ライフステージが変化しても対応可能なキャリアのつくりかた

つい最近まで、「新卒から定年まで働いたらあとは引退」というのが、ごく一般的な働き方とされてきました。また結婚すれば男性が外で働き、女性は家庭を守るという価値観をもった人も、たくさんいたはずです。

しかし今や、時代は完全に変わりました。これからは性別を問わず、70代になっても働き続ける人がどんどん増えてくるでしょう。そういう労働環境になると、介護や子育てといった、ライフステージの変化に左右されないキャリアのつくり方が、本当に重要になってきます。

そこで今回は、ライフステージの変化とキャリアプランの関係や、そういった変化の影響を考慮したキャリアプランの立て方について、詳しくお話しをしていこうと思います。

人生100年時代には、ライフステージの変化による影響が生活を直撃する

人生100年時代には、ライフステージの変化による影響が生活を直撃する

ライフステージとキャリアの関係を考えるなら、まず以下の2点をしっかりと認識しておく必要があります。

  • 健康寿命の大幅な伸びに合わせて、引退の時期も10〜15年ほど長くなる
  • 労働期間が長くなれば、そのぶん、介護や病気による影響を受けやすい

65歳以上の人口が約30%も占める、超高齢化社会「日本」。さらに2024年には、50歳以上の人口50%超えが確実視されている状況です。ただし現代の50代は非常に若々しく、60歳を迎えても、まだまだ働ける人がたくさんいます。

多くの人は、健康に問題がない限り、定年後もあと10〜15年は余裕で働けるでしょう。実際、社会人材学舎とお付き合いのあるオーナー経営者は、70代・80代でも現役でバリバリ働いているかたばかりです。

とはいえ、労働期間が長くなると、「子育て」「介護」「病気やケガ」といった、ライフステージの変化による影響を受けやすくなります。

こういった変化の際にいったんキャリアから降りてしまうと、また元に戻るのは正直かなりむずかしいと言わざるを得ません。日本の企業では、若年層を優先して採用する傾向が、まだまだ強いですからね。

こういったライフステージの変化に対応するためのキャリアプランの立て方については、のちほど詳しく紹介します。

ライフステージの変化がキャリアプランに与える影響

ライフステージの変化がキャリアプランに与える影響

60歳を過ぎても充実した環境で働き続けるには、キャリアに影響を与えるライフイベントの実情をきちんと理解しておかなければなりません。この章では、とくに影響の大きい4つのライフイベントについて見ていきます。

子育て

子育て

※参考:コラム1 図表2-2 6歳未満の子供を持つ夫婦の家事・育児関連時間(週全体平均)(1日当たり,国際比較) | 内閣府男女共同参画局

女性がもっとも影響を受けるライフイベントといえば、やはり結婚と子育てでしょう。

現在は共働き夫婦が多く、結婚や子育てに対する負担のバランスは、だいぶ改善されてきたと考えられています。しかし現実をみれば、日本人女性の家事育児負担の大きさは、先進国でも文句なしのワースト1位です。

私自身も、男性でありながら、子育てについては相当悩んだものです。最初はベビーシッターや行政支援を利用すれば、なんとかなるだろうと軽く考えていました。

ところが、ベビーシッターを利用するには当然費用が発生します。行政支援も、自治体ごとの格差が大きく、必ず利用できるとは限りません。

なによりも葛藤があったのは、「子どもが小さいうちに、親の都合で子育てを一部放棄して働くこと」に対する罪悪感です。最終的に、私はいったんフルタイムのキャリアを捨てて、子育て中心の生活を選択しました。

しかし正直なところ、まだまだ男性が中心となって子育てをする世帯は少ないです。また男女問わず、いったん外れたキャリアを取り戻すのは相当厳しいと、覚悟しておかなければなりません。

親の介護

前述の子育て以上に深刻なのが、親の介護です。ひと昔前は、介護は嫁がするものという風潮がありました。しかし、共働きが当たり前の現在では、男女問わず誰もが向き合わなくてはならない問題です。

  • 誰がどちらの親の面倒をみるか
  • 遠方に住んでいる場合はどうするか
  • 介護費用の捻出
  • 介護休業中の収入確保

ざっと思いつくだけでも上記の問題をクリアーしなくてはならず、本当に介護は頭の痛い問題といえます。

法的なサポートとしては、「育児・介護休業法」の利用を真っ先に検討するようになるでしょう。育児・介護休業法を申請すると、最長で93日まで休業できます。その間に、介護施設へ入所できれば、大きくキャリアを落とすことなく復帰も可能でしょう。

ところが、人気の施設へ入居するなら1年待ちはザラ。公益財団法人生命保険センターの調査によると、介護に要する期間の平均は4年11か月となっています。

つまり育児・介護休業法を利用しても、期間中に介護が終了することは稀であり、介護によるキャリアダウンは避けられないのが現実なのです。

しかも介護休業中は通常の給料がもらえず、介護休業給付金に頼ることになります。ただ、給付金は満額もらえるわけでなく、給料の67%までしか保障されません。なので、93日以上自宅で介護する場合の、金銭的な問題もきちんと考えておく必要があります。(企業によって、待遇は異なります)

病気やケガ

現代のミドルシニアが健康で若々しいとはいっても、やはり20代の頃とは違います。年齢を重ねるごとに増える病気やケガのリスクは、どうしても避けられません。

たとえば三大疾病の代表「がん」の場合、40歳を超える頃から増えはじめ、55歳前後から加速度的に増えています。(国立がん研究センター「がんの統計14」)

かりに重大な病気にかかったとしても、完治すればいくらでもキャリアのリカバーは可能です。しかし脳血管疾患のように、体に麻痺が残ってしまった場合などは、残念ながら今までのようなパフォーマンスは残せないでしょう。

