ミドルシニアがキャリアアップできる働き方、3つのポイントとは

長い間日本では、「同じ会社で頑張って働き続け、定年を迎えたらあとは年金でのんびり暮らす」という価値観のもとで生きていくのが、当たり前とされていました。

しかし「人口減少」「実質的な年金制度の崩壊」「急激に変化する社会トレンド」などの影響により、今日本では、転職や配置転換なども視野に入れた新しいキャリアプランが求められています。

そこで今回は、まず私たちミドルシニアを取り巻く環境について紹介したあと、ミドルシニアのキャリアアップに必要な項目をじっくりと解説していきます。

まずは、キャリアアップをきちんと定義づけよう

まずは、キャリアアップをきちんと定義づけよう

ミドルシニアのキャリアアップについてお話をする前に、まずは「キャリアアップ」とはどういう状態を指すのか、きちんと定義づけておきましょう。

「キャリアアップ」を辞書で引くと、以下のように説明がされていました。

  • より高い専門的知識や能力を身につけること。経歴を高くすること。
  • 高い地位や高給職への転職

キャリアアップという言葉を聞いて、悪いイメージをもつ人はまずいないでしょう。それは上記のとおり、キャリアアップをすれば「ステータス」や「高額な報酬」も一緒に手に入るからです。

ただ、私がこれまでに受けたたくさんの相談事例を振り返ってみると、辞書に書かれた意味でのキャリアアップを望んでいる人はほとんどいませんでした。

なぜなら本当に充実したキャリアには、「輝かしい経歴」や「地位」「高給」以外に、もっと大事にすべきポイントがあるからです。

ではいったい、その重要なポイントとはなんでしょうか。

それは、「やりがい」です。私たち社会人材学舎グループでは、キャリアを「仕事を通じて志を実現する成長プロセス」と定義としています。

もちろん地位や報酬も大事ですが、人それぞれ志向する分野で、「自分の能力を思いっきり発揮できる、やりがいのある仕事人生」を目指す。これこそが、真の意味でのキャリアアップだと思います。

ちなみに、通常のキャリアアップと区別するため、社会人材学舎では「自分の能力を思いっきり発揮できる、やりがいのある仕事人生」をキャリア充実、略して「キャリ充」と呼ぶことにしました。ミドルシニアがキャリ充になるための働き方やポイントについては、のちほどじっくりと解説していきます。

ミドルシニアを取り巻く環境の把握

ミドルシニアがキャリ充になるためには、まずミドルシニアが置かれている環境を、きちんと理解しておかなければなりません。この章では、以下3つの観点から分析していきます。

  • 日本人の平均寿命
  • 社会構造の変化
  • 社会人の学びの実施状況

それでは、ひとつずつみていきましょう。

日本人の平均寿命

日本人の平均寿命

※参考:図表1-2-1 平均寿命の推移|令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える

まずなんといっても私たちに直接関係してくるのが、この「平均寿命」です。上記のとおり、日本人の平均寿命は大幅に伸びていて、これまで主流だった「60歳定年」という生き方が完全に崩れはじめています。

具体的にみていくと、2019年の段階でも1955年の67.75歳から、約17〜20年も寿命が伸びていますね。もちろん、これからも寿命は加速度的に伸びていくと試算されており、日本政府は2017年に「人生100年時代構想会議」を9回に渡り開催しました。

これはつまり、これから私たちには、70歳・80歳になっても働き続けるキャリア設計が必要になってくるという意味にほかなりません。

そう、社会人人生はこれまでのように、わずか60年で終わりではないのです。少なくとも「あと30年は現役で働く」ミドルシニア世代は、ぜひそういった意識をしっかりともっていただければと思います。

社会構造の変化

まず結論からいうと、これまでミドルシニア世代の雇用ボリュームゾーンだったホワイトカラーの仕事は、間違いなく減少していくでしょう。理由は、大きく2つあります。

  • 急激な人口減少による経済規模の縮小
  • ビッグデータやAIの発達など「第4次産業革命」による事業のスリム化

まず人口減少ですが、ご存じのとおり、日本の人口は今後大幅に減少していくのが確実視されています。総務省や内閣府のデータを調べてみると、2050年には1億人を下回り、2100年にもなれば、なんと4,700万人程度にまで減少するという予測が述べられていました。

2100年まではまだ時間があるとしても、人口減少で市場規模が縮小すれば、私たちの働く場も減少するのは明らかです。

第4次産業革命の影響に関しては、あらためて説明するまでもないでしょう。

これからはあらゆるモノや情報がインターネットを通じて繋がり、人間の指示を必要としないAIが、新たな製品やサービスを効率よく創出していきます。ということは、これまで人間が関与してきたさまざまなホワイトカラーの仕事は、間違いなく淘汰されていくはずです。

