50代の転職を成功させるために理解しておくべきポイントとは

一般的に、50代の転職はむずかしいといわれています。しかしなかには、とくに苦労することなくすぐに転職を決める50代がいるのもまた現実です。同じ年代なのに、なぜこのような差がついてしまうのでしょうか。

さまざまな要因があるなかで、ひとつハッキリといえるのは、「50代の転職はスキルとキャリアの言語化がポイント」だということです。素早く転職できる人は、揃ってこの言語化ができています。

今回は、50代の転職に必要なポイントへ焦点を当てて、深堀りしていきます。

50代の転職がむずかしいといわれる理由

50代の転職がむずかしいといわれる理由

現代の50代は非常に若々しく、知識と経験を兼ね備えた人材が数多く活躍しています。しかし転職市場をみると、50代の採用状況は決してよいとはいえません。

総務省の統計※を調べてみると、「25〜34歳の年間転職率6.8%」に対して、「45〜54歳:3.3%」「55〜64歳:3.7%」と、50代はほぼ半分しか転職できていないのが現実です。

20代・30代より知識もスキルもあるはずなのに、どうして転職率がここまで低いのでしょうか。50代の転職がむずかしいといわれる理由は、大きく以下の4つが考えられます。

  • 30代よりも人件費が高いから
  • 柔軟性がなく扱いづらいイメージがあるから
  • 新しい技術に対応できなそうだから
  • 長く働ける若い人材を優先しているから

キャリアの長い50代を雇用すれば、給与もそれなりに支払わなければなりません。せっかく雇っても、新しい環境に適応できず辞めてしまえば企業としては大損害です。しかも、一般的に年齢を重ねるほど、新しい知識や技術をキャッチアップするのがむずかしくなってきます。

だから、50代になると役職定年や報酬の見直しをおこない、50代を第一線から外す動きを露骨におこなう企業が増えてくるのです。そういう現実のなか、50代が転職を成功させるには、後述する成功のポイントを踏まえた入念な準備が欠かせません。

※参考:労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均結果

50代の転職を成功させるポイント

50代の転職を成功させるポイント

狭き門である50代の転職市場で勝ち残るためのポイントを、5つ紹介していきます。どれも必須の項目ばかりです。すべてクリアできるように、しっかりと取り組んでいきましょう。

転職先へ自分のスキルとキャリアをしっかりと伝えられるか

結論からいうと、転職の成否は「転職先へ自分のスキルとキャリアをしっかりと伝えられるかどうか」がすべてです。

企業が50代を採用する場合、とにかく即戦力を求めてきます。つまり、「この人を採用したら、どうやって会社に貢献してくれるのか」という視点で、あなたは評価されるわけです。

したがって、採用担当者に「自分の強みとできること」を上手にアピールできなければ、まず採用はされないと考えてください。

私どものもとへ相談にきたAさんは、以前登録した転職エージェントの担当者から、まず「あなたはなにができますか?」と質問されたそうです。そこでAさんは、腕組みをして考え込んでしまいました。自分のスキルやキャリアをどうやってアピールすればいいのかが、わからなかったからです。

いくらなんでも、「営業部の部長ができます」とは答えられません。長期間働いていれば、どんな人にも必ずなんらかのスキルがあります。なのに、今まで自分を客観的に評価したことがないので、自分の価値を言語化できないんですね。

転職を検討している人は、なにを置いても自分のスキルやキャリアの言語化(商品化)に、取り組んでください。成功する転職は、まずそこからがスタートです。

自分のスキルとキャリアを徹底的に棚卸しする

自分のスキルとキャリアを言語化するには、まず自分の人生をじっくりと棚卸ししていきます。頭のなかだけで考えても、いつまでもぼんやりとしたままなので、棚卸しした内容をすべて書き出していきましょう。

自分の棚卸しをする際に注意すべきポイントは、以下の4点です。

  1. いいことも悪いこともすべて振り返る
  2. やりたいこと・できることを区別して考える
  3. 悪い点があればプラスの内容に置き換える
  4. 第三者のフィードバックをもらう

なかでも2については、勘違いをしている人も多いので注意してください。

というのも、せっかく転職をするのだからと「やりたいこと」を前面に押し出し過ぎれば、まず間違いなく採用してもらえません。前述のとおり、企業が採用したいのは、できることをたくさんもった有能な人材だからです。

