同じ転職でも、20代の若手と40代のミドルシニア世代では、置かれている状況がまったく異なります。若手中心の転職市場においてミドルシニアが転職を成功させるには、若手との違いを冷静に分析して、ミドルシニアならではの強みをアピールしていくしかありません。
しかし転職がうまくいかない人は、得てして若い頃におこなった転職活動のやりかたを、そのまま持ち込もうとします。「当時とは周囲から求められる条件が変化した」という事実に気づかない限り、いつまでたっても転職は成功しないでしょう。
そこで今回は、若手とミドルシニアの転職を比較し、その違いと対策をじっくりと整理していきたいと思います。
=目次=
ミドルシニアの転職がむずかしい理由
以前よりもミドルシニア層の求人が増えているとはいえ、20代の転職と比較すれば、圧倒的に市場は小さい状況です。もし本気でミドルシニアが転職を成功させたいのなら、まずは「ミドルシニアが転職市場で敬遠される理由」をきちんと理解しておかなくてはなりません。
せっかく採用しても20代と比べて働ける期間が短い
ミドルシニアが敬遠される最大の理由は、そのコスパの悪さにあります。リクルート社発行の就職白書(2020年度)※をみると、採用コスト自体は、新卒(93.6万円)も中途(103.3万円)もほぼ同レベルです。
ただし、雇用後のランニングコストが大きく違います。40代を雇用するとなれば、やはり20代と同じ給料というわけにはいきません。毎月高額な給料と社会保険料を支払って雇用しても、20代より20年以上早く辞めてしまうわけです。
それならば、体力があり多少無理の効く若者に長く働いてもらいたいと考えるのは、ある意味当然でしょう。しかも給与額の面でも、ミドルシニアより低く抑えられるわけですからね。
ミドルシニアが転職を勝ち取るには、「働く期間が多少短くても、自分を採用すれば会社の利益になる」と、いかにアピールできるかがポイントです。
※参考:リクルート 就職白書2020
扱いにくいイメージがある
多くの企業では、ミドルシニアに対して、「扱いにくそう」というイメージをもっています。実際に扱いにくいかどうかは、問題ではありません。採用担当者が、最初からミドルシニアの採用におよび腰なところが問題なのです。
こういう話をすると、ほとんどの人が「採用してもらったら、謙虚な姿勢で頑張るつもりです」とおっしゃいます。しかし、これまで数多くの転職者を見てきた私の体感として、採用企業が大企業病に冒されたミドルシニアを警戒するのは、ある意味当然だと感じています。
これまで長い間、大企業の知名度やリソースに守られてきた人は、どうしても企業の力を自分の能力と勘違いしがちです。ミドルシニアの転職先は中小企業がほとんどなので、無意識のうちに上から目線になり、元からいる従業員とうまく人間関係を築けません。
ほかにも、「腰が重くチャレンジをしない」「仕事を選ぶ」といった大企業病の傾向が強いと、企業から敬遠されます。中小企業では、幅広い業務をこなす必要があるので、「なんでもやります」というバイタリティ溢れる人材でないと通用しないのです。
ミドルシニアが転職を成功させたいのなら、採用先の企業風土に合わせて一生懸命働く姿勢を、ぜひ強くアピールしてください。
◯大企業病をふっ飛ばして転職を成功させるコツについては、こちらでも確認できます
年齢に見合った働きをしてもらえるか採用側が不安を感じている
「年齢に見合った働きをしてもらえるか採用側が不安を感じている」という事実は、転職者側もしっかりと知っておかなければなりません。企業が抱く具体的な主な不安要素を、以下にまとめておきます。
- 報酬:報酬に見合う働きをしてもらえるか
- 健康面:体調を崩して、働けなくなる可能性はないか
- 労働期間:定年まで働ける期間が少なすぎないか
- 社風とのマッチング:社風と合わず、短期間で退職したりしないか
- 能力:十分なバックアップがなくてもきちんと結果を出せるか
即戦力がほしくてミドルシニアを採用するわけですから、企業が望む以上の結果を出してもらわないと、その採用は完全に失敗です。場合によっては、採用担当者の評価が下がることも考えられます。
だから、「この人を採用しても大丈夫かな……」そういう面接官の不安を解消しない限り、ミドルシニアの採用は正直かなり厳しいです。とはいえ、あまり深刻に考える必要はありません。逆に考えると、不安さえ解消できれば採用の可能性が大きくアップするわけですから。
