あなたは「50代」という言葉にどういったイメージをもっていますか。
一昔前の50代といえば、「もう少しで定年を迎え、年金と退職金でのんびり暮らす」そんなイメージだったかもしれません。しかし、今は違います。
定年まで残り数年と考えるのではなく、「人生100年時代」において、これからの人生はまだ40年、50年と続きます。
体力も気力も十分にあるこの時期に、「このまま会社に残って良いのだろうか」「本当にやりたいことはなんだろう」と不安や迷いを感じるのは、健全な変化の兆しです。
これからは、誰もがセカンドキャリアに挑戦していく時代であり、それは「働き方が大きく変化する」という意味でもあります。
そこで今回は、あなたが今抱えている不安を解消し、50代以降のセカンドキャリアを主体的に設計するための考え方と現状を、わかりやすく解説していきます。
=目次=
50代からセカンドキャリアを見つける理由

50代でキャリアに迷いを感じるのは、あなたがわがままなのではなく、会社の構造や企業の状況が大きく変わり始めているからです。
まずは、私たちが今立たされている「現実」を正しく把握して、不安を具体的な行動に変えるための土台を築きましょう。
50代・60代を取り巻く現状
現在、50代・60代のセカンドキャリアに関する話題は、「再雇用」や「雇用期間の延長」といった「会社に残り続けること」に関するものがほとんどです。
「高齢者になっても会社で長期間働ける」という意味では、たしかに安心かもしれません。しかし、冷静に考えると、定年が延びれば、会社の固定費負担は大幅に増加します。
もし大幅な増収増益が見込めなければ、企業は今ある原資を増加した固定費へ割り振っていくしかありません。そうなれば、その増加分を補うために、「役職定年」や「報酬の減額」といった形で、定年延長した社員の待遇がまず引き下げられます。
このような状況で働いても、本当に幸せと言えるでしょうか。それよりも、会社に依存しないセカンドキャリアの道を、今から考える必要があると思いませんか。
人生100年時代。高齢化社会とキャリアの現状

50代以降のキャリアを考えていく前に、50代・60代がどういう状況にあるのか、一度しっかりと数字で把握しておくべきです。
上図のとおり、2024年には史上初めて50歳以上の人口が5割を超えます。高齢者も、2025年に3割を突破するのは確実です。
また、2053年には、日本の総人口がついに1億人を割り込みます。つまり、人口の減少だけでなく、高齢者が増加し、働ける人口も減少するわけです。
とはいえ、こういった状況は、50代以上の世代にとって悪いことなのでしょうか。
いや、決してそのようなことはありません。今の50代・60代は、まだまだ若々しく、体力と経験を持て余しています。人口分布でいえば、50代はちょうど中間層に位置する年代ですからね。
スキルと経験があり、人的ネットワークも充実している「デキる50代」なら、今後も働く場所に困ることはないでしょう。ただし、そのためには、転職先へアピールできるスキルや経験が不可欠です。
幸い50代なら、セカンドキャリアのために準備する時間が、まだ十分に残っています。必要なスキルや資格があれば、ぜひ60代に突入する前に、身につけておきましょう。
変わりゆく年金制度の現状
会社に依存しないキャリアを考えるうえで、避けて通れないのが公的な年金制度の話ですよね。「年金だけでは老後が不安だ」と感じている50代の方は、きっと少なくないはずです。
実際に、少子高齢化が進む中で、年金の支給開始年齢の引き上げが議論されたり、制度そのものの持続性に疑問の声が上がったりしています。これは、私たちにとって非常に現実的な問題です。
会社員として長く働いてきた50代にとって、老後の資金計画は、これからのキャリアを動かす最大の動機になります。「自分は何歳まで、どれくらいの収入を確保する必要があるのか」という現実的な問いに向き合ってみましょう。
この問いに向き合うことこそが、会社から与えられる受動的な再雇用を待つのではなく、「自らの意思で収入源を確保する」セカンドキャリアを設計する重要なきっかけとなるのです。
この漠然とした不安を解消するためにも、「自分の力で稼ぎ続ける」ための具体的なキャリアプランが必要不可欠だと言えます。
多様化するキャリアの選択肢
50代のキャリアの選択肢は、もう「会社に残るか、辞めるか」の二択だけではありません。今は、驚くほど多様な働き方が生まれています。
あなたが長年培った経験は、転職という形で別の会社で活かせるだけではありません。例えば、副業を通じて新しい分野に挑戦したり、組織に縛られないフリーランスとして特定の専門スキルを提供したりできます。
さらに、心機一転、地方移住とセットで地域貢献に関わる仕事を選ぶことだって可能です。
なぜこんなに選択肢が増えたかというと、インターネットの発達、働き方改革、そして社会の高齢化によって、多様な人材ニーズが生まれているからです。
「会社員」という一つの肩書きにこだわる必要はありません。「自分のスキルや経験を、どこに、どのような形で提供できるか」という視点を持つことで、50代からのセカンドキャリアは、不安ではなく「人生を再設計する」という前向きな挑戦に変わるはずです。
再雇用と転職はどっちがいい?

