転職先企業をリサーチしていると、どうしても自分の条件を優先して、企業を探してしまいます。
しかしよく考えてみると、選ぶのはあくまでも転職先の企業です。そう考えると、転職を成功させるには、「転職先が自分を雇うメリット」をいかに提示できるかが、大事なポイントだと気づきます。
雇用のメリットを提示するには、まず企業内容をしっかりと理解するのが先決です。徹底した企業研究があってこそ、はじめて自分の強みを相手に提示できるのですから。
とはいえ、相手先企業の情報をどうやって調べればいいのか、その方法がよくわからないという人も多いと思います。そこで当記事では、転職先企業を研究するポイントと、具体的な企業研究の方法について詳しく解説していきます。
これから転職をお考えのかたは、ぜひ最後までお読みください。
=目次=
企業研究の前にまずは企業研究をする理由を明確にしておく
冒頭でお話ししたように、転職には入念な企業研究が不可欠です。ただし、せっかく企業研究をしても、その目的が曖昧だと、思うような成果は得られません。
実際に企業研究へ取り組む前に、まずは企業研究の目的を今いちど明確にしておきましょう。
自分と企業の相性を確認するため
転職となると、どうしても業務内容や待遇などに関心が向いてしまいがちです。しかし、どんなによい条件でも、自分と合わない職場なら、転職後の仕事はつらいものになってしまいます。
だからこそ、転職を希望する企業の研究を念入りにおこない、自分との相性をしっかりと見極める必要があるのです。
転職先企業との相性をみるには、面接時に確認するのが一番ですが、面接前にもできることはたくさんあります。
まずはコーポレートサイトと求人情報を、じっくりと読み込んでください。建前で書かれた内容もあるかもしれませんが、やはりこういった情報からは、会社の理念や企業風土がなんとなく滲み出ているものです。
逆に、コーポレートサイトがきちんとしていない企業は、発信力や先見性に少々問題があると考えられます。
また当たり前ですが、会社の規模や業務内容、業績などは、とくに入念なチェックが必要です。社員のコメントや会社関係の画像などがあれば、そちらにも忘れずに目を通しておきましょう。
入社してから「こんなはずじゃなかった……」ということのないように、コーポレートサイト・求人募集サイト・ネットでの評判、あらゆる角度からの相性チェックを強くオススメします。
将来性をチェックしておくため
ひと言で企業研究といっても、大きく「業界全体の研究」と「個別企業の研究」にわかれます。企業研究の大きな目的として、将来性のチェックがありますから、両者をバランスよくおこなっておきたいものです。
いくら興味のある業務内容でも、業界全体が斜陽傾向にあれば、将来性には疑問符がつきます。言い方は悪いかもしれませんが、わざわざ泥舟に乗ることのないよう、まずは業界全体の状況をしっかり研究してください。
業界の研究が終わったら、今度は特定の企業に対する研究をしていきます。具体的には、前述のとおり、コーポレートサイトやIR情報などを中心に、研究していくようになるでしょう。
もし情報量が少なくて企業研究が進まない場合は、転職エージェントに相談してみるのもよい方法です。とくに中小企業の情報は開示されている量に限りがありますから、中小企業と太いパイプのある、私ども社会人材学舎のサポートを活用していただければと思います。
採用率をアップさせるため
企業研究する目的は、最終的にいうと、採用率をアップさせるためです。企業研究を事前におこなっておくと、まず面接官から「しっかりと勉強したうえで応募してくれたんだな」と好印象をもってもらえます。
同じような経歴とスキルをもつ応募者が複数いれば、当然下調べを入念におこなってきた応募者が有利になるでしょう。逆の立場になれば、すぐにわかることです。
また、面接時には、必ず志望動機を確認されます。その際、企業研究がしっかりとできていれば、企業ニーズを踏まえた志望動機や自己PRを提示できるはずです。
逆に企業研究を怠れば、企業についての質問にうまく答えられず、決して思うような結果は得られません。表面だけ耳障りのいい受け答えをしても、面接官は採用のプロですから、あなたの真意などすぐに見破ってしまいます。
「事前の企業研究は採用率を大きくアップしてくれる」ということを忘れずに、しっかりと企業研究に取り組んでください。
転職先企業の研究をおこなう4つのポイント
転職における企業研究の目的が明確になったところで、次は企業研究のポイントを4点解説していきます。
- 「転職先企業へなにができるか」を明確にする
- 自分が転職先に魅力を感じる理由はなにか?
