私ども社会人材学舎では転職を希望する相談者に対して、「転職を成功させるには、必ずマーケティングの視点で転職の準備をしてください」と、いつもお話しています。
ところが「転職とマーケティング視点の関連性」についてお話ししても、すぐに理解してもらえないケースが少なくありません。そういう場合は、転職を自社新商品の販売に置き換えて説明します。
「新商品を売り出す場合、販売担当のあなたはまずなにをしますか?」
市場動向の調査・商品価値やターゲット設定・競合対策・適切な価格設定・販売手法の選定など、マーケットを徹底的に調査し、商品を売り込むための対策を練り上げるでしょう。
こういった説明のあとに、「転職市場では、あなたが商品です。もちろん競合商品(ほかの転職希望者)もたくさんあります。だからあなたという商品を選んでもらうために、綿密なマーケティング対策が必要なんです」というと、ほとんどの相談者は気づいてくれますね。
ということで今回は、転職の準備とマーケティング視点の関係について、わかりやすくお話ししていく予定です。転職準備中のかたは、ぜひ最後まで読んでみてください。
=目次=
転職の準備には、マーケティング視点をもとう
それではさっそく、転職にはどのようにマーケティング視点を持ち込めばいいのかを、具体的に解説していきます。今回ご紹介するのは、大きく以下の5点です。
- 市場の動向調査
- 差別化ポイント
- ターゲット設定
- 報酬額設定
- アプローチ戦略
それではひとつずつ解説します。
市場の動向調査
まずはなんといっても、転職市場の動向調査です。いくら転職したくてもニーズがなければ転職できませんから、どんな人材に需要があるのかをしっかりと分析してください。
市場動向調査のポイントとしては、定量調査と定性調査の両方をしっかりとおこなうことがあげられます。
調査対象の数値を調べる定量調査の観点からは、転職の事例が多い業界や職種・年齢層・有効なスキルなどを、過去データにもとづいてチェックする必要があるでしょう。
一方、定性調査で数字には表れない転職の実態をみるなら、口コミサイトなどのチェックも有効だと思います。ただし口コミは信憑性に欠けるケースもあるので、鵜呑みにはできません。あくまでも参考程度にとどめておいてください。
また可能であれば、セミナーやイベントで、経営者や社員の話を直接聞いてみるのが一番です。あるいはインタビューや書籍などに目を通すのもよいでしょう。いずれにせよ、まずは自分で、希望する転職市場をしっかりと調べることが重要です。
差別化ポイント
少しでもマーケットについての知識がある人なら、差別化が重要というアドバイスに反論する人はいないでしょう。また差別化は、40代から50代といったミドルシニア世代の転職では、とくに重要視されてきます。
考えてみれば当たり前の話で、人と同じようなことしかできないなら、経営者は「給料が安くて馬力もある若手」を選ぶからです。
したがって、まず自分はなにができるのかを分析し、自分の強みを明確にする必要があります。そしてその強みをしっかりと転職先企業にアピールできれば、転職の確率は大きくアップするでしょう。
ただし自分の強みをみつけるのは、思っているよりも簡単ではありません。効率的に自分の強みをみつける方法については、また最後の章でご紹介します。
ターゲット設定
ターゲット設定を成功させるポイントは、他人とターゲット先をずらすことに尽きます。
転職をする場合、現職と近い業界の会社がターゲットになるケースが多いです。当然あなたと同じようなキャリア・年齢・スキルの人が、たくさん転職活動をしています。
となれば、よほど飛び抜けた実力や実績がない限り、転職は激しい競争になると容易に想像がつくでしょう。だから、ほかの人と同じような条件で会社を選んでいては、転職の確率は大きく下がってしまいます。
それなら少し視点を変えて、たとえば立ち上がったばかりのベンチャー企業はどうでしょうか。ベンチャー企業や中小企業の場合、報酬面や体制は整っていないかもしれませんが、あなたのスキルや経験が重宝される可能性は大幅に上昇します。
多少報酬がよくても歯車として窮屈に働くより、実力を思いっきり発揮して望まれながら働けるのは、とても幸せなことだと思いませんか。
報酬額設定
まず転職をするとほとんどのケースで、報酬額は現在よりも下がると思ってください。なぜならよほどの実績がない限り、今より規模の大きい会社への転職は困難だからです。
もちろん扶養する家族がいるならば、家族を養える最低限の金額は確保する必要があるでしょう。しかし中小企業の場合、実績を積めばあとから報酬額が大きくアップするケースも少なくありません。ようはあなたが、転職先企業にとって必要な存在だと思われればいいのです。
