第44回「日本人の活躍の総和」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり16年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で7年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第44回「日本人の活躍の総和」

ある外資系企業で、日本法人ではなくヘッドクォーターの経営幹部として活躍中の方との面談時のコメントから。

「日本のエグゼクティブもそうだけれどもっと中堅や若手の人に、外資系の日本法人や日本支社ではなく、ヘッドクォーターや、違う国で働く経験をして欲しい。

日本の外資系企業の拠点は、日本が成長市場でなくなった今、ますます営業的な組織になってしまう。だからこそその中に留まるのではなく、自ら機会を捕えて積極的に外に出て行って欲しい。
現在、私が勤める会社もヘッドクォーターには日本人はゼロ、アジアと言う枠組みでも数人しかいない。
しかしヘッドクォーターに行ってみてわかるのは、情報の質と量が桁違いだと言うこと。まさにそこには情報格差がある。

その厳然たる事実を前にして、そもそも最終意思決定者であるCEOと同じ空間で仕事をする経験を是非若いうちにすべきだと痛感している。
日本はじめ各国の組織ではオフィシャルになった情報は当然受け取れる。しかし、その手前でどんな議論がなされているのかを知らないと、ビジネスマンとしての成長の質も幅もスピードも全然違ってくるから。

そして出来れば、そのままヘッドクォーターの中でプロモーションするか、日本に帰らず、違う国で働いてまたヘッドクォーターに戻るような、そんな経歴の人が是非増えて欲しい。
中村さんも、外資の人に会うときは、そんな可能性があるなら是非にと、若い人にこそ、そういうことを薦めて欲しい。

ちなみに前職の後輩が先日ヘッドクォーターに行くことになってお祝いの送別会をしたけれど、そのきっかけは彼の元上司のExpatに、おべっかを使うとか付け届けをするとかでは無く、必死で食らいついて真剣に仕事し、彼の期待を超える仕事を心掛けていた結果、帰国後に彼に呼ばれたと言うのが実情。こういうことを皆がわかっていれば確実にそういうチャンスをモノにする人は増えるはず。

日本の少子化はそんなに簡単に止められないし、仮に有効な手立てが見つかってもそれが市場の再拡大となるのは20年も30年も先の話だから、それはそれとして“日本人の活躍の総和が広がる”ように、是非若い人達には頑張って欲しい。」

良い響きの言葉であり、現実的な目標でもある「日本人の活躍の総和が広がる」ことに、私もこの仕事を通じて少しでも貢献したいと強く思った瞬間でした。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。