることが必要です。転職先のさまざまな資料を見て知識を増やし、現状を把握しましょう。その上で改善すべき点があれば、違うやり方を提案してみても良いかもしれません。いきなり前職のルールを押し付けるのではなく、現場の意見も確認しつつ慎重に進めていきましょう。
40代でホワイト企業に転職が決まったとしても、働きやすい環境を整えるのは自分次第です。
あとから後悔しないために、知っておきたい転職と年収の関係
転職サイトには、「年収1,000万円以上を狙える」といった甘い宣伝文句がよく書かれています。そういった文言をみると、つい「転職すると今より年収が上がるのかな」と期待してしまいますが、実際は人によって大きく異なるのが現実です。
「転職で年収が上がる人と下がる人」その差は一体どこにあるのか、これからその違いを解説していきます。
転職をすれば年収はダウンする
一般的に、転職をすれば年収はダウンします。なぜならば、40代の転職先は、中小企業がほとんどだからです。
大企業と比べて中小企業は、売上も利益もかなり小さくなります。そうなれば、給与テーブルの水準が、大企業よりも低く設定されるのは当然です。
かりに、もともと中小企業で働いていたとしても、いいところ現状維持が精一杯。年収がアップするのは、よほど実績がある人だけでしょう。
とくにキャリアチェンジをした場合、年収は大きく下がると考えておくべきです。キャリアチェンジをすれば、これまで身につけた知識や経験をあまり活用できないので、これはやむを得ないでしょう。
ただし、転職によってダウンした年収が、そのままとは限りません。中小企業はトップの裁量が大きいので、結果さえ出せば一気に待遇は改善される可能性があります。このへんの事情については、のちほど詳しくお話しします。
年収が上がるのはどんな人?
転職して年収が上がるのは、下記にあげたような、いわゆる「高スペック」と呼ばれる人たちです。
- 地頭がよく、業務内容をすぐに理解できる
- コミュニケーション能力が高い
- 高い専門性と豊富な経験
- 圧倒的な実績
40代ともなれば、専門性の高い仕事や管理的な仕事を期待されますから、高スペックが優遇されるのは当然といえます。
ただし、いくら能力があっても、企業風土に馴染めない人は高く評価されません。その代わり、「高スペックで極端に自己主張をすることもなく、人間的にバランスが取れた人なら、いくら報酬を払っても必ず採用したい」と考える経営者はたくさんいます。
また絶対数は少ないですが、中小企業から大企業に転職できれば、年収がアップする可能性は高いです。前述のとおり、大企業の給与テーブルは中小企業よりも高く設定されているので、特別なことをしなくても自然と年収はアップします。
ほかにも「日系企業 → 外資系企業」のように、賃金体系の異なる組織に転職する場合、年収の増加するケースが多いようです。
【結論】年収は転職後の成果に比例する
さきほど、40代の転職で年収をアップできるのは、高スペックかつ採用企業の不安を解消できる人材だとお話ししました。しかし転職後の最終的な年収は、結局、あなたがどれだけ会社に貢献できるかで決まります。
というのも、中小企業が中途採用する場合、初任給を低く設定しているケースが非常に多いのです。最初から報酬を高く設定してしまうと、もし入社後にその人が「期待外れ」だったとしても、簡単には報酬を下げられないからです。
その代わり実績をあげれば、「経営者の一声」で、すぐに報酬へ反映させてくれることも少なくありません。私自身、以前勤めていた小規模組織で、同様の経験をしました。前職年収の2割ダウンで入社したものの、半年後には前職超え、3年後にはなんと、前職のほぼ2倍の年収となったのです。
すべての会社に当てはまるとは限りませんが、入り口の報酬額だけで判断するのは非常にもったいないと思います。実力次第であとから報酬はあげられるのですから、いったん年収ダウンを受け入れ、まずは転職を優先するのが賢い戦略といえるでしょう。
40代でも転職を成功させる人がもつ特長
せっかく転職するのであれば、前職よりいい役職に就いて、満足のいく報酬をもらいたいと誰もが思うものです。しかし、本来転職市場の中心は20〜30代です。あまりこだわりすぎると、転職の可能性自体をつぶすことにもなりかねません。
ここでは、転職に成功する40代が必ずやっているポイントをご紹介します。
年収や待遇にこだわらない
