半分が50代以上の国。セカンドキャリアに挑戦する50代・60代の働き方

あなたは「50代」という言葉にどういったイメージをもっていますか。一昔前の50代といえば、「もう少しで定年を迎え、年金と退職金でのんびり暮らす」そんなイメージだったのではないでしょうか。

しかし今は、50代のみならず60代でも、まだまだ活力にあふれています。考えてみれば「人生100年時代」といわれる現在、残りの人生はまだ40〜50年以上もあるのです。

これからは、誰もがセカンドキャリアに挑戦していく時代となっていくでしょう。それは 「働き方が大きく変化する」という意味でもあります。そこで今回は、50代以降のセカンドキャリアについて、わかりやすく解説していきます。

50代・60代を取り巻く現状

50代・60代を取り巻く現状

50代・60代のセカンドキャリアに関する話題は、「再雇用」や「雇用期間の延長」といったものがほとんどです。

「高齢者になっても会社で長期間働ける」という意味では、たしかに安心かもしれません。しかし、冷静に考えると、定年が延びれば、会社の固定費負担は大幅に増加します。

もし大幅な増収増益が見込めなければ、企業は今ある原資を増加した固定費へ割り振っていくしかありません。そうなればその増加分を補うために、「役職定年」や「報酬の減額」といった形で、定年延長した社員の待遇がまず引き下げられます。

このような状況で働いても、本当に幸せといえるでしょうか。それよりも、会社に依存しないセカンドキャリアの道を考える必要があると思いませんか。

50歳が半分以上を占める国「日本」

50歳が半分以上を占める国「日本」

※参考:「2024年問題」について | 自民党

50代以降のキャリアを考えていく前に、50代・60代がどういう状況にあるのか、いちどしっかりと数字で把握しておくべきです。

上図のとおり2024年には、史上初めて50歳以上の人口が5割を超えます。高齢者も、2025年に3割を突破するのは確実です。

また、2053年には、日本の総人口がついに1億人を割り込みます。つまり人口の減少だけでなく、高齢者が増加し、働ける人口も減少するわけです。

とはいえ、こういった状況は、50代以上の世代にとって悪いことなのでしょうか。

いや、決してそのようなことはありません。50代になれば必ず体力が落ちて働けなくなるなら別ですが、今の50代・60代は、まだまだ若々しく力を持て余しています。人口分布でいえば、50代はちょうど中間層に位置する年代ですからね。

スキルと経験があり、人的ネットワークも充実している「デキる50代」なら、今後も働く場所に困ることはないでしょう。ただし、そのためには、転職先へアピールできるスキルや経験が不可欠です。

幸い50代なら、セカンドキャリアのために準備する時間が、まだ十分に残っています。必要なスキルや資格があれば、ぜひ60代に突入する前に、身につけておきましょう。

再雇用・転職どっちがいい

50代・60代のビジネスパーソンは、これから「再雇用」と「転職」のどちらを選べばいいのでしょうか。もし現在、待遇が文句なしに充実している、あるいは仕事にやりがいを感じているのであれば、再雇用を目標にするのも悪いことではありません。

ただ、転職エージェントの立場からすると、やはり 「転職を狙うべき」というのが本音です。なぜならば、もはや多くの企業には財務面の余裕がないので、50代以上になると冷遇されることが多いからです。

昨日まで部長だった人が、50歳になったとたんに役職なしになるのは、精神的にかなりキツイでしょう。さらに、給料もどんどん下がっていき、再雇用されたとしても、待遇は以前とは比べ物になりません。

最低限の報酬と引き換えに、プライドをズタズタにされるのが、今の50代・60代が働く現実なのです。それならば、会社にすがりつくのはやめて、自分のキャリアを思う存分発揮できる、新しい職場を探すのはどうでしょうか。

50代のスキルと経験を、喉から手が出るほど欲しがる中小企業は数多くあります。そういった企業に転職して、さらなる将来に向け、独立・自営のための経験を並行して積む。じつに魅力的な働き方だと思いませんか?