50代・60代のビジネスパーソンは、これから「再雇用」と「転職」のどちらを選べばいいのでしょうか。再雇用と転職は多くの方が抱える悩みであり、非常に現実的な問題です。
もし現在、待遇が文句なしに充実していて、仕事にも心からやりがいを感じているのであれば、そのまま再雇用を目標にするのも、もちろん一つの道です。
でもそうではなく、「このままでいいのだろうか」と少しでも不安を感じるなら、私たちは「転職を狙うべき」だとお伝えします。
なぜなら、多くの企業は財務的な余裕がなくなりつつあり、再雇用や役職定年を機に、50代以上の待遇を厳しく見直すケースが非常に多いからです。
昨日まで部長だった人が、50歳を過ぎた途端に役職なしになるのは、精神的にかなりきついですよね。能力が衰えたわけでもないのに給料は下がり、再雇用されたとしても、待遇は以前とは比べ物になりません。
それならば、最低限の報酬で会社に縛られるのはやめたほうが無難です。あなたのスキルと経験を正当に評価し、キャリアを思う存分発揮できる新しい職場を探すのはどうでしょうか。
あなたの50代のスキルと経験を、喉から手が出るほど欲しがる中小企業やベンチャー企業は数多くあります。
再雇用と転職、それぞれのメリット・デメリットを比較し、あなたにとって最適な道を見つけるための参考にしてください。
再雇用のメリットとデメリット
再雇用の最大のメリットは、なんと言っても「安心感と安定」です。長年慣れ親しんだ職場で働けるため、新しい人間関係や社風に順応できないと悩むストレスがほとんどありません。
加えて、制度上、雇用が保証されているため、再雇用後はゼロから仕事探しをする必要がなく、精神的な余裕が生まれます。定年後の働き方という観点で見れば、最もリスクが低い選択肢と言えるでしょう。
一方で、デメリットは「待遇とモチベーションの低下」にあります。まず、役職定年や再雇用後の給与形態により、現役時代と比べて収入が大幅に下がることがほとんどです。
また、「昨日まで役職者だったのに……」といった役割や権限の低下は、精神的な苦痛や不満に繋がりやすく、仕事への意欲を失ってしまう可能性があります。
なによりも再雇用は、新しいスキルや経験を得る機会が少ないため、自身の市場価値が停滞したり、将来的なキャリアの選択肢が狭まったりするデメリットがあります。
つまり、再雇用は「安定」と引き換えに「待遇」と「やりがい」を犠牲にする可能性が高い選択肢だと認識しておくべきです。
転職のメリットとデメリット
転職のメリットは、ずばり「成長と自己実現」にあります。あなたの持つ経験やスキルが市場価値に見合った報酬を得られる可能性が高く、再雇用よりも高待遇を狙うことが可能です。理由は、あなたの経験を正当に評価してくれる企業を見つけられるからです。
また、本当に貢献したい分野や、自分のスキルを最大限に活かせる新しい環境を、自分の意志で能動的に選べるのも、転職ならではの大きなメリットでしょう。
転職先で新しい知識や技術を習得したり、新しい組織で成果を出したりすることで、自身の市場価値をさらに高められるのです。
しかし、転職においては、やはり「不確実性」がネックとなります。
50代の転職市場は若年層より厳しく、転職活動が長期化するリスクは否めません。また、転職先が決まったとしても、新しい社風、年下の上司、仕事の進め方など、これまでの常識が通用しないといった「新しい壁」に直面する可能性もあります。
さらに、新しい会社では勤続年数がリセットされるため、前職の退職金制度や新しい会社の福利厚生、有給休暇の扱いは慎重に確認する必要があります。