具体的な不安の解消法については、このあと詳しく解説します。
◯50代に対して企業が抱える不安については、こちらでも確認できます
ミドルシニアが転職を成功させるための基本戦略
ミドルシニアの転職が厳しい理由がわかったところで、今度はミドルシニアが転職を成功させるための基本戦略を考えていきましょう。今回紹介するのは、以下の3点です。
- 専門知識とスキルのブラッシュアップ
- ポータブルスキルの習得
- 職務経歴書の書き方
それでは、ひとつずつ解説します。
専門知識とスキルを磨いておく
若手とは違って、ミドルシニアを採用する場合は、完全に即戦力が求められます。
「支社を新設するので、部下を束ねて来期中に10億円の売上を立ててほしい」こういった特別なオーダーを担う人材が必要なので、若手よりも高い報酬を払って、わざわざミドルシニアを採用するわけです。
そうなると当たり前ですが、将来のポテンシャルといった点は一切考慮されません。ミドルシニアの採用では、とにかく「専門知識と経験」が重要視されます。
採用担当者は、応募者が「自社業界の商品知識」や「専門知識」「業界知識」をもっているかどうか、厳しくチェックしてくるでしょう。また、技術力や部下を指導するマネジメントスキルについても、必ず確認をしてくるはずです。
したがって、もし現時点で専門知識と経験が不足していると思うのであれば、まずはしっかりと準備してください。数年かけてでも、不足しているスキルを身につけ、確固たる知識とスキルを提示できるようにしましょう。
◯ミドルシニアに必要な専門知識とスキルについては、こちらでも確認できます
どこでも通用する「ポータブルスキル」を身につけておこう
先ほど、ミドルシニアの転職には、専門知識と経験が不可欠であるとお伝えしました。しかし、さまざまな役割が求められるミドルシニアの場合、専門知識と経験だけでは、正直材料不足です。
即戦力が求められるミドルシニア世代だからこそ、どこの企業にいっても通用する「ポータブルスキル」が、なによりも求められます。
ポータブルスキルとは、主に仕事のしかたや人との関わりかたについての能力のこと。(厳密には専門知識や技術もポータブルスキルのひとつです)
いくら専門知識があっても、必要な課題を見抜き、最適な結果を導くためのプランがつくれなければ仕事はうまくいきません。同様に、上司や部下、顧客や協力会社との関係をうまく構築できない人は、周囲から「あの人とは仕事がやりにくい」と評価されてしまうはずです。
面接官はこれまでに何度も面接をしていますから、相手から受ける印象で、ポータブルスキルのある人かどうかを一発で見抜いてしまいます。ぜひ、できるだけ早いうちに、ポータブルスキルを身につけておいてください。
社会人材学舎では、「あなたの強み-ポータブルスキル-の見つけ方オンラインセミナー」を、無料で随時開催しています。興味のあるかたは、下記のサイトからお申し込みください。
職務経歴書の書き方で面接官の印象は大きく変わる
転職の面接では、前述の専門知識・経験・ポータブルスキル以外に、当然前職での成果も問われます。前の会社で立派な肩書があり、結果を出してきた人なら、実績を思い切りアピールしたいところでしょう。しかし、ここで自分の実績を声高にアピールするのは、少し待ってください。
自分の経歴に自信のある人ほど、職務経歴書にこれでもかというほど、情報を詰め込みがちです。しかし、あまりにも過剰なアピールは逆効果です。
そもそも、応募者はあなただけではありません。かりに10人のエントリーがあれば、10人分の書類を読まなければならないんです。そこで、職務経歴書を5枚も6枚も書いてくる応募者がいれば、正直げんなりするでしょうね。自分に置き換えてみれば、すぐにイメージできることです。
そういった状況を避けるためには、職務経歴書の書き方が大きなポイントになってきます。相手はほとんど読んでくれないというのを大前提に、いかに相手の興味を引くポイントを冒頭部分でアピールできるかが重要です。
具体的な内容としては、やはり相手の企業課題を解決できるスキルと経験の提示が、メインになるでしょう。もちろん、なぜ自分が役に立てるのか、その根拠の提示も忘れないでください。このあたりの勘所が、やはり20代の転職とは、大きく異なるポイントだと思います。
◯自分の強みの発信については、こちらでも確認できます
ミドルシニアの転職はここがポイント!