50歳からのキャリアチェンジで注意すべき3つのリスク

50歳からのキャリアチェンジで注意すべき3つのリスク

さきほど転職がいいという話をしましたが、やみくもなキャリアチェンジはオススメできません。ここでは、50歳からキャリアチェンジをおこなう場合に注意すべき、3つのリスクについて解説していきます。

収入が下がるリスク

厚生労働省の令和2年転職者実態調査※によると、転職で賃金が下がった50〜54歳の転職者は、53.2%にも上ります。45〜49歳は32.5%ですから、50代になっていきなり20%以上増加しているわけです。

50代・60代の転職では、基本的に待遇は下がると考えておきましょう。大企業で働いていた人は、とくに注意が必要です。大企業の報酬体系を基準に考えてしまうと、転職そのものが困難になってしまいます。

しかし、過度に心配する必要はありません。転職先に多い中小企業は、社長の判断ですべてが劇的に変わります。最初の給与水準こそ低めに設定されていても、結果を出せばすぐに給料へ反映させてくれるケースも珍しくありません。

いずれにしても、50代・60代の転職は、報酬よりもやりがいや働きやすさを重視した方がいい結果を生むと思いますよ。

※参考:令和2年転職者実態調査 転職者の労働条件の変化

病気・ケガで働けなくなるリスク

50代・60代はまだまだ元気といっても、少しずつ衰えが現れてくる世代でもあります。病気になったとしても、通常の生活が送れる程度まで回復すれば、また働けるかもしれません。

しかし現実には、病気が治っても体調が戻らず、以前のような働き方ができない人も多いのです。スマートスキャン株式会社が三大疾病(がん・心疾患・脳疾患)経験者におこなったアンケート※によれば、治療で休職もしくは離職した人は、約6割にも上ります。

さらに、病後の収入が減少した人は6割もいて、その期間は7割が1年以上と回答していました。

せっかく希望に燃えて転職したのに働けないのでは、雇用主もあなたも困ってしまいますよね。そういった事態を回避するためには、下記のポイントを頭に入れて、なるべく早い段階から準備をしておくことが重要です。

  • 普段から適度な運動をおこない、食事に気をつける
  • 肉体的労働が少ない仕事を選ぶ
  • 「就業不能保険への加入」など、いざというときに備えておく

※参考:【三大疾病罹患後の経済的リスク】1か月あたり10万円以上の収入が減った方は約4割にのぼる | スマートスキャンのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー

やりたい仕事ができないリスク

転職の成否を決めるのは、あくまでも転職先の雇用主です。あなたがいくらその仕事に熱い想いをもっていても、雇用してもらえないことには話になりません。しかし一番やりたい仕事内容ではない企業からなら、雇ってもらえる可能性があるとしたら……

そのときは、迷わずに転職を進めるべきです。

「転職には自分のやりたい仕事ができないリスクがある」のは事実ですが、逆をいえば、「仕事にこだわりすぎなければ、転職の確率は跳ね上がる」という話になります。

そもそも、やりたい業務内容の会社に転職できたからといって、希望通りに仕事ができるとはかぎりません。やりたいこととは直接関係のない仕事を担当させられる可能性だってあるでしょう。

それなら、自分を認めてくれる職場で力を発揮する方が、幸せな働き方といえるのではないでしょうか。

50代・60代のセカンドキャリアとは

50代・60代のセカンドキャリアとは

50代・60代が転職を成功させるには、結局「転職にふさわしい考え方」で準備をしっかりとできるかどうかにかかっています。この章では、50代・60代のセカンドキャリアを成功させるために取り組むべきことを、3つご紹介します。

1.セカンドキャリアの目的を明確にする

まずやっていただきたいのが、「セカンドキャリアの目的を明確にする」ことです。

「自分のキャリアをもっと活かせる職場を探したい」といった「前向きな目的」なら問題ありませんが、現在の仕事内容や待遇・人間関係などに不満があっての転職は、正直あまり勧められません。

なぜなら、転職先でもまた同じ状況に陥る可能性が高いからです。不満を解消したいだけなら、話し合いやちょっとした改善で、もしかすると今の職場でも可能かもしれませんよ。

なによりも、前職への不満が転職先の企業に知られてしまった場合、「せっかく採用しても、なにか不満があればまた文句を言って辞めそうだ……」と思われてしまいます。

そうなれば、採用される可能性は著しく下がってしまうでしょう。わざわざ転職をするなら、もっとポジティブな目的を原動力にしていきましょう。

2.待遇よりもやりがいを

前述のとおり、50代・60代の転職で待遇を求めすぎると、転職そのものがうまくいかない可能性も高いです。どんなに優秀な人材だとしても、新しい職場にうまくフィットしてくれるかどうかは、しばらく働いてみないとわかりません。