転職は一時的なリスクは伴いますが、あなたの経験を正当に評価してくれる場所を見つけ、セカンドキャリアの充実を実現できる可能性を秘めています。
人生のセカンドステージを賭けた前向きな挑戦と捉えましょう。
50歳からのキャリアチェンジで注意すべき3つのリスク

さきほど転職がいいという話をしましたが、やみくもなキャリアチェンジはオススメできません。ここでは、50歳からキャリアチェンジをおこなう場合に注意すべき、3つのリスクについて解説していきます。
収入が下がるリスク
厚生労働省の令和2年転職者実態調査※によると、転職で賃金が下がった50〜54歳の転職者は、53.2%にも上ります。45〜49歳は32.5%ですから、50代になっていきなり20%以上増加しているわけです。
50代・60代の転職では、基本的に待遇は下がると考えておきましょう。大企業で働いていた人は、とくに注意が必要です。大企業の報酬体系を基準に考えてしまうと、転職そのものが困難になってしまいます。
しかし、過度に心配する必要はありません。転職先に多い中小企業は、社長の判断ですべてが劇的に変わります。最初の給与水準こそ低めに設定されていても、結果を出せばすぐに給料へ反映させてくれるケースも珍しくありません。役職定年で減額した給与を比べると、生涯年収としては総額アップする可能性も十分あります。
いずれにしても、50代・60代の転職は、短期的な報酬よりも、まずはやりがいや働きやすさを重視した方がいい結果を生むと思いますよ。
病気・ケガで働けなくなるリスク
50代・60代はまだまだ元気といっても、少しずつ衰えが現れてくる世代でもあります。病気になったとしても、通常の生活が送れる程度まで回復すれば、また働けるかもしれません。
しかし現実には、病気が治っても体調が戻らず、以前のような働き方ができない人も多いのです。スマートスキャン株式会社が三大疾病(がん・心疾患・脳疾患)経験者におこなったアンケート※によれば、治療で休職もしくは離職した人は、約6割にも上ります。
さらに、病後の収入が減少した人は6割もいて、その期間は7割が1年以上と回答していました。
せっかく希望に燃えて転職したのに働けないのでは、雇用主もあなたも困ってしまいますよね。そういった事態を回避するためには、下記のポイントを頭に入れて、なるべく早い段階から準備をしておくことが重要です。
- 普段から適度な運動をおこない、食事に気をつける
- 肉体的労働が少ない仕事を選ぶ
- 「就業不能保険への加入」など、いざというときに備えておく
※参考:【三大疾病罹患後の経済的リスク】1か月あたり10万円以上の収入が減った方は約4割にのぼる | スマートスキャンのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー
やりたい仕事ができないリスク
転職の成否を決めるのは、あくまでも転職先の雇用主です。あなたがいくらその仕事に熱い想いをもっていても、雇用してもらえないことには話になりません。しかし一番やりたい仕事内容ではない企業からなら、雇ってもらえる可能性があるとしたら……
そのときは、迷わずに転職を進めるべきです。
「転職には自分のやりたい仕事ができないリスクがある」のは事実ですが、逆をいえば、「仕事にこだわりすぎなければ、転職の確率は跳ね上がる」という話になります。
そもそも、やりたい業務内容の会社に転職できたからといって、希望通りに仕事ができるとはかぎりません。やりたいこととは直接関係のない仕事を担当させられる可能性だってあるでしょう。
それなら、自分を認めてくれる職場で力を発揮する方が、幸せな働き方といえるのではないでしょうか。