ここまでお話ししてきたように、しっかりと準備をしておけばミドルシニアの転職はそれほどむずかしくありません。とはいえ、大事なポイントを外してしまうと、失敗の確率は大きく跳ね上がります。そこで最後に、ミドルシニアが転職を成功させるためのポイントを3点解説していきます。
転職の目的を明確にすることがすべてのスタート
転職活動をはじめる前に、まずは転職の目的を明確にしてください。ミドルシニアの転職では、採用されるまでに複数回応募を繰り返す人も多いです。その際に転職の目的が明確でないと、拒絶に押しつぶされてしまい、おそらく途中で転職を諦めてしまいます。
また目的が曖昧なまま転職をすると、その後も転職を繰り返してしまいかねません。せっかく転職しても、しばらくすればその会社に不満を感じてしまい、また転職をして状況を解決しようとするからです。
しかし、「自分が現状どこに不満を感じているのか」「これからどういう働き方をしたいのか」が明確なら、こういった最悪の状況は回避できます。
しかも目的がはっきりしていると、その目的を達成するために、自然と一生懸命に働くはずです。そうなれば、あなたに対する周囲の評価も高まり、転職した会社で充実した社会人生活を送れるでしょう。
◯転職の理由を明確にする必要性については、こちらでも確認できます
待遇面にこだわりすぎると転職は失敗する
待遇面にこだわりすぎると、ミドルシニアの転職はまず間違いなく失敗します。ミドルシニアの場合、転職先の企業規模はスケールダウンするのが一般的です。大企業から中小企業に働く場所が移れば、報酬も下がって当然でしょう。
それなのに、報酬ダウンを受け入れられないのならば、そもそも転職をするべきではありません。
ただし、中小企業はトップに権限が集中しています。つまり、あなたの活躍が社長に認められれば、一気に待遇はアップする可能性があるのです。多くの中小企業では、慢性的に人材不足に苦しんでいますから、あなたの待遇を上げるも下げるもすべてはあなた次第。
中小企業の仕事には大きな可能性が隠れている。へたに大企業で息苦しい働き方をするくらいなら、思い切って中小企業に飛び込んでみるのも、賢い選択だと思います。
◯中小企業の報酬については、こちらでも確認できます
自分の強みが活かせる会社を選ぶ
転職先企業は、即戦力としての活躍を期待して、ミドルシニアを採用します。高額な報酬を払ってでも、若くてイキがいい20代より、知識と経験豊富なミドルシニアを選んだのです。
したがって、もし結果を出せなければ、あなたの評価は下がります。当然、会社での居心地も悪くなり、最悪の場合は再び転職を余儀なくされるかもしれません。
そういった事態を回避するためにも、できるだけ自分の強みが評価される転職先を選ぶようにしてください。
前述のとおり、ミドルシニアを採用すると、20代を雇用するよりもコストがかかります。そのため面接官も、「もし報酬に見合った結果を出してくれなかったら……」と、不安を感じているのです。
だから、自分の専門知識やキャリアをきちんと伝えて相手の不安を取り除かないと、なかなか採用はしてもらえません。
もちろんその前に、いちどしっかりと自分の強みを分析する必要があるでしょう。具体的な自己分析については、別記事で詳しく紹介しています。ぜひ、そちらの記事もご一読ください。
◯自分の棚卸しについては、こちらでも確認できます
まとめ
今回は、若手とミドルシニアにわけて、年代によって企業からなにを求められるのかを明確にお伝えしました。専門知識と経験を要求されるミドルシニアが、いくら情熱だけをぶつけても、おそらく採用はしてもらえないでしょう。
自分の強みを相手先企業へしっかりと届ける。そのためには、自分の強みの棚卸しができていないと話になりません。ただ、自分の強みを独力で見極めるのは、想像以上に大変です。
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