当然、企業側としても、最初は給料を抑えて様子を見たいわけです。であれば、待遇面にこだわりすぎず、まずは入社して、結果を出すのが先決でしょう。前述の通り、中小企業では、結果を出せば報酬に反映されるケースが非常に多いのですから。

ということで50代・60代は、待遇よりもやりがいを重視する方が断然有利です。大企業で冷遇され、心を摩耗させていくより、やりがいをもって中小企業で働く方が何倍も有意義ではないでしょうか。

3.自分はなにができるのか、キャリアの棚卸し

50代・60代には、「即戦力」が求められています。また同様に、転職した会社の風土に合わせられる柔軟性も不可欠です。そのため、これまで以上に「自分はなにができるのか」が、重要になってきます。

50代・60代の人材に対して、イチから教育をしてくれる会社はありません。「私を雇ってもらえれば、〇〇を武器に必ず会社に貢献します。」とアピールするためにも、転職前に、その〇〇に当てはまる内容を明確にしておきましょう。

人生100年時代の今、定年を迎えても、まだ未来に40・50年もの人生があります。50代・60代の考え方・働き方で、その後の人生が決まるといっても決してオーバーではないのです。

これまでのように「再雇用」「雇用期間の延長」にとらわれる時代は終わりました。これからは、いつまで組織にぶら下がり続けるのではなく、積極的にセカンドキャリアへ挑戦していくべきです。

セカンドキャリア成功を目指す!50代のリカレント教育

セカンドキャリア成功を目指す!50代のリカレント教育

50代からのセカンドキャリアを成功させたいなら、年齢を言い訳にしないことが重要です。国立長寿医療研究センターのサイトを見ると、知識を覚える能力は70歳ごろまでぐんぐん向上すると書かれています。しかも90歳になるまで、低下の度合いはごく緩やか。

そう考えると50代は、仕入れた知識とこれまでの経験を融合させて活用できる、もっとも脂の乗った年代といえます。ぜひ、必要な知識を積極的に学んでいきましょう。

IT関連スキル

50代以降のセカンドキャリアを考える際、IT関連スキルの習得は必須です。最低でも「基本的なコンピュータ操作」「ワードやエクセルといった特定のソフトウェアスキル」程度はマスターしておく必要があります。

可能であれば、プログラミングやデジタルマーケティングなども、積極的に身につけておきたいところです。

実際のところ、50代になってプログラミングをバリバリやる機会はないかもしれません。しかし、こういった技術の基礎くらいは知っておかないと、他の社員に言われるがまま、正しい判断ができなくなってしまいます。

総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社がおこなった「50代社員に関する意識調査」では、「デジタルツールに対応できないのが50代社員の課題である」と、20〜40代社員の約30%が回答していました。

一方、当の50代社員は、わずか9%しかデジタルツールに対して問題視していなかったのです。この意識の差が、50代社員の大きな問題点であると考えます。今後、「使えない人材」と陰でバカにされることのないように、IT関連知識は最優先で学習していきましょう。

企画立案スキル

50代の経験と知識は、企画立案における大きな強みになります。企画立案スキルとは、アイデアを具体的な計画に変換し、実行可能な形に落とし込む能力です。

企画立案は、大きく以下のように分類されます。

  • 新規事業企画
  • 商品/サービス企画
  • 販売営業企画
  • 広報企画

すべての分野に精通する必要はありませんが、どれかひとつを軸として、ざっくりと全体の基礎的な知識は頭に入れておきたいですね。

ひとつでもうまく進行しなければ、新しいプロジェクトのスタート、あるいは既存事業の改善が滞ってしまいますので。

なお、企画立案をおこなうには、データ収集・データ分析・プレゼンスキルが欠かせません。もちろん、ある程度PCを使いこなすスキルも必要ですし、コミュニケーション能力も問われます。

通常企画立案をひとりでおこなうことはなく、さまざまな年代のチームメンバーとともに、企画を形にしていきます。そのため、世代の違うメンバーや外部関係者と上手にコミュニケーションを取る柔軟性が非常に重要です。