- 求人票に載っていない情報こそ手を尽くしてリサーチ
- 職場の雰囲気を実際に確認してみる
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
「転職先企業へなにができるか」を明確にする
転職先企業の研究をしながら、自分と企業の相性を見極めると同時に、「転職先企業へなにができるか」を明確にしていきます。
理由は冒頭でも触れたとおり、採用のメリットを相手企業に提示できないと、採用してもらえないからです。
厚生労働省がおこなった転職者実態調査※(2015年)によると、企業が管理職や専門職の中途採用をおこなった理由は、「経験を活かし即戦力になるから」「専門知識・能力があるから」がそれぞれ約65%を占めています。
もちろん「経験・専門知識・能力」といっても、企業ごとに具体的な内容は異なります。だからこそ、企業研究をしっかりとおこない、企業が求めている人物像を明確にする必要があるのです。
自分が転職先に魅力を感じる理由はなにか?
「自分との相性を見極める」とも関係する内容ですが、転職先を研究する際に魅力を感じた理由は、非常に大事です。魅力を感じたポイントは、いわばあなたの仕事に対する価値観ともいえます。
残念ながら、すべての条件が満たされる転職はまずありません。だから私たちは、数多くある転職条件に、優先順位をつけておく必要があります。この優先順位が明確でないと、転職後に不満が出て、今後何回も転職を繰り返すようになるかもしれません。
もちろん優先順位は人それぞれ。仕事内容や働きがいを大切にする人もいれば、報酬や勤務地などの待遇面を重視する人もいます。これは、自分の価値観と置かれた環境によって、自分で決めればいいと思います。
ただし、40〜50代の転職では、転職先企業の規模は小さくなるケースがほとんどです。当然、報酬や待遇面も、今までより下がると考えてください。
したがって、待遇にこだわりすぎると、転職自体がうまくいかないことも考えられます。あまり理想を追いかけすぎず、魅力を感じた部分にフォーカスして、楽しく第二の職場を楽しむほうが得策かもしれませんよ。
求人票に載っていない情報こそしっかりとリサーチ
企業研究の基本は、前述のとおり、コーポレートサイトと求人情報の確認です。コーポレートサイトは当然として、じつは求人票にも、会社の雰囲気を推測できる情報がたくさん掲載されています。
だからこの2つを入念にチェックすれば、かなりの情報が手に入るはずです。ただし、世の中には応募時の条件と実情が異なる、いわゆる「ブラック案件」も少なくありません。
こういったブラックな案件を回避するには、口コミをリサーチするのが一番です。ある程度の規模をもつ企業なら、口コミサイトをみると、たいてい口コミが掲載されています。
時間のあるときにでも、会員登録数700万人を誇る「転職会議」のような有名口コミサイトを、いちど覗いてみるとよいでしょう。
もちろん、こういった口コミを鵜呑みにするのは、とても危険です。あくまでも参考程度に留め、口コミを判断の基準にするのは絶対にやめてください。
職場の雰囲気を実際に確認してみる
「会社の仕事が合わず、転職後すぐに退職してしまった」ともなれば、応募側・採用側、どちらにとっても不幸です。
そういった転職のミスマッチを防ぐためにも、もし可能なら、面接前の職場見学をオススメします。考えてみれば、職場見学はメリットだらけです。応募者からすると、実際に働く場所を確認できれば、応募への不安を払拭できます。
企業側にとっても、雇用のミスマッチを回避できれば、ムダな採用コストがかかりません。また面接とは違い、見学時ならリラックスした雰囲気で、応募者の人となりをさりげなく確認できます。
とはいえ、実際に職場見学まで対応している企業は、まだまだ少数です。その場合は、弊社のような中小企業とパイプのある転職エージェントに、相談してみてください。
見学は厳しいとしても、転職エージェントだからこそ知り得た生きた情報を、いろいろとアドバイスできますので。
転職先の企業研究ワークシートの作成方法
転職先の企業研究を効率よく進めるには、企業研究ワークシートを作成すると良いでしょう。企業研究ワークシートで情報を整理しておくことで、転職活動を進める際に役立ちます。
ここでは、企業研究ワークシートの作成においてチェックすべき項目をご紹介します。
自己分析と業界研究
転職先の企業研究をする前に、まずは自己分析を行いましょう。自分のスキルや興味、価値観、目標を理解することで、自身に合った業界や職種を判断する材料となります。
なぜ転職をしたいと思ったのか、将来的に目指す目標はなにか明確になっているでしょうか。自己分析を踏まえて自分の優先順位や目標を明確にしたら、その結果に基づいて業界研究を行うことで効率よく転職活動ができます。
自身が興味を持っている業界の求人市場調査、成長性、職種や求められるスキルなどを詳細に調査してみましょう。しっかりと業界研究を行うことで、自分の興味や目標とする職種の選択肢が増えるかもしれません。