ここまで何度もお話ししたように、40代が転職を成功させるには、あまり年収や待遇にこだわらないのがポイントです。
とはいえ、40代・50代というと、一般的に会社員生活のなかでも一番年収が高い時期です。部長・取締役など、責任あるポストに就いている人も少なくないでしょう。転職しても今の待遇を維持したいという気持ちは、非常によくわかります。
それでもやはり、収入や待遇に対する過度なこだわりは捨ててください。前述のとおり、結果さえ出せば、あとから報酬はアップします。生活ができないようでは困りますが、多少の年収ダウンならいったん受け入れて、とにかく転職自体を成立させるのが最優先です。
そもそも大企業で働き続けたとしても、いずれは早期退職や役職定年といった「ミドルシニア外し」の洗礼を受けるでしょう。報酬が多少高くても、こういったやりがいのない状況で働くのはツライものです。
それならば年収や待遇にはこだわらず、新しい職場で請われて働くほうが、よほど充実した社会人人生だと私は思います。
転職前に徹底的な自己分析をおこなっている
40代の転職では、徹底的に「即戦力」が求められます。「自分は採用企業のためになにができるか」を明確にアピールできないと、転職はかなり厳しくなるでしょう。そのため、40代で転職を成功させる人の多くは、徹底的な自己分析をおこなっています。
40代ともなれば、どんな人でもそれなりに経験が豊富で、やれることもたくさんあるはずです。そういう状況のなか、自己分析ができていないまま面接を受ければ、当然自分の強みをうまくアピールできません。
おそらくあなたは、どこかでみた「よくある内容」を話すだけになり、そういう表面的な話を面接官は敏感に感じ取るでしょう。
とはいえ、自分ひとりで正確な自己分析をするのは、なかなか困難だと思います。どうしても、自分に対する評価は甘いものになりがちですからね。その場合は、第三者からフィードバックをもらうのが一番です。
正確な自己分析のポイントについては、別記事で詳しく紹介しています。ぜひ、そちらの記事も確認してみてください。
転職活動期間の目標を定めている
40代の転職はみじめだと思われる傾向にあります。転職活動がなかなか上手くいかずに挫折してしまうこともあるかもしれません。
転職を諦めてしまわないように、転職活動期間の目標を定めましょう。応募書類の準備の目安や、応募から内定までの想定期間を定めておくことで、転職活動が長期化することを防止できます。
また、自社を退職する前から転職活動を進めておくこともおすすめです。業務のブランクがないことは転職先に良い印象を与えます。また、収入も途切れる心配がないため、焦らず冷静に転職活動に臨めるのがメリットです。
積極的なアプローチ
精神論のようですが、ミドルシニアの転職において、「積極的なアプローチ」は本当に重要だと思います。
繰り返しますが、転職市場の中心は20〜30代です。40〜50代の求人は増加傾向にあるものの、まだまだ様子見の企業ばかり。だから、こちらから積極的にアプローチしなければ、面接にさえこぎつけられないのが現実なのです。
具体的なアプローチとしては、「40代の転職は情報収集が命」でもお話ししたように、「自分で企業情報を調べる」「担当コンサルタントに相談する」「転職フェアやマッチングイベントに参加する」などが考えられます。
ある程度の年齢になるとどうしても効率的にものごとを進めようとしますが、こと転職に関しては、とにかくがむしゃらに行動してみるべきです。
多少年齢がオーバーしていようが、なんなら求人が出ていなくても、自分から「こういうことができます。ぜひ御社で働かせていただけないでしょうか」とアプローチしてみてください。
もちろん、しつこくて嫌われてはダメですが、あなたのそういった情熱を評価してくれる会社は必ずあります。
転職後のキャリアプラン設計
転職先で仕事を続け、将来なにを目指してキャリアを重ねていくか計画しておくことは必要です。これまでの経験を振り返り、自己分析していく中で自分の強みを見つけましょう。自分の強みが見えてくれば、得意分野や経験豊富な知識が明らかになるため、面接でも有利にアピールできます。
自身のキャリアプランと転職先のキャリアパスが異なるようであれば採用されません。応募しているキャリアパスが自身のキャリアプランとマッチしていることを面接時にアピールすることで、40代でも転職を成功させる可能性が高まります。
将来自分がなりたい姿をイメージし、転職先の応募ニーズと合致しているか明確にしておくことが重要です。