コミュニケーションスキル

先ほど企画立案スキルでも少し触れましたが、ビジネス社会においてコミュニケーションスキルは極めて重要です。

年齢を重ねるごとに、世代の異なる同僚や取引先と仕事をする機会が増えてきます。個人差はありますが、自分より下の世代が多くなると、どうしても自分の意見が正しいと思い込んでしまうものです。その結果、相手の話をきちんと聞けずに、最後は説教になってしまう人が本当にたくさんいます。

ハッキリ言って、これは非常にもったいないです。世の中には、人の数だけ異なる視点があります。誰だって自分の考えを頭ごなしに否定されたら、いい気持はしません。

しかし、相手の意見をいったん受け止める姿勢を見せれば、相手もあなたの意見を尊重してくれるでしょう。自分の意見を主張したいなら、日頃から相手の考えを尊重する姿勢を忘れないようにしてください。

なお、時代とともにコミュニケーションの方法は変化しており、電話よりもメールやラインといった文字によるコンタクトが今後ますます増えていきます。

発信した内容は記録として残りますから、より言葉の選び方に気をつけなければなりません。感情的な発言は極力控えて、要件をコンパクトに伝える技術が、今後はさらに重要になっていくでしょう。

メンタルヘルスとストレス管理

50代に突入したら、なによりもまず「メンタルヘルスのケア」と「ストレス対策」について学ぶべきです。ストレスは私たちのメンタルと身体の両方に影響をおよぼし、最悪の場合はうつ病にまで追い込まれてしまう可能性があります。

厚生労働省の「労働安全衛生調査※」によれば、現在の仕事について強い不安やストレスを感じている50代は、82.2%にも上るそうです。こういった不安やストレスを解消するには、根本的な原因に対してなんらかの対策を講じる必要があります。

しかし、自分だけの力ですぐに解決するなら、そもそもストレスに苦しんでいないでしょう。であれば、現状がしばらく続いても負けないように、上手にストレスと付き合っていくしかありません。

オススメは、瞑想や呼吸法といった、いわゆるリラクゼーションです。定期的に、静かに自分の心と向き合う時間を設ければ、ちょっとしたストレスには負けないように、メンタルが強くなっていきます。

また、定期的な運動習慣も、ストレス対策には必須です。適度な有酸素運動は、精神の安定効果のあるセロトニンを増やし、反対に、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌量を減らしてくれます。

1回30分、週に2〜3回を目標に、ぜひ軽めの有酸素運動に取り組んでみてください。

※参考:【個人調査】 1 仕事や職業生活における不安やストレスに関する事項

ファイナンシャルプランニング

人生100年時代を迎え、70代、いや80代になっても、可能な限り働き続ける人がこれからどんどん増えてきます。とはいえ、多くの企業では、60〜65歳を定年に設定しているのもまた事実です。

現役を希望して転職する人もいれば、定年を機会にいったん仕事をセーブする人もいるでしょう。どちらを選ぶにしても、50代は退職後のライフプランや資産状況を見直す絶好の機会です。

ファイナンシャルプランニングの第一歩として、まずご自身の財務状況をきちんと把握するところからスタートしてみてください。収入額・支出額・貯蓄額・投資状況・負債の有無など、生活に必要な金銭的な要素をまとめて、財務面の問題点を特定します。

さらに、病気やケガで働けなくなる可能性も考慮しながら、年齢とともに増加するであろう医療費や緊急時の貯蓄についても、きちんと計画しておく必要があります。

また将来の備えとして、これからの時代には、なんらかの投資が必須です。いきなり個別株投資は怖いというなら、リスクが少なく少額からスタートできる積立投資などもあります。投資は経済の勉強にもなりますので、負担にならない程度に取り組んでみてはいかがでしょうか。

まとめ

本文で紹介した通り、私たちは人口の半数以上が50代という成熟した国で働いています。人口年齢が上がるというのは、若者が減っているという意味でもあります。

これからは、今までのように60歳で定年して年金でゆっくり老後を過ごすというパターンが成り立ちません。70代になってもバリバリ働き続けられることを念頭に、50代からのセカンドキャリアをしっかりと考えていきましょう。