業界研究を踏まえて、希望しない業界の把握もできるため無駄な時間を省くことも可能です。自身の強みだけでなく、弱点も把握して転職先を考えましょう。
3C分析
3C分析とは、「自社(Company)」「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」の3つを軸にした市場環境の分析に使用されるフレームワークです。マーケティング戦略や事業計画の際に用いられる手法になります。3C分析を用いることで、自社製品やサービスの強み、競合他社のビジネス戦略、顧客のニーズを調査し戦略を立てられます。
このマーケティング分析を転職活動に活用すると、自己分析において情報が整理できるため大いに役立つでしょう。以下にて、企業研究をする際の自己分析に応用する方法をひとつずつご紹介します。
「顧客(Customer)」
3C分析の「Customer」とは、顧客や市場分析を指します。具体的には、市場規模や市場の成長性、顧客ニーズの分析をするのが一般的なマーケティングで用いられる手法です。
転職を目的とする企業研究においては、「企業」の分析が該当します。企業が取り扱っている商品や店舗、企業規模や経営状態なども可能な限り調査してみましょう。企業分析を十分に行った上で、自分にとってどんな部分がメリットとなりデメリットとなるのか明確にできます。
「競合(Competitor)」
転職先の企業研究ワークシートを作成する時は、競合他社を把握しましょう。本来、競合他社の市場や顧客変化をリサーチし、競合が市場変化にどのような対応をとったのか、その結果と理由を分析します。
つまり、希望している企業の競合相手はどんな企業なのか、他に応募しているのはどんな人達かを探ることで、自分が企業に対してできることが明確になり、より説得力のある志望動機をアピールできるため転職活動に役立つ材料となるでしょう。
「自社(Company)」
自社での課題や戦略を検討します。競合他社ができていない部分を見つけ、自社と競合との比較をすることで、自社で取り組むべき戦略が立てられます。
転職活動においては、自己分析のことを指します。企業分析と競合分析を踏まえて、自分がその企業でなにができるのか考えましょう。自分の強みと弱みを再度確認することで、希望とする企業に対して貢献できることがなにか明確になります。
転職先企業を研究する具体的な方法
この章では、転職先企業研究の具体的な方法を5つご紹介します。
- コーポレートサイトをじっくりと読み込む
- 採用情報は念入りに
- IR情報で企業体質を調べておく
- 業界全体の動向もチェック
- 社員や経営陣と直接触れ合える「知命塾」の活用
詳しく解説します。
コーポレートサイトをじっくりと読み込む
転職を考えた時点で、ほとんどの人が転職希望先のコーポレートサイトを閲覧しているでしょう。しかし、コーポレートサイトをサラッと読み流しているとしたら、それは非常にもったいない話です。
もちろん、すべてのコーポレートサイトが、充実した内容とは限りません。なかでも中小企業の場合は、掲載されている情報量が少なくて、欲しい情報がほとんど手に入らないこともあるでしょう。
また「コーポレートサイトの情報は、あくまでも対外的によく書かれたもので、本当の実情はわからないよ」そういった声も聞こえてきそうですね。たしかに、その意見には一理あります。
それでも企業トップの理念や業務の特徴など、コーポレートサイトで確認できる情報はたくさんあります。なによりコーポレートサイトをみれば、社風というか、企業のもつ雰囲気はなんとなくわかるものです。ぜひもういちど、じっくりとチェックし直してみてください。
採用情報は念入りに
当たり前の話ですが、転職を希望する人に直接関係してくるのが、採用情報です。まずはなにをおいても、採用情報を念入りに確認してください。
仕事の内容も重要ですが、給料などの待遇も同じように気になるものです。少なくとも、下記にあげた条件は、ひと通り確認しておきましょう。
- 給与額・賞与額・昇給
- 勤務時間・平均残業時間
- 勤務地・転勤の有無
- 年間休日・有給休暇
- 研修や資格取得への支援体制
また40〜50代の転職においては、従業員の年齢層も重要なポイントです。あまりにも若手が多い会社では、やはり働きにくいでしょう。
もちろん転職では、すべての条件が完璧に揃うことは稀です。転職を成功させるには、前述のとおり、条件に優先順位をつけて高望みはしないことがポイントになります。
IR情報で企業体質を調べておく
IR情報は、投資家や株主に対して、会社の状況を報告するための資料です。上場規模の会社なら、必ずホームページでIR情報を公開しています。
IR情報は、売上高や今後どういった分野に注力していくのか、企業の体質や将来性を確認できる重要な情報源です。その企業が転職に値するかどうかを知る、大きな助けになるのは間違いありません。必ず目を通しておきましょう。