40代成功する転職の流れ
ここまでずっと、「40代以降のミドルシニアが転職を成功させるための心構え」について、お話してきました。心構えができたら、あとはいよいよ実際に転職活動をスタートです。
とはいえ、波風を立てずスムーズに退職・入社までおこなうのは、じつは思っているよりも簡単ではありません。場合によってはトラブルになることもありえますから、転職の流れをしっかりと把握して上手に切り抜けたいものです。
最後にこの章では、「1:準備期間、2:応募・面接、3:入退社準備」という転職の流れに沿って、転職時のポイントを解説します。
1.準備期間
実際に転職をはじめる前には、余裕をもった準備期間が必要です。勢いで会社を辞め、準備なしで応募をすれば、受かるはずだった案件にすら落ちてしまう可能性があります。
この準備期間中、優先的にやるべきことは下記の3点です。
- 転職の理由と目的の明確化
- キャリア / スキルの棚卸し
- 企業 / 業界のリサーチ
なかでも、「転職の理由と目的の明確化」は、成功する転職の基本となるべき重要なポイントです。「どうして前職を辞めるのか」「新しい職場でなにがしたいのか」、そういうことを明確にしておかないと、転職先でもまた同じような状況に陥ってしまうでしょう。
また準備期間中は、転職エージェントに登録をし、書類などの準備を進める時期でもあります。40代の転職では、履歴書や職務経歴書で採用企業の興味を引けなければ、面接すら受けられない可能性が高いです。
40代以降の案件を数多く手がける転職エージェントのサポートを受けながら、しっかりと準備をしていきましょう。
2.応募・面接
転職エージェントから紹介された求人で気になる企業があれば、いよいよ応募・面接へと行動開始です。
いうまでもありませんが、事前に自分の状況や考えをしっかりエージェントに伝えておけば、できるだけあなたにマッチした案件を紹介してくれます。だからこそ「理由・目的の明確化」「キャリア・スキルの棚卸し」が、とても重要になってくるのです。
ただし、数ある転職エージェントのなかには、条件のよくないブラック求人を紹介する不誠実な会社も存在します。そういったダメな転職エージェントに引っかからないように、注意してください。
なお、この段階で注意したいのが、面接日や内定への回答といった「日程調整」です。複数の企業を受けた場合、希望順位が低い企業の内定が先に出てしまい、本命の結果が出る前に回答をしなければいけない状況がわりと頻繁にあります。
こういった悩ましい状況を防ぐためにも、転職エージェントと相談をしながら、ムリのない日程調整を組んでいきましょう。
3.入退社準備
面接を経て無事転職が決まれば、今度は退社手続きと入社の準備が待っています。退社の意思は、民法では退職の2週間前までに申し出ればよいことになっていますが、通例として遅くても1〜2カ月前には伝えるという会社が多いようです。
退社の意思表示が遅く、会社にマイナスな印象を与えると、あとからどんな形で足を引っ張られるかわかりません。とくに現在は、SNSなどで簡単に悪評が広まってしまう時代です。
「立つ鳥跡を濁さず」ということわざどおり、引き継ぎなどもきちんとおこない、トラブルのないように心がけてください。
また、年齢が高くなり役職に就いていれば、引継ぎや退社の挨拶まわりに、思ったよりも時間と手間を取られます。退職前に有給休暇を消化するという人は、早めに行動し、残った人へ迷惑をかけることのないようにしたいものです。
まとめ
以前に比べて、40代の転職市場は確実に拡大してきています。新しい職場で再スタートを切りたい40代以降のミドルシニア世代にとっては、非常に歓迎すべき状況です。
しかし40〜50代は、これまでに転職をほとんど経験してきていない人が多く、転職への認識が甘い傾向にあります。転職エージェントに頼りすぎず、自分で積極的に行動するよう心がけてください。
また、転職で年収が上がるかどうかは、最終的にあなたがそれだけの実力を持っているかどうかにかかっています。今回紹介した 「40代でも転職を成功させる人がもつ特長」を意識しながら、在職中にしっかりと準備をしておきましょう。
なお、当社でも職業紹介サービスを行っています。エージェントがご希望をお聞きし、最適なお仕事をご紹介させていただくシステムになっています。
興味のあるかたは、ぜひお気軽にお申し込みください。