50代・60代のセカンドキャリアの見つけ方

50代・60代が転職を成功させるには、結局「転職にふさわしい考え方」で準備をしっかりとできるかどうかにかかっています。この章では、50代・60代のセカンドキャリアを成功させるために取り組むべきことを、3つご紹介します。
自分はなにができる?キャリアの棚卸しで可能性を広げる
50代・60代には、「即戦力」が求められています。また同様に、転職した会社の風土に合わせられる柔軟性も不可欠です。そのため、これまで以上に「自分はなにができるのか」が、重要になってきます。
50代・60代の人材に対して、イチから教育をしてくれる会社はありません。「私を雇ってもらえれば、〇〇を武器に必ず会社に貢献します。」とアピールするためにも、転職前に、その〇〇に当てはまる内容を明確にしておきましょう。
人生100年時代の今、定年を迎えても、まだ未来に40・50年もの人生があります。50代・60代の考え方・働き方で、その後の人生が決まるといっても決してオーバーではないのです。
これまでのように「再雇用」「雇用期間の延長」にとらわれる時代は終わりました。これからは、ひとつの組織に留まることで今までの経験を活かすチャンスを逃さないためにも、積極的にセカンドキャリアへ挑戦していくべきです。
セカンドキャリアに求めるものを明確にする
まずやっていただきたいのが、「セカンドキャリアの目的を明確にする」ことです。
「自分のキャリアをもっと活かせる職場を探したい」といった「前向きな目的」なら問題ありませんが、現在の仕事内容や待遇・人間関係などに不満があっての転職は、正直あまり勧められません。
なぜなら、転職先でもまた同じ状況に陥る可能性が高いからです。不満を解消したいだけなら、話し合いやちょっとした改善で、もしかすると今の職場でも可能かもしれませんよ。
なによりも、前職への不満が転職先の企業に知られてしまった場合、「せっかく採用しても、なにか不満があればまた文句を言って辞めそうだ……」と思われてしまいます。
そうなれば、採用される可能性は著しく下がってしまうでしょう。わざわざ転職をするなら、もっとポジティブな目的を原動力にしていきましょう。
「待遇」vs「やりがい」後悔しない選択を
前述のとおり、50代・60代の転職で待遇を求めすぎると、転職そのものがうまくいかない可能性も高いです。どんなに優秀な人材だとしても、新しい職場にうまくフィットしてくれるかどうかは、しばらく働いてみないとわかりません。
当然、企業側としても、最初は給料を抑えて様子を見たいわけです。であれば、待遇面にこだわりすぎず、まずは入社して、結果を出すのが先決でしょう。前述の通り、中小企業では、結果を出せば報酬に反映されるケースが非常に多いのですから。
ということで50代・60代は、待遇よりもやりがいを重視する方が断然有利です。大企業で冷遇され、心を摩耗させていくより、やりがいをもって中小企業で働く方が何倍も有意義ではないでしょうか。
50代・60代の転職市場を知る

さて、再雇用と転職を比較して、「やっぱり自分のキャリアは自分で決めたい」と感じた方もいるのではないでしょうか。しかし、いざ転職市場に目を向けると、「50代の自分なんて本当に通用するのか」と不安になりますよね。
この不安を解消するには、今の転職市場で「企業が50代に何を求めているのか」、そして「どんな人が失敗しやすいのか」という現実を、しっかりと知っておくことが大切です。
これを理解すれば、戦略的な準備が可能になり、転職成功に大きく近づきます。
企業が50代に求めるものとは?