社会人の学びの実施状況

社会構造の項目では述べませんでしたが、減少する労働者人口水準をある程度のラインで維持できているのは、女性と65歳以上の高齢者が積極的に就業をしているからです。

ただし、これからも継続して女性と高齢者が働くには、激しく移り変わる社会構造に対しての学びがどうしても必要になってきます。

全国就業実態パネル調査2018「どうすれば人は学ぶのか」によると、1年間に自分の意志で、仕事にかかわる知識や技術向上の取り組みをした人は約33%でした。

そして年齢を重ねるごとに、学びの割合は低下していきます。20代なら強制的に受けさせられる「OJT※1」や「Off-JT※2」といった学びの場も、ミドルシニアには提供されないのが一般的です。

労働者が学ばない理由をみると、「学んでも会社が評価してくれないから」「転職や独立を予定していないから」といった、いわゆる終身雇用制度による競争意識の薄さが大きな原因のひとつになっています。

たしかに終身雇用を前提として働いていれば、特別になにか新しい知識を学ばなくても、仕事と給料は保証されるでしょう。そうなれば、学び続けるためのモチベーションが弱くなるのは当然です。

一方で知識と技術の必要な専門職や転職経験者など、競争の激しい環境に身を置く人の学ぶ率は大幅に高くなっています

※1:仕事の実務を通じて新しいスキルを習得する機会

※2:通常業務以外でおこなわれる研修の機会

キャリアアップにつながるミドルシニアの働き方

キャリアアップにつながるミドルシニアの働き方

ミドルシニアが置かれている環境を理解したところで、今度はそういった厳しい環境下でキャリアアップを進めていくための働き方について解説していきます。今回お話しするのは、以下の3点です。

  • 転職や配置転換を前提にキャリアを構築する
  • テレワークの活用で体力の低下をカバー
  • 待遇を求めすぎない「やりがいを重視した働き方」

ひとつずつ解説します。

転職や配置転換を前提にキャリアを構築する

前述のとおり、これからは70代になっても現役で働くのが当たり前になってきます。ただし残念ながら、現状では60歳以降も同条件で働ける職場は、まだまだ少ないのが現実です。そうなると、やはり転職を前提としたキャリア構築が、必須条件になってくるでしょう。

とはいえ、もともと労働条件のよい大企業では、安易に転職するよりも社内で新しい活躍の場を求めるほうが、よい結果を生み出すケースも少なくありません

とくにゼネラリストを多く抱え、ポスト不足に陥っている大企業の場合、現場とマネジメントの両方に携わる「プレイングマネージャー」の需要は高いです。

もしあなたに高い現場スキルとマネジメントの経験があるなら、プレイングマネージャーとして力を発揮するという方向性も、ぜひ視野に入れておいてください。

もちろんそのためには、自分をひとつの商品と考え、周囲にその価値を知ってもらう必要があります。「この人は会社に大きな利益をもたらしてくれる」そういう評価をもらえるように、ぜひ日頃からしっかりと準備をしていきましょう。

テレワークの活用で体力の低下をカバー

新型コロナウイルスの影響から、自宅で仕事をおこなう「テレワーク」がだいぶ一般的になりました。

じつはこのテレワーク、ミドルシニアにとっては、非常にありがたい働き方といえます。なぜならば、通勤や取引先への移動といった地味に体力が必要な行為を、一切やる必要がないからです。

正直なところ、日頃から意識して体力づくりをしていない限り、40代・50代になって急激に体力の衰えを感じ出した人は少なくないと思います。

若い頃なら平気だったハードな営業行脚は年々しんどくなり、ムダに長い会議で心身ともにヘトヘトになる。テレワークなら、こういったことに苦しむ必要もありません。

企業側としても、全員が集まらなくてよいなら、莫大な維持費がかかる大きなオフィスは必要なくなります。通勤手当の支払いも発生しないし、これまで対象外だった地方や海外在住の優秀な人材を雇用することだって可能です。

