求人票をみればすぐにわかる!ブラック求人に騙されない方法とは

これから転職をするなら、誰だって、できるだけ条件がよくて長期間働ける企業を選びたいですよね。

ところが世の中には、労働条件が極端に悪い、いわゆる「ブラック求人」が数多く出回っています。こういうブラック求人は、条件の悪さを隠して、巧みに応募者を誘導しようとするものばかり。

そういった実情を知らずに入社してしまえば、あなたの転職生活が厳しいものになるのは明らかです。

そこで今回は、ブラック求人やダメ転職エージェントの見抜き方について解説していきます。ブラック求人に引っかかってしまった場合の対処法も紹介するので、転職を検討中のかたはぜひ参考にしてください。

ブラック求人を出すブラック企業とはどんな会社なのか

ブラック求人を出すブラック企業とはどんな会社なのか

ブラック求人について解説する前に、まずはブラック求人を出す「ブラック企業」とはどんな企業なのか、きちんと定義づけておきたいと思います。

ブラック企業の定義

まず結論からいうと、ブラック企業に明確な定義はありません。ほとんどの人は、労働条件の悪い会社を、なんとなくイメージでブラック企業とよんでいるだけだと思います。

とはいえ、ここまでブラック企業という言葉が浸透しているからには、なにか共通事項があるはずです。そこで、厚生労働省の情報サイトを調べてみると、ブラック企業の一般的な条件が3点書かれていました。

厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。

引用元:「ブラック企業」ってどんな会社なの?|Q&A|確かめよう労働条件

なるほど、たしかに「長時間労働」「過酷なノルマ」「サービス残業」「パワハラ」など、まさに私たちがイメージするブラック企業そのものですね。

こういったブラック企業に捕まれば、充実した社会人人生は送れず、最悪、体と心を壊す可能性もあります。実りある転職にするためにも、私たち労働者には、ブラック企業をしっかりと見抜く眼力が必要です。

ブラック企業の見分け方

ブラック企業は、以下のようなデータの数字が極端に悪いので、調べれば「ブラック企業かどうかの」判断はおおよそつきます。

  • 平均勤続年数
  • 離職率
  • 採用実績
  • 賃金基準
  • 有給休暇の取得率

ただし、すべての企業でこういった情報を公開しているわけではありません。なかでも中小企業の場合、こういった情報を調べるのは実質不可能でしょう。そういう状況でできることといえば、まずは口コミのリサーチが考えられます。

悪い噂というのは、案外地元で有名なことが多いもの。友人知人に「この会社って知ってる?」と聞いてみれば、思わぬ情報が聞けるかもしれません。

あとは、求人情報の確認でも、ある程度予想が可能です。口コミは必ずみつかるものでもないので、実際は求人情報のチェックがブラック判定の基本になるでしょう。なおブラック求人の具体的な見抜き方については、のちほど詳しく紹介します。

ブラックな求人に違法性はないのか

さきほどブラック求人という話が出ましたが、ブラック求人とは、ようするに「募集時の条件と実際の労働契約の条件に大きな違いがある」求人です。普通に考えれば、虚偽の条件を提示しているわけですから、なんらかの違法性があるように思えます。

しかし、提示された労働条件と実際の条件が異なっていても、現実的にはその違法性を問えないケースがほとんどです。職業安定法をみると、虚偽の広告や虚偽の条件で労働者を募集した場合に、罰則を設けています(第65条第8号)。

ところが求人広告に載せる労働条件はあくまでも「見込み」扱いであり、転職者と企業側の合意があれば、求人内容と異なる条件で雇用しても問題ないのです。

ブラック求人では、雇用条件通知書が書面で発行されることはまずありません。実際には口頭で条件を提示されているだけであり、入社する段階ではじめてブラックな労働条件を知らされます。

ここまで話が進んでしまうと、すでに前職を退職している人は、もはや後戻りできません。だから、やむを得ず、ブラックな条件を受け入れてしまうわけです。相手の弱みにつけ込むこういったやり口は、違法性がないとしても、決して許されるものではありません。

ブラック求人を見抜く3つのポイント

ブラック求人を見抜く3つのポイント

募集時の条件と実際の労働契約の条件に大きな違いがある「ブラック求人」、誰だってそんな案件に引っかかりたくありませんよね。

さいわいポイントさえ理解していれば、ブラック求人を見抜くのは比較的簡単です。ここでは、ブラック求人を見抜くポイントを3つほどご紹介していきます。

  • 募集サイクルでブラック度がわかる
  • 抽象的な説明が多い求人は要注意
  • 高収入・残業なしなど条件がよすぎる求人も危険

ひとつずつ見ていきましょう。

募集サイクルでブラック度がわかる

ブラック求人は、なんといってもその「募集サイクルの短さ」が特徴です。ひどい企業になると、求人案件を常時出しっ放しというケースも少なくありません。

こういった募集サイクルの短さは、大きく2つの理由が考えられます。

  • 入社してもすぐに辞めてしまう
  • 募集しても人が集まらないのでいつも応募せざるを得ない

このご時世、労働環境がよければ、社員はある程度長期スパンで働いてくれます。それなのに、入社してもすぐに辞めてしまうのは、労働環境になんらかの問題があるからです。

そういった状況が続けば、「あの会社はブラックらしい」という評判が立ち、ますます人が集まらなくなります。

もちろんホワイト企業でも、状況によっては募集サイクルが短い場合もあります。しかし、いつ見ても求人募集が載っているような会社は、基本的になにかしら人が集まらない理由があると考えておくべきです。