企業が50代の人材を採用する理由は、ポテンシャル(将来性)ではありません。紛れもなく、「即戦力」と「安定感」の二つに尽きます。企業は、あなたの長いキャリアを「買って」いるのです。特に強く求められるポイントは3つあります。
まず一つ目は、高度な専門知識と実績です。ただ単に「長く働いた」ではなく、「この分野ならこの人に任せたい」と言えるほどの専門性を求めています。
過去の成功体験を具体的な数字やエピソードで語れることが必須です。「○○プロジェクトでコストを20%削減した」「新しい営業手法を導入して売上を1.5倍にした」といった実績を用意しましょう。
二つ目は、すぐに活かせるマネジメント経験です。特に中小企業やベンチャー企業は、組織全体を見渡して戦略を立て、若手を育成してくれる即戦力の管理職経験者を喉から手が出るほど求めています。
ただ単に「部下を指導した」だけでなく、「どのようにチームの能力を引き出したか」「組織の問題をどう解決したか」を語れることが重要となります。
そして三つ目は、これが最も重要かもしれませんが、「柔軟な考え方」と「新しい環境への適応力」です。企業は「大企業出身のベテランは、プライドが高くて扱いにくいかもしれない」と感じています。
セカンドキャリアに成功する50代は、「郷に入っては郷に従え」の精神で、年下の上司の指示にも戸惑いなく耳を傾けられる「柔軟性」を持っています。
「新しいITツールでも積極的に学んで使います」という姿勢を見せるだけで、印象は大きく変わりますよ。
50代・60代の転職で陥りがちな失敗と対策
「なぜか面接に呼ばれない」「内定が出ても条件が合わない」と悩む50代には、共通するいくつかの失敗パターンがあります。
例えば、「年収や役職へのこだわりが強すぎる」という失敗です。先ほども触れましたが、これまでの会社と同じような待遇を求めてしまうと、応募できる求人数が激減するでしょう。
年収ダウンも許容する柔軟な姿勢を持ちましょう。年収よりも、「仕事のやりがい」「企業の成長性」「自分の経験を活かせる環境」といった非金銭的な価値を優先することが、結果的に長く活躍できる秘訣です。
また、自分の市場価値を客観的に把握できていないという失敗もあります。「自分は〇〇社の部長だったから、どこでも通用するだろう」という思い込みをしている方は多いですが、これは危険です。
あなたのスキルが「その会社特有」のものだった場合、市場では評価されません。そこで、転職エージェントなどのプロに相談し、あなたのスキルが他の企業でどのくらいの価値があるのか、客観的に評価してもらうことが必要です。
キャリアの棚卸しを徹底することが、ミスマッチを防ぐ第一歩と言えます。
最後に、転職理由が「ネガティブ」であるということも失敗につながります。「前の会社の上司と合わなかった」「給料が下がるのが嫌だった」といった不満を理由にすると、転職先は「また同じ理由で辞めるのではないか」と不安になります。
転職理由は必ず「ポジティブ」な言葉に変換しましょう。「これまでの経験を活かして、もっと成長性の高い中小企業で貢献したい」「最後のキャリアとして、社会貢献度の高い仕事に挑戦したい」といったように、未来志向の意欲を伝えることが大切です。
50代・60代のセカンドキャリアを実現するために

それでは、50代・60代のセカンドキャリアを実現するためには具体的にどうしたら良いのでしょうか。50代からのキャリア戦略といっても「自分には実績もキャリアもない」とお悩みの方も多いはず。
ここでは、キャリアプランが思いつかない50代・60代の方々にぜひ取り組んでほしい「キャリアを実現するための具体的な事項」をご紹介します。50代でのセカンドキャリアを成功させるヒントになれば幸いです。
今後のキャリアプラン設計
まずは、今後のキャリアプランを設計しましょう。キャリアプランを設計し提示することが、転職を成功させる秘訣となります。セカンドキャリアに大きな影響を与える「今後のキャリアプラン設計」をどれだけ入念に準備できるかによって、これから先の人生設計も明確になるでしょう。
キャリアプランが思いつかない50代の方は、次の5つの選択肢を参考に考えてみてください。実績やキャリアがなくても大丈夫。少し考え方を変えてみると、自分の理想とするセカンドキャリア設計に自然と導かれるはずです。
特技や専門スキルを振り返る