もし現在、テレワークを積極的に導入していない職場で働いているなら、ぜひテレワークの活用を会社に提案してみてください。きっと、仕事の効率がアップすると思いますよ。

待遇を求めすぎない「やりがいを重視した働き方」

社内でキャリアを築いていくか、それとも転職をするべきか、ミドルシニア世代に突入すると、その判断は非常にむずかしくなってきます。

ただどちらを選ぶにしても、待遇を求めすぎない「やりがいを重視した働き方」が、スムーズなキャリアアップにつながるのは間違いありません。

これから転職を検討しているのであれば、まず報酬や待遇はこれまでよりもダウンすると、考えておきましょう。

でも待遇が悪くなっても、転職先の中小企業(転職先は通常中小企業がほとんど)で自分の能力を思い切り発揮できるとしたら、それは非常に「キャリ充」だと思いませんか。

また別記事でなんどもお伝えしていますが、中小企業では経営者の裁量が大きく、いったん結果を出せば、すぐに収入をアップしてもらえるケースが本当によくあります。

そういうわけですから、あまり報酬や待遇にはこだわりすぎず、まずは自分の力を発揮できる環境へ身を置くことに集中してください。

ミドルシニアがキャリアアップを成功させる3つのポイント

ミドルシニアがキャリアアップを成功させる3つのポイント

最後にこの章では、キャリアアップを成功させるポイントを3つほど紹介します。

  • ミドルシニア世代に期待される役割を知る
  • キャリアアップは、ゴールから逆算しよう
  • キャリアアップの可能性を信じる

どんなに頑張って働いても、上記ポイントを外せば、キャリアアップはうまく進みません。どれも大事なポイントばかりですから、抜けのないようにしっかりと理解していきましょう。

ミドルシニア世代に期待される役割を知る

70歳以降も働く時代のなかキャリ充でいるためには、かりに定年で現在の仕事が続けられなくなっても、いつでも仕事を獲得できるようにしておく必要があります

そのためには、なんといっても「他人の期待に応える力」を身につけておかなければなりません。自分で起業するなら別ですが、転職や配置換えの際には、必ず誰かの評価によってその成否が決定するからです。

もちろん40代以降なら、若い人よりも求められる期待値は高くなります。専門知識やスキルは当然として、マネジメント経験なども当たり前に期待されるでしょう

さらに50代以上ともなれば、社会情勢や市場の動きなども見据えた広い視野と、若い世代にスキルやノウハウを継承していく意識も求められます。

キャリアアップを成功させたいのなら、ぜひ自分たちに期待される役割をしっかりと理解しておいてください。

キャリアアップは、ゴールから逆算しよう

キャリアアップをスムーズに進めるコツは、「バックキャスティング」にあります。バックキャスティングとは、文字通り、「ゴールからやるべきことを逆算していく思考法」です。

ゴール(こうありたいと描いた自分の姿)が明確でなければ、途中でなにが必要なのかがわかりませんよね。したがって、キャリアアップの構築には、とにかくゴール設定がなによりも優先されます。

なお、ゴール設定は、少し余裕をみて広めに設定しておくのがポイントです。

たとえば、「食品メーカーのマーケティングマネージャーになる」というように、あまりにもピンポイントで狙いすぎると、目の前にある別なチャンスに気づかないこともありえます。

その点、「マーケティングのプロ」くらい広めに設定しておけば、角度の違うさまざまなチャンスにもきちんと目が届くでしょう。

また、現時点のスキルや能力を活かすという意味では、「フォアキャスティング(積み上げ思考)」も有効です。バックキャスティングをメインにしつつも、フォアキャスティングをうまく併用して、さらに精度の高いキャリアアップ像を構築していってください。

キャリアアップの可能性を信じる

最後に、キャリアアップの成功にとって、もっとも重要なポイントをお話しします。今回の記事をお読みのかたは、どうかご自分のキャリアアップの可能性を、強く信じてあげてください。

人間誰しも年齢を重ねると、どうしても保守的になってきます。気力体力とも若い頃のようにはいかず、自分に新しい可能性なんてあるのだろうかと懐疑的になる人も少なくないでしょう。

でも、あなたがキャリアアップできないというのは事実でしょうか。あなたが自分で勝手に決めた、単なる思い込みではありませんか。

私は断言します。あなたにはご自身が思っている以上に、まだまだ未知数の可能性が秘められています

それでも、現時点でどうしても自分に自信がないなら、そのときはこれからじっくりとキャリアアップしていけばよいのです。さきほど紹介したバックキャスティングで、なりたい自分に必要な項目を明確にして、ひとつずつクリアーしていきましょう。

まとめ

今回は、ミドルシニアがキャリアアップを成功させる働き方やポイントを紹介してきました。こまかいポイントはいろいろありますが、最終的にキャリアアップを成功させるのは、あなたが自分の可能性を信じられるかどうかにかかっています。

とはいえ、自分ひとりで自分の可能性を見つけるのは、いうほど簡単ではないかもしれません。そういう場合は、私どもが開催する「知命塾」のような第三者のサポートを受けながら、客観的にご自身を見つめ直してみてください。

きっと、キャリ充に直結する、新しい自分が見つかるはずです。