第42回「リセールバリューを考えての転職」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり16年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で7年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第42回「リセールバリューを考えての転職」

ウィキペディアによれば、「リセールバリュー(英語:resale value)とは、一度購入したものを販売する際の、再販価値のこと。中古車販売などの際に使われることが多い。」という定義なので、あまり適切ではないのかもしれないが、あえて、転職を考える際に、重要なポイントとして考えてみたい。

ごく分かりやすく言うと、数年後、もし再度転職を考える際に、レジメにこの次の会社と、そこで何をしたか記載された時、それは魅力的に見えるか、その経歴を評価してオファーを出す会社はどこだろう、と言うことを、私は候補者の方に案件を勧める際に考えるようにしています。

ベストなのは、次の会社でビジネスマン人生を全う出来ることですが、ご紹介して一部上場企業の社長を長く勤めあげられ、後は社外取締役くらいかなと思っていたら、60代後半に入ってもまだフルタイムで働こうとされている方もいらっしゃるので、やはりその視点は今後も大切にして行きたいと思います。

その際に大切なのは単なる会社の知名度や格だけではありません。確かに私も野村證券在籍時に、ある先輩から「外資に行くのだったら中途半端なところではなく、トップのところに行くのだぞ。そうすれば結果上手くいかなくても、少しずつランク下げながら数回は転職できるから。」と言われたことを鮮明に覚えています。

一方で転職する際には、大企業から中堅成長企業と言うのはごく一般的な事例なので、あまり会社の格やサイズに拘ると選択肢が狭まるどころか、中高年にとっては選択肢が無くなることさえあります。

とは言え、会社のサイズと言うのは違う意味でも重要です。若い頃、一度ベンチャーに参画してみたいと言うのは、それはそれでありだと思いますが、年齢を重ねて以降は、管理系の人は兎も角、事業サイドの方は、仮にその会社がうまく立ち上がらなくて再度転職活動をする際には、見識を疑われるリスクがあると言う覚悟が必要です。

つまり、こう言う会社の規模感や知名度にも、自身が自分の経歴をどう考えて来たかが現れますが、それ以上に、より大切なのは、職歴の一貫性と言うものを大事にされるべきと言うことです。

会社の知名度であったり、経済的条件を優先するばかりに、求められる職責と、自らが強味とする知識・経験・能力が嚙み合っていない転職は、レジメを一読したらプロが見ればすぐにわかります。そしてその不完全燃焼さは、企業の面接の場では致命的なマイナスポイントとなってしまうのです。

一例としての「外資系トップ企業から」と言うのは、少なくとも会社の格で自分のリセールバリューを確保しようと言うことです。しかしそれ以上に大切なのはあなた個人の「職歴の一貫性」と言うことです。
転職先の会社があなたを迎える「目的」「期待」と、あなたがその会社に入社してなしうる「仕事」が合致し、そしてあなた自身がその会社に入る経歴上の「目的」が満たされているということが、リセールバリューを維持向上させるポイントと考えます。

尚、一概に言えるわけでは無いですが、業種によっても、学歴や職歴で、リセールバリューの有無、高低は大きく異なってきますので、そこはやはりプロとしてのエージェントのアドバイスを大切にされることをお勧めします。
より正しくは、一度、この言葉ではなく、この考え方を共有してみて、それを厭わないコンサルタントの方と長くお付き合いされることをお勧めします。

最後に。
当然の如く、どんなに優れたコンサルタントでも、全てのことを正しく判断ができるわけではありません。あくまで仕事のスタンスとして、と言う理解でお願いします。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。