自分の特技や専門スキルを振り返りましょう。得意だった仕事、自分ができる専門的な業務は何か考えてみてください。楽しかった作業や、注力して取り組んだ業務が自分の得意とする分野かもしれません。
特技や専門スキルを見直すことで、希望しているキャリアに必要な能力や知識と比較ができます。自分に足りない部分を明確にさせ、今後のプランを考えましょう。
好きなことや興味のあることを考える
まずはシンプルに自分が本当に好きなこと、興味のあることを考えてみましょう。今までの経験の中で好きではなかった仕事、避けたかった業務を振り返るほうがスムーズかもしれません。経歴や実績からキャリアプランを考えると「自分ができること」に重点を置いてしまうため、思い悩んでしまうのです。
自分の好きなことや興味のあることから検討すれば、やりたいことが見えてきます。やりたいことがはっきりしたら、その分野や業界の中であなたができること・できそうなことを考えれば、自分が輝ける人生設計およびキャリア戦略を立てられるでしょう。
セカンドキャリアに求めることを明確にする
なぜ50代でのセカンドキャリアを考えるようになったのか「きっかけ」はありますか。本記事を読んでいるということは、少なからずセカンドキャリアに求めていること・実現したいことがあるはずです。例えば、やりがいがある仕事をしたい、収入を上げたい、プライベートと仕事とのワークライフバランスを整えたいなど、セカンドキャリアで必ず達成したいことを明確にしておきましょう。
定年後のセカンドキャリアを充実させるためには、キャリアプラン設計の段階で譲れない条件や求めていることを書き出しておきましょう。50代からのキャリア設計を行う意味を見失わずに、人生設計も検討しながら計画を立てることが可能です。
マネープランを見直す
今後のキャリアプラン設計をする上で、マネープランの見直しも行いましょう。定年退職後の年収の変化、退職金の支給、年金の支給など、50代・60代でのお金の動きは非常に大きいものです。50代でセカンドキャリアを検討する際に、一緒にマネープランも検討しておきましょう。セカンドキャリアを歩んでから「老後の資金が足りなくなってしまった」といった事態にならないように、このタイミングでマネープランを見直すことは重要です。
それを踏まえてセカンドキャリアではどれほどの収入を望んでいるのか、または収入に捉われない人生を歩みたいのか、検討してみましょう。
現状の収入ほど稼げなくても良いからやりがいのある仕事をしたいと感じている50代・60代の方も多いでしょう。今まで必死に仕事をして、老後の資金を貯蓄できた方が、ライフワークに余裕を持って、人生を豊かにするためにセカンドキャリアを実現したいと考えるのです。
そんな方は「ボランティア」や「NPO」などに参加して社会貢献できる活動に挑戦するのも一つの選択肢です。社会のために・誰かのために力を尽くすことで、充実感や幸福感が得られるでしょう。無理ない範囲で、できることから挑戦してみることがポイントです。
起業や独立も選択肢の一つ
これまで身につけた経験やスキルを活かして「起業や独立」を選択する方もいます。若い世代の起業とは異なり、長年の経験や知識を糧にセカンドキャリアを設計するのも良いかもしれません。今までの職歴の中で得た人脈は武器になります。また、自由に使える時間と人生の中で築いてきた資産を活用できるのは、50代・60代の強みでもあります。
しかし、起業や独立は簡単なことではありません。自分の人生設計を考えながら、事業計画やビジネスモデルを設計する必要があります。「資金を使い切ってしまい老後が不安になってしまった」という状況にならないように、老後資金と起業資金を分けて計画を立てることが大切です。起業や独立を選択するのなら、事前の準備を怠らないようにしましょう。
相談相手を見つける
50代のセカンドキャリアを考える上で、必ず相談相手を見つけましょう。50代からのキャリア戦略を考える際には、第三者に相談することが成功の秘訣でもあります。自分一人でキャリアプランの実現を目指すのはあまりおすすめしません。自分の視点で捉えていた感覚や物事が、必ず正しいとは限らないからです。
第三者から客観的に見た時の意見を聞くことで、自分では思い付かなかった新しい選択肢が生まれる可能性もあります。相談相手を見つけ、他者からの意見を踏まえた上で50代・60代のセカンドキャリアを検討することが重要となります。