また実際の面接時には、企業について質問をされることがよくあります。その際にIR情報を頭に入れておけば、「しっかりと事前調査をしている人」という評価が得られるでしょう。
もしできれば、ライバル企業のIR情報もチェックしておきたいところですね。業界全体の動向がわかりますし、もしかするとライバル企業のほうが、転職にふさわしいことも考えられます。
業界全体の動向も忘れずにチェック
前述のとおり、転職先企業だけでなく、業界全体の動向も忘れずにチェックしておきたいところです。
ミドル・シニア世代の転職では、これまでの経験とキャリアを活かせる同系統の業界が主な候補になるはず。しかしその業界自体が斜陽産業で、将来性があまり見込めないのであれば、思い切って別な業界を選ぶのもひとつの考え方です。
未経験業界といえども、パーソナルスキルや管理能力などは共通して評価されます。とくに地方の中小企業では、キャリアがあり管理能力をもつ「地力のある人材」を渇望しています。
総務省の業種中分類をもとに考えれば、世の中にある業界はざっと100種類以上。そのなかには、もしかするとあなたを必要としている、異業種の優良企業が存在しているかもしれません。
これまでキャリアを積んできた業界にこだわりすぎず、ぜひ柔軟にリサーチの範囲を広げてみていただければと思います。
転職先の企業研究を成功させるコツ
転職先の企業研究を成功させるコツはいくつかあります。効率的に企業研究を進めるためにも、以下を参考にしてみてください。
企業研究を活用するタイミング
企業研究はできるだけ早く行い、選考や面接の際に役立てましょう。まずは業界研究をして、自分の希望とする業界が明確になったあとに企業研究を開始するのがベストです。面接の前は特に企業研究の有無が重要となるため、選考の時期よりも前から企業研究をしておくとスムーズに転職活動を進められます。
企業研究で得られた情報を収集し、自身の中で検討する時間を取れるようにスケジュールを立てることが大切です。
企業研究の目的を意識しながら行う
転職先の企業研究を開始した際は、目的を見失わないように注意しましょう。企業研究を行う一番の目的は、採用先とのミスマッチをなくし、納得のいく転職先での選考を通過するためです。
希望している企業の社風や業務内容、競合他社との違いを理解することで自分に合う企業か選定できます。企業研究が不足していると、志望動機が不明確で入社意欲が低いと思われる場合もあります。企業研究で志望動機を明確にし、選考を通過できるよう目的を意識しながら行いましょう。
企業研究に時間をかけすぎないようにする
転職活動を行う上で、企業研究ばかりに時間をかけすぎないように注意してください。徹底的に丸1日〜2日かけて企業研究を行うのは良いですが、それ以上時間をかけるのはおすすめしません。企業研究ばかりしていても内定がもらえるわけではありません。あくまで転職活動をする上でのプロセスということを頭に入れて、計画的に行うことが大切です。
企業の良い面だけでなく悪い面も見る
企業研究を行うとどうしても企業の長所ばかりに着目してしまいます。しかし公平に企業評価をするためには、長所だけでなく短所にも目を向けることが必要です。企業にとっても悪い面を理解した上で応募している人のほうが、早期退職の可能性が低く安心して採用できると感じるでしょう。
転職をするなら、転職先の生きた情報が手に入る「知命塾」を活用しよう
私どもが運営する個人向けキャリア研修「知命塾」では、志ある求職者と経営者の出会いの場を提供したいと考えています。ネットや求人誌の情報とは違う生の情報を手に入れるためにも、ぜひ知命塾を活用してください。
もちろん前述のとおり、コーポレートサイトの読み込みといった、ネットなどを利用した事前リサーチも欠かせません。しかしもっともオススメなのは、「転職先企業の、生の情報を手に入れること」です。
知命塾の一貫として提供している「ミドルシニア向け職業紹介サービス」では、普段スポットの当たらない「優良地方企業や中小企業」の案件が充実しており、そういった企業の情報が山のように集まってきます。
自己キャリアの棚卸しだけでなく、そういった隠れた有望企業との出会いに、ぜひ知命塾を活用してください。
また、社会人材学舎ではさまざまなセミナーを開催しています。Zoomによる無料セミナーもありますので、ぜひお気軽にご参加ください。
まとめ
転職において、希望者の一方的な都合が優先されることはありません。選択権は相手にあるのですから、まずは企業が求める人物像をしっかりと見極める必要があります。
そのためには、転職先企業を徹底的に研究することが重要です。
今回の記事では、転職先企業の研究をおこなうポイントと、転職先企業を研究する具体的な方法、そして成功させるコツについてご紹介しました。採用先とのミスマッチを防ぐためにも、ぜひしっかりと企業研究をおこなっていただければと思います。