定年再雇用は、幸せな制度か。

定年再雇用は、幸せな制度か。

とある有名企業でお聞きした話。

「当社では役職定年がありません。役職者は役職者のまま60歳を迎えることができます。また、役職が同じ限り50代半ばで給与テーブルが下がるようなことはありません。もちろん、定年再雇用も65歳まで。だから、社員には安心して働いてもらえる環境になっています。」

これなら社員は何も心配することなく定年を迎えられそうだ。
「が、しかし…」とその後が続いた。

「確かに定年までは安心して働いてもらえることはできました。しかし、再雇用制度は見込みが違いました。再雇用になった元役職者が社内の各部に散って、社内が活性化することを考えていたのですが、実際にはそうした人材を欲しがる手が挙がりませんでした。やりにくい、との理由です。だから再雇用を望む人は自分が今までいた部署に残るしかない。そうすると今度は元役職者のほうがやりにくい。プライドもある。もちろん、直属の部下だった人もやりにくい。結局は再雇用を選択せずに、或いは選択しても短い期間で退社をするというケースが殆どになってしまいました。」

「こうして退社をした人達は、その後が大変でした。突然会社の外に出ることになり、いきなりの転職活動です。でも65歳まで安心だと思っていたので何の準備もしていません。大手の会社にいたからといって、その経歴だけで雇ってくれるところはないという現実に直面したのです。そういうOBが、少なからずいます。」

「社員にとって良かれと思って始めた制度です。しかしその反動で、いつか会社を離れたときのために準備をするという意識が全く無いままの社員を生み出すことになってしまった。今思えば同時に、会社を離れた後のキャリアプランを立てておく必要があること、つまりキャリアの自立意識を持たせる施策を、ミドル以降の社員にしておくべきだったと思っています。」

会社に長く居られるという意味では一見、定年再雇用は幸せな制度に思える。しかし、大きく下がる報酬、そしてやりがいのない仕事に直面し、1年程度で辞める人。そこから新たに働こうと思っても、社外に出る準備が無いので、行き場がない。こうした話を多く聞く。
仕事にやりがいを求めない、とにかく幾ばくかでもお金を貰えれば良いと割り切れる人はそれでも良いが、仕事にやりがいを求めるのであれば、早い段階から自立のための準備をしておくことをお勧めする。