話しやすい上司や同僚、友人や家族などに話を聞いてもらいましょう。身内には相談しづらい方、身の周りに相談できるような人がいない方は、転職のプロに相談することも検討してみてください。
転職先のキャリア相談室や、転職サービスにおけるエージェントは、転職のプロです。転職のノウハウを兼ね備えたキャリアの専門家から客観的なアドバイスを聞くことで、自分の価値を高めるための最適なキャリアプランが設計できるかもしれません。自分では気づかなかった強みや改善点が分かり、新たな可能性が広がるきっかけとなります。
また、転職業界のリアルタイムな情報や市場のニーズを把握しているため、より効率的にセカンドキャリアの成功へ近づくことが可能です。
新たな挑戦に必要なスキルや資格を確認する
これからの新たな挑戦を考える時に、必要なスキルや資格を事前に確認しておきましょう。50代でのセカンドキャリアを設計する上で、資格が必要となる可能性もあります。自分に足りないものは何か、新たな転職先で自分ができることは何か、企業が求めていることは何か、事前に考えておくことが大切です。必要なスキルや資格を確認した上でキャリア戦略を考えることで、実現可能かどうか判断できるでしょう。事前に情報をリサーチしておくことで、早い段階で資格取得やスキルアップを目指せるため、50代でのセカンドキャリアをスムーズに達成できるかもしれません。
50代のキャリアチェンジはリカレント教育が鍵

50代からのセカンドキャリアを成功させたいなら、年齢を言い訳にしないことが重要です。国立長寿医療研究センターのサイトを見ると、知識を覚える能力は70歳ごろまでぐんぐん向上すると書かれています。しかも90歳になるまで、低下の度合いはごく緩やか。
そう考えると50代は、仕入れた知識とこれまでの経験を融合させて活用できる、もっとも脂の乗った年代といえます。ぜひ、必要な知識を積極的に学んでいきましょう。
IT関連スキル
50代以降のセカンドキャリアを考える際、IT関連スキルの習得は必須です。最低でも「基本的なコンピュータ操作」「ワードやエクセルといった特定のソフトウェアスキル」程度はマスターしておく必要があります。
可能であれば、プログラミングやデジタルマーケティングなども、積極的に身につけておきたいところです。
実際のところ、50代になってプログラミングをバリバリやる機会はないかもしれません。しかし、こういった技術の基礎くらいは知っておかないと、他の社員に言われるがまま、正しい判断ができなくなってしまいます。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社がおこなった「50代社員に関する意識調査」では、「デジタルツールに対応できないのが50代社員の課題である」と、20〜40代社員の約30%が回答していました。
一方、当の50代社員は、わずか9%しかデジタルツールに対して問題視していなかったのです。この意識の差が、50代社員の大きな問題点であると考えます。今後、「使えない人材」と陰でバカにされることのないように、IT関連知識は最優先で学習していきましょう。
企画立案スキル
50代の経験と知識は、企画立案における大きな強みになります。企画立案スキルとは、アイデアを具体的な計画に変換し、実行可能な形に落とし込む能力です。
企画立案は、大きく以下のように分類されます。
- 新規事業企画
- 商品/サービス企画
- 販売営業企画
- 広報企画
すべての分野に精通する必要はありませんが、どれかひとつを軸として、ざっくりと全体の基礎的な知識は頭に入れておきたいですね。
ひとつでもうまく進行しなければ、新しいプロジェクトのスタート、あるいは既存事業の改善が滞ってしまいますので。
なお、企画立案をおこなうには、データ収集・データ分析・プレゼンスキルが欠かせません。もちろん、ある程度PCを使いこなすスキルも必要ですし、コミュニケーション能力も問われます。
通常企画立案をひとりでおこなうことはなく、さまざまな年代のチームメンバーとともに、企画を形にしていきます。そのため、世代の違うメンバーや外部関係者と上手にコミュニケーションを取る柔軟性が非常に重要です。
コミュニケーションスキル
先ほど企画立案スキルでも少し触れましたが、ビジネス社会においてコミュニケーションスキルは極めて重要です。