ケガも一緒です。大きなケガをして、言語に麻痺が起きたり手が不自由になったりすれば、最悪今までのキャリアをすべて捨てることにもなりかねません。

リストラや倒産

働く期間が長くなれば、どうしてもリストラの可能性は高くなります。実際、2021年の上場企業による早期・希望退職募集は、84社もありました。前年の93社と合わせて、2年連続の80社超えです。

前回連続で80社超えしたのは、あのリーマンショックの時でした。今回は新型コロナの影響が大きく、現在の経済は、少なくともリーマンショック級のダメージを受けているのは間違いありません。

これからしばらくの間、経済悪化の負荷に耐えきれずに、リストラを施行する企業は増加すると考えられます。もちろん、リストラでは間に合わず、いきなり倒産する企業もますます増えていくでしょう。

そう考えると、私たちは突然おこなわれるリストラや倒産に対して、なんらかの対策を講じておく必要があります。

ライフステージの変化によるキャリアダウンを最小限に抑える方法

ライフステージの変化によるキャリアダウンを最小限に抑える方法

ここまでの話しで、私たちを襲うさまざまなリスクについて、あらためて理解していただけたと思います。あとは、ライフステージの変化によるキャリアダウンを最小限に抑える方法を知り、実践していくだけです。それでは、ひとつずつ解説します。

離職した際の対応策を事前に計画

ライフステージの変化による悪影響を最小限に抑えるためには、とにかく離職した際の対応策を事前に計画しておくのが、最優先事項になります。

冒頭でも触れたように、70代でも働き続けるのがスタンダードになると、働く場を失うのが最大のリスクだからです。

また、運よく働き続けられたとしても、労働条件が悪化すれば長期間働くことはできません。「減給」「早期の役職定年」「理不尽な出向や配置換え」などについても、しっかり考えておくことをオススメします。

いずれにせよ、ライフステージの変化は、ある日突然やってくるものです。そのときになって慌てることのないよう、とにかく早めに計画を立ててください。

実力をつけてオンリーワンの人材になる

不慮の変化に対抗するには、実力をつけてオンリーワンの人材になっておくのが、1番確実な方法だと思います。

企業にとっても、子育てや介護による人材の放出は、大きな損失です。そういった状況を回避するには、企業側による制度の改善が欠かせません。しかし雇用される側も、リストラの際には、逆に引き留められるくらいの人材になっておく必要があります。

専門スキルは当然として、ある程度の年齢になれば、マネジメントスキルも問われるでしょう。職種にもよりますが、IT系のスキルは今や必須ですし、英語などの語学力も身につけておきたいところです。

そのほかビジネスパーソンに最低限必要なスキルについては、別記事で紹介しています。よかったらそちらの記事も、読んでみてください。

十分な資金を用意しておく

介護や病気で今の仕事を辞めなくてはならない場合でも、十分な資金があれば、慌てずに済みます。

しかし現実には、子育て資金や子どもの学費を確保するのが精一杯で、その他に貯蓄はできないという家庭も少なくありません。たしかに必ず支払いが発生する学資関係と、いざというときの資金では、後者が後回しにされるのは仕方がないでしょう。

それでもやはり、急なライフステージの変化に対する備えは、同時並行でおこなっておくべきです。前述のとおり、こういった変化はいつ起きるかわかりません。もし離職せざるを得なくなったときに、まったく生活資金がなければ、いきなり生活が破綻してしまいます。

そのためには、まず毎月必要な生活費をしっかりと洗い出してください。できれば、最低限必要な金額×1年分程度は、確保しておくようにしたいですね。

ちなみに、1か月に必要な生活費のモデルについては、下記記事で紹介しています。よかったら参考にしてください。

フリーランスや起業も視野に入れる

定年後の充実した働き方を求めるのであれば、必ず一度は、フリーランスや起業の可能性を検討してみてください。

これから70代まで働くのが一般的になっていくとはいえ、現時点では、60歳定年の企業がほとんどです。もちろん、65歳まではなんらかの形で再雇用してもらえるでしょう。しかし個人的には、定年後再雇用はあまりオススメしたくありません。

【定年後再雇用の主なリスク】

  • 一般的に労働条件は著しく下がるケースが多い
  • 65歳以降の保障がまったくない
  • 再雇用の期間に、より条件のいい仕事を逃してしまう可能性がある

厚生労働省のデータによると、再雇用時に「嘱託」として働く人が、60%近くもいるそうです。役職がなくなり報酬も減るのは、精神的にツライもの。それでいて仕事内容は定年前と同じというのですから、モチベーションが上がらないのも当然です。

さらにいえば、そうやって65歳まで雇用される期間中に、70歳以降も働けるほかの仕事を逃してしまうかもしれません。普通に考えれば、65歳から好条件で転職をするのは、ほぼムリです。

法改正の流れをみると、いずれは70歳までの雇用継続もあり得ますが、当面は現状のままでしょう。それならば、まだ余力をたっぷり残した40〜50代のうちに、フリーランスや起業の可能性を真剣に検討しておくべきです。

まとめ

ここまでお話ししてきたとおり、これからは70代まで働けるキャリア設計が、とても重要になってきます。

定年から70代に向けて充実した仕事を継続するためにも、介護やリストラといったライフステージの変化に、私たちはしっかりと対応していかなければなりません。

今回紹介した内容をしっかりと頭に置いて、決してキャリアダウンすることのないように、しっかりと準備をしていきましょう。

なお、具体的なキャリア設計の立て方については、「無料Zoomセミナー」で詳しくご紹介していく予定です。興味のあるかたは、お気軽にご参加ください。