ということで、勝負は実際に働きだしてから。現在の報酬額や希望報酬額を基準にするのではなく、まずはスタートラインに着けるような報酬額で妥協するのもひとつの考え方だと思います。
アプローチ戦略
ここまでお話ししてきた内容は、いうなれば準備編です。準備はもちろん大事ですが、準備したものをいかにうまくアプローチできるかが、最重要ポイントになるでしょう。
そのためには最低限、以下の2点はしっかりと準備しておきたいところです。
- ターゲット(転職先企業)の心に響くストーリー設定
- 自分のストーリーをうまく伝えるコピー
ミドルシニア世代ともなれば、なんらかの強みや価値をもっているのは当たり前。あとは面接時に、いかに採用担当者や経営者へ自分を売り込めるかが勝負です。
また面接で自分をアピールできる時間には、どうしても限りがあります。伝えるべきストーリーは、テレビ広告のコピーのように短い時間にまとめておきましょう。もちろんさまざまなシチュエーションを想定して、シミュレーションもやっておくべきでしょうね。
転職に必要な準備3ステップ
ここまで、転職の準備とマーケティング視点の関係について解説してきました。最後にこの章では、転職に必要な準備を以下3ステップにわけて解説していきます。
- 転職前にやっておくこと 1. 転職の動機を明確にする
- 転職前にやっておくこと 2. 業界・企業研究
- 転職前にやっておくこと 3. 自分の棚卸し「自己分析ワークショップ」のススメ
ひとつずつみていきましょう。
1. 転職の動機を明確にする
転職の動機は、面接時に必ず確認される項目のひとつです。質問されたらすぐに答えられるよう、事前にしっかりと準備しておきましょう。
ミドルシニアの転職者には、「即戦力」が求められます。したがって、自分の経験とスキルをどのように転職先企業で活かしていくのか、具体的に提示しなければなりません。
そのためにも、転職先企業と業界のリサーチは念入りにおこなってください。「なんだ。うちの会社のこと、よくわかっていないじゃないか」と思われてしまえば、相手にマイナスな印象を与えてしまいます。
また志望動機を使いまわしていると思われないように、必ず転職先企業のオリジナル情報に絡めた志望動機を考えておきましょう。
2. 業界・企業研究
前述のとおり、転職を希望する企業の研究は、なるべく詳細におこなっておくべきです。理由は2つ。
ひとつめは、さきほど説明したように、面接で答えられるようにしておくため。もうひとつは、転職のミスマッチを防ぐためです。
志望理由にあげるのは好ましくないとしても、実際の転職となれば、労働条件や福利厚生も大いに関係してきます。いくら転職成功のために条件を妥協するといっても、どうしても妥協できないポイントはあるでしょう。
ムリに妥協すれば結局不満が残り、また転職をするはめにもなりかねません。そういったミスマッチを防ぐためにも、最低限、以下の内容は調べておくべきです。
- 会社概要
- 企業理念
- 事業規模
- 給与・勤務時間など労働条件
- 主な業務内容
- 業績
- 業界での競争性
上記の内容は、公式サイトや書籍などで、あらかた調べられます。また上記にはあげませんでしたが、各種リクルートサイトなどで、職場の雰囲気など「社風」もチェックしておきたいところです。
3. 自分の棚卸し「自己分析ワークショップ」のススメ
差別化ポイントの項目で、自己分析はなかなかむずかしいという話をしました。まず結論からいうと、自己分析だけではなく第三者の評価が必要です。
第三者の評価が必要な理由はシンプルで、自分では自分のことを想像以上に客観視できていないからです。
たとえば自分は短気だと思っていたのに、「◯◯さんは、本当に我慢強いですよね」と真逆の評価をされたことはありませんか。また自分が当たり前だと思っているスキルが、他人からみたらとてつもない価値があることも多いものです。
さらに自己分析の場合、どうしても自分に都合のよいフィルターを通して、過去の自分を振り返ってしまうもの。誰しもダメだった自分の過去と向き合うのは、とても怖いですからね。
だからこそ、他人から今の自分がどうみえるのかを、客観的に知る必要があるのです。ただし家族や友人に聞いても、必ずなんらかのバイアスがかかっているので、ほとんど意味がありません。必ず専門のコンサルタントにアドバイスをもらってください。
まとめ
今回は転職における準備の重要性について、詳しくお話ししてきました。転職を成功させるには、まず自分を商品に置き換え、いかにして市場に受け入れてもらえるかを真剣に準備することが不可欠です。
この、転職にマーケティングの考えを持ち込むという視点は、ぜひ忘れないでください。
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