年齢を重ねるごとに、世代の異なる同僚や取引先と仕事をする機会が増えてきます。個人差はありますが、自分より下の世代が多くなると、どうしても自分の意見が正しいと思い込んでしまうものです。その結果、相手の話をきちんと聞けずに、最後は説教になってしまう人が本当にたくさんいます。
ハッキリ言って、これは非常にもったいないです。世の中には、人の数だけ異なる視点があります。誰だって自分の考えを頭ごなしに否定されたら、いい気持はしません。
しかし、相手の意見をいったん受け止める姿勢を見せれば、相手もあなたの意見を尊重してくれるでしょう。自分の意見を主張したいなら、日頃から相手の考えを尊重する姿勢を忘れないようにしてください。
なお、時代とともにコミュニケーションの方法は変化しており、電話よりもメールやチャットツールでの文字によるコンタクトが今後ますます増えていきます。
発信した内容は記録として残りますから、より言葉の選び方に気をつけなければなりません。感情的な発言は極力控えて、要件をコンパクトに伝える技術が、今後はさらに重要になっていくでしょう。
メンタルヘルスとストレス管理
50代に突入したら、なによりもまず「メンタルヘルスのケア」と「ストレス対策」について学ぶべきです。ストレスは私たちのメンタルと身体の両方に影響をおよぼし、最悪の場合はうつ病にまで追い込まれてしまう可能性があります。
厚生労働省の「労働安全衛生調査※」によれば、現在の仕事について強い不安やストレスを感じている50代は、82.2%にも上るそうです。こういった不安やストレスを解消するには、根本的な原因に対してなんらかの対策を講じる必要があります。
しかし、自分だけの力ですぐに解決するなら、そもそもストレスに苦しんでいないでしょう。であれば、現状がしばらく続いても負けないように、上手にストレスと付き合っていくしかありません。
オススメは、瞑想や呼吸法といった、いわゆるリラクゼーションです。定期的に、静かに自分の心と向き合う時間を設ければ、ちょっとしたストレスには負けないように、メンタルが強くなっていきます。
また、定期的な運動習慣も、ストレス対策には必須です。適度な有酸素運動は、精神の安定効果のあるセロトニンを増やし、反対に、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌量を減らしてくれます。
1回30分、週に2〜3回を目標に、ぜひ軽めの有酸素運動に取り組んでみてください。
※参考:【個人調査】 1 仕事や職業生活における不安やストレスに関する事項
ファイナンシャルプランニング
人生100年時代を迎え、70代、いや80代になっても、可能な限り働き続ける人がこれからどんどん増えてきます。とはいえ、多くの企業では、60〜65歳を定年に設定しているのもまた事実です。
現役を希望して転職する人もいれば、定年を機会にいったん仕事をセーブする人もいるでしょう。どちらを選ぶにしても、50代は退職後のライフプランや資産状況を見直す絶好の機会です。
ファイナンシャルプランニングの第一歩として、まずご自身の財務状況をきちんと把握するところからスタートしてみてください。収入額・支出額・貯蓄額・投資状況・負債の有無など、生活に必要な金銭的な要素をまとめて、財務面の問題点を特定します。
さらに、病気やケガで働けなくなる可能性も考慮しながら、年齢とともに増加するであろう医療費や緊急時の貯蓄についても、きちんと計画しておく必要があります。
また将来の備えとして、これからの時代には、なんらかの投資が必須です。いきなり個別株投資は怖いというなら、リスクが少なく少額からスタートできる積立投資などもあります。投資は経済の勉強にもなりますので、負担にならない程度に取り組んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
本文で紹介した通り、私たちは人口の半数以上が50代という成熟した国で働いています。人口年齢が上がるというのは、若者が減っているという意味でもあります。
これからは、今までのように60歳で定年して年金でゆっくり老後を過ごすというパターンが成り立ちません。70代になってもバリバリ働き続けられることを念頭に、50代からのセカンドキャリアをしっかりと考えていきましょう。