抽象的な説明が多い求人は要注意

転職雑誌や転職サイトに書かれている説明文は、専門のライターによるものがほとんどです。ライターはプロですから、条件の悪い内容もうまくオブラートに包み、ブラック求人とはわからないようにまとめてくれます。

下記は、ブラック求人でよくみかける問題フレーズです。こういった一見聞こえのいいフレーズが連呼されている求人は、かなりの確率でブラックだと思います。

【ブラック求人によくあるフレーズ】

  • 当社はアットホームな会社です
  • 飲み会や社員旅行など福利厚生も充実
  • 夢に向かって一緒に成長できる会社です
  • 当社は少数精鋭の会社です
  • 経験よりもやる気を評価!

※注:上記の表現があれば、必ずブラック求人というわけではありません

また、やたらと横文字を繰り出してくる企業も要注意です。「シニアセールスアドバイザー」「フィールドスタッフ」など……これ、単なる外回り営業マンですよね。

もちろん「ファンドマネージャー」や「CIO(最高情報責任者)」のように、本当に上級ポジションの場合もありますから、その判別には少々注意が必要です。

いずれにせよ、こういった言葉のマジックに騙されないためにも、わからない言葉は必ず確認しましょう。

高収入・残業なしなど、条件がよすぎる求人も危険

ブラック求人で圧倒的に多いのが、「高収入や残業なし」といった、好条件でのオファーでしょう。残念ながらこういったブラック求人は、待遇のよさで求職者を引き寄せ、実際には安い給料しか払わないケースがほとんどです。

もし、そのまま相場より高い給料がもらえるとしても、理由もなく高賃金を約束してくれるわけがありません。「仕事はハードで毎日遅くまで残業」「休日もしょっちゅう出勤しなくてはならない」など、厳しい労働条件の対価でしか、好条件はありえないのです。

また会社によっては、月給制ではなく、年俸制にしているケースも少なくありません。年俸制自体はまったく問題ないのですが、年俸制は結果が出せないと契約更改で著しく待遇が下がります。

ブラックとまではいきませんが、よほどスキルや経験のある人以外は、できれば避けたほうがいい報酬体系といえるでしょう。

ブラック求人を紹介するダメ転職エージェントを見抜くには?

ブラック求人を紹介するダメ転職エージェントを見抜くには?

転職者の多くは、「転職エージェントを利用すればブラック求人は紹介されないだろう」と考えています。しかし転職エージェントのなかには、正直あまり対応のよくない会社もあり、盲目的に転職エージェントを信頼するのは感心しません。

ブラック求人に騙されないためにも、対応の悪いダメ転職エージェントの見抜き方をしっかりと知っておく必要があります。

ダメ転職エージェントの特徴

ひと言で転職エージェントといっても、各エージェントごとに、対象とする年齢層や職種は大きく異なります。もちろん取り扱う案件も千差万別で、自分に合わない転職エージェントを利用すると大変です。

以下に、一般的なダメ転職エージェントの特徴をあげてみます。

  • ブラック企業ばかり紹介される
  • 登録したのに全然案件を紹介してくれない
  • 案件へ応募したのに返事がない
  • 以前勤めていた会社や、自分で応募してNGだった企業を紹介される
  • 担当者の対応がいいかげん

まずダメ転職エージェントは、「ブラック求人」だとわかっていても、基本関係なく紹介してきます。こういう転職エージェントにとって、転職者の満足よりも、成約という実績が大事だからです。

もし、上記のような兆候を感じたら、すぐにでも別の転職エージェントに乗り換えてください。このまま転職活動を続けても、はっきりいって時間のムダです。

ダメ転職エージェントは対応が悪い

前述のとおり、ダメ転職エージェントはとにかく対応が悪いです。転職者の今後よりも、自分たちの実績が大事なので、親身になって対応しようという意識が不足しています。

そのためこういう転職エージェントを利用すると、「なかなか案件を紹介しない」「連絡が遅い」など、転職者のイライラは募るばかりです。

私自身も以前転職エージェントを使って転職した経験があるのですが、驚くことに1度も担当者と顔を合わせることなく、転職活動を終了しました。

幸いなことに転職は成功しましたが、この担当者とはたった1回、電話で15分ほど話しただけ。今のようにコロナ下での制限もなく、いつでも会える状況だったにもかかわらずです。

その時はたまたま成功しましたが、こんな不誠実なサポートで貴重な転職活動の時間を失うとしたら、非常にもったいないと思います。余談ですが、その後転職先で採用担当責任者となった私は、このダメ転職エージェントを利用することは二度とありませんでした。

ブラックかどうかは、担当者次第な面も

ダメ転職エージェントといっても、会社そのものではなく、担当者の対応に問題があるケースも少なくありません。そういう意味でいうと、転職の成否は担当者の質で大きく変わってくるといえます。

担当者レベルのよくあるトラブルとしては、以下のようなものがあるようです。

  • 「ブラック求人」と知っていながら勧めてくる
  • 転職者の話をよく聞かない(とくに今後の希望やこれまでの経緯)
  • マニュアルに沿った杓子定規な対応
  • 転職者の都合を考えない強引な日程調整
  • 紹介された案件を辞退すると連絡が途絶える
  • 案件の応募後に、条件変更を伝えてくる

転職サイトの評価情報