また第三者のフィードバックも、非常に重要なポイントになります。自分ひとりで棚卸しをすると、どうしても評価が甘くなりがちです。採用するのはあくまでも他人ですから、「他人からみた自分の評価」をしっかりと知っておくと、客観的に自分を判断できます。

50代の転職で重視されるスキルとは

50代の転職で重視されるスキルは、専門知識ポータブルスキルの2種類です。同業他社へ転職する場合、専門知識がないと転職は100%ムリでしょう。新卒採用と違い、即戦力としてすぐに働いてもらいたいので、十分な専門知識がない人は採用対象から外されます。

異業種へ転職を希望するケースでは、逆に専門知識はそれほど問われません。業界が違うので、関係のない専門知識はほとんど役に立たないからです。その代わり、ポータブルスキルの有無が入念に問われると思います。

ポータブルスキルとは、厚生労働省が提唱した概念で、仕事のしかたや人との関わりかたに関する能力のことです。専門知識(厳密にはこれもポータブルスキル)があっても、段取りがうまくできず、さらに同僚や取引先とうまくおつきあいができなければ仕事はスムーズに進みません。

じつは面接官は、採用した人材が自社にマッチするかどうかを、とても気にしています。能力が高くても会社に馴染めず、すぐに辞めてしまう人をこれまでに数多く見てきているからです。

転職に必要なスキルについては、別記事でも解説しているので、ぜひそちらの記事にも目を通しておいてください。

転職の準備は在職中にやっておくこと

転職の準備は、必ず在職中にスタートしましょう。どれだけ現職へ不満があっても、転職先が決まらないうちに、退職すべきではありません。退職してから転職先を探しはじめて、かりに何か月もみつからなければ、おそらく精神的に参ってしまいます。

その点、先ほどのAさんは賢明でした。会社に不安を感じながらも、在職中にしっかりと転職の準備をしたため、精神的に追い詰められることもなくスムーズに転職できたのです。

その準備に関しても、後述する「知命塾」を活用したので、第三者の客観的な視点による棚卸しができました。これも、転職が成功した勝因のひとつといえるでしょう。

また、在職中に自分の商品価値が明確になった結果、現在の仕事に対しても意識や取り組みが変わってきたそうです。自信がつけば働き方も変わる。もし最終的に転職しない選択をしても、自分を冷静に振り返ったことで、間違いなくよい方向へ進んでいけるはずです。

転職の準備は第三者のサポートが必要「知命塾のススメ」

繰り返しお伝えしているように、転職にはスキルとキャリアの棚卸しが不可欠です。そして棚卸しは、必ず第三者のフィードバックが必要になります。

とはいえ、家族や友人にサポートを頼んでも、正直ほとんど意味がありません。親しいゆえに、どうしても思い込みの強い偏ったフィードバックになってしまうからです。そういう間違った棚卸しを回避するためにも、知命塾のような学びの場を活用していただければと思います。

知命塾は、弊社が運営する、戦略的にキャリアをつくりだす学びの場です。講師や他参加者のフィードバックにより、自分でも知らなかった自分の新しい魅力に気づけるかもしれません。

知命塾について詳細を知りたいかたは、まず無料Webセミナー「50歳以降を豊かにするためのキャリアプランの作り方(入門編)」に参加してみてください。

企業が50代に求める要素を知っておく

企業が50代に求める要素を知っておく

残念ながら、採用の決定権は相手側の企業にあります。いくら自分のキャリアに自信があっても、企業が求める人材像に当てはまらないと判断されてしまえば、採用はしてもらえません。そこで最後に、企業が50代の働き手に求める主な要素を4点ご紹介しておきます。

即戦力となる知識と経験

前述のとおり、50代の転職では、専門知識とポータブルスキルが求められます。この2点を身につけているのは、採用されるための大前提だと考えてください。

とはいえ、ただ専門知識とポータブルスキルがあっても、正直あまり意味はありません。企業は、「そういった能力をいかに新しい環境で活かせるか」という、即戦力としての適性を非常に重視しているからです。

会社が違えば、仕事内容も仕事の進め方も当然変わってきます。それなのに、「自分はベテランだから」と前職でのやり方を頑なに続ければ、会社からは扱いづらい人材と判断されてしまうでしょう。

このように、50代を採用する企業は、自社と採用する人材のマッチングを非常に気にしています。だから、「自分の知識と経験を会社の風土に沿う形でうまく役立てていく」という意識がとても大事なのです。

誰とでもしっかりコミュニケーションを取れる人間力

いうまでもなく、50代の転職者にとって、専門知識や技術力はコアとなる大切なスキルです。しかし、それ以上に会社は、あなたの根底にある「人間力」の部分を見ています。

50代で転職をすれば、しばらくは年下の上司の下で働くケースも少なくありません。とくに創業間もないベンチャー企業なら、社員全員が自分の子どものような年齢ということも十分考えられます。

こういった異なるバックグラウンドをもつ人とも、円滑にコミュニケーションを取れる能力がなければ、ミドルシニアの転職は正直厳しいと言わざるを得ません。

知識と経験のある人からすれば、「そうじゃなくて、◯◯したほうがいいのに……」と、なにか言いたくなる気持ちはよくわかります。もし、そういう上から目線の考えが頭に浮かんだら、頑張ってグッと堪えてください。

あなた以外の人にも、それぞれの考え方や仕事の進め方があります。まずは、他人との違いを受け入れて、相手のニーズや意見に耳を傾けるべきです。そういう尊重の意思が相手に伝われば、今度はこちらの話をきちんと受け入れてくれるでしょう。

他人の力を引き出すマネジメント力

マネジメントとは単なる「統率」や「指示」ではなく、他人の力を引き出すサポートの役割を果たしているのが理想です。成功するマネージャーは、以下のような能力をバランスよく備えています。

■コミュニケーション能力

メンバーとの円滑なコミュニケーションで信頼関係を築き、正しい情報共有やメンバーのモチベーション維持を図っていきます。

■目標設定 / 管理能力

チーム全体の明確な目標を設定し、それを実現するための戦略や計画を立て、メンバーとともに実行していきます。

■課題発見 / 解決能力

なんの問題もなくスムーズに仕事が進むケースは少なく、必ずなんらかのトラブルが発生するのが普通です。そういった時に、トラブルの原因をいち早く突き止め、的確な指示を出せる人はやはり周囲から高く評価されます。

■スケジューリング能力

タスクの優先度を判断し、遅れのないように個人とプロジェクト全体の動きを適切なタイミングで管理できる人は、会社から非常に重宝されます。

■高度な専門分野の知識

普段の実務は部下に任せていても、いざとなったらいつでも対応できるように、誰よりも高度な知識とスキルを身につけておく必要があります。「あの人は口だけだから」と思われてしまえば、マネジメントは決してうまくいかないでしょう。

もちろん、上記のような能力は、1日や2日で身につくものではありません。そういう意味では、経験豊富な50代の大きな武器になってくれる能力といえます。

新しいことにチャレンジする柔軟性

転職をして新しい職場で働くなら、新しいことにチャレンジする柔軟性が非常に重要です。

50代を正社員として迎え入れる場合、企業は自社環境や既存社員との相性をとても気にします。いくら知識と経験があっても、会社の風土にうまくハマってくれないと、即戦力どころか厄介な存在になりかねないからです。

そういう企業側の思惑を理解したうえで、50代はぜひ「アンラーニング」を意識してください。アンラーニングとは、これまでに学んだ知識や技術のなかで現状に適していないものを捨て去り、新しく学びなおす行為を指します。

近年では、AIのような技術革命が次々と起こっており、従来のやり方や考え方に縛られていたら、ビジネスシーンから取り残されてしまうでしょう。

私どもが知命塾でお伝えしている「リスキリング(学び直し)」とアンラーニングは、ふたつでワンセットが基本です。転職をしてから困らないように、できるだけ早い時期からしっかりと取り組んでおきましょう。

まとめ

20代に比べて、50代の転職はたしかに大変です。求人数も少ないし、スキルや経験に乏しい人は、そもそも転職のテーブルにすら乗ることができません。

しかし自分のスキルとキャリアを棚卸しして、わかりやすく言語化できれば、転職の確率は大きくアップします。ぜひ今回の内容を参考にして、自分の強みとスキルを、面接官にしっかりと伝えてください。