[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり16年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で7年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。
第45回「上司次第」
この仕事をしていると、時折、とんでもなく仕事が出来る人に会うことがある。それも所謂、著名人では無くて。
先日お会いした方も、その日の最後のアポイントだったと言うこともあるが、時間を忘れて、ついついその経歴の詳細伺っているうちに、一時間半が過ぎてしまった。
彼の専門領域では、比類無いレベルの方ではと思い、紹介者の方に確認すると、次のようなメールが。
「彼のビジネスセンス、その根源にあるお客さんや市場全体を理解する力や好奇心、そしてそれをもとに壮大なビジネスアイディアを創り、遂行し、実行していく力。これらに関して彼を上回れる人物は、日本は勿論、世界中見渡しても他にいないのではないかと実は私も思っていました。それくらいの実力と実績、そして経験があります。
しかし一方で、彼の最大の弱点は、その彼のセンスと能力を見抜けない、あるいは使いこなせない上司やリーダーに当たったとき、彼はストレスがたまり、それが露骨に顔とか態度に出てしまうことです。
器が小さかったり、端的に言えば頭が悪かったりする上司やリーダーに当たった時は、彼の才能が逆に反発を買うことになります。加えて、その方が嫉妬深かったりするともう最悪で、完全にモチベーションを下げてしまいます。
しかしながら、彼の才能を的確に評価し、いや、もしかしたら評価できずとも、その可能性を信じ、機会を与える上司のもとでは、世の中を変えるような仕事をします。実際、その実績は聞いてもらった通りです。」
社長であるとか、事業部長と言う、組織のトップとしての紹介ではなく、ある重要な機能のスペシャリストの場合、このレベルの人でも、いやこのレベルの人だからこそ、パフォーマンスが上司次第になると言うことを再認識した瞬間だった。
そして、この仕事をしていると、候補者の方のリファレンスと言うのは良く求められるが、逆にその方が所属する組織のリーダーのリファレンスを、クライアント企業に求めると言うのは聞いたことが無く、今回、このレベルの方なら、あえてそれをチャレンジしてみたいとまで思った瞬間でもあった。
そして改めて、この仕事をしていない限りお会いするはずのない方々に、こうして日々お会いできることに、日々日々感謝である。
(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。