第43回「三年と言う時間」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり16年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で7年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第43回「三年と言う時間」

たまたま同じ時期に、私の目から見て、その世界では上位コンマ何%と言うレベルの御二方から、三年と言う時間軸について次のような言葉を伺いました。
まずは超大手外資系から、典型的な日系オーナー企業に転じた人から。

「前職からの転職者で、成功しているか否かは、ごく端的に言うと、「スキルがしっかりしているか」「それを使えるところに転職しているか」に尽きる。業界の知識や、当該企業及びその商品はあとから学べばいい。
スキルがあるかないかは、自分の専門領域、得意領域であれば、本一冊書けるかどうかというレベルの話。
それを使えるところか否かは、例えば自分の場合は、同じ売り場、同じ価格帯、つまりは消費者も、流通チャネルも同じと言うのは確認して転職した。
必ずしもすべて同じである必要は無いが、商品の改廃の時間軸とか、お客様の買回りの頻度等々を冷静に分析し、自分のスキルが使えるかどうか、役に立つかどうかの見極めは大切。

一方で社内政治と言うか、立ち回りだけが上手くてプロモーションしているのは、転職は大半が失敗に終わり何度も転職を繰り返す。
3年程度で転職を繰り返している人にろくなのはいない。仕事が出来ないのがばれる前に、もしくはばれてしまったから、と言うのがこの位の年限。
席を立つ、または立った理由を聞いて、そこを少し突っ込んだ際に、明確な答えや説明を聞けないのは、やはり仕事をしていないか、できないかのどちらかです。いや、両方と言うのもありますが。

自分自身の場合でも、会社を変えるために、ムード・カルチャー・社風を変える努力と、それを確実なものにする為に、戦略を徹底し、仕組みを作り、実績・結果を出すことが更に重要でしたし、それも一人で全てやるのではなく、画一化せず、皆を巻き込んで、だから意見も言ってもらい、取り入れて活用し、そう言うことをしていたら3年くらいはあっと言う間に過ぎてしまいました。」

一方で、ある業界で圧倒的な実績を上げつつも、途中二社はちょうど三年で転職している方からは。

「入社前に伺った期待値や、入社後1、2か月で見える課題を完璧にやり切るにはちょうど三年くらいが一区切りで、その間に見えてきた、より大きな課題をやるには、そこからまた三年、いや五年くらいかかるのだけれど、その際に、トップと、もしくは大株主等と話し合うわけですよ。そこまでやりますか、と。
で、残念ながらこの二社は、有難うございました。そこまでは今はまだいいです、となって、結果、次の会社に行ったのですけれどね。」

三年と言う時間の意味を考えさせられる、御二人の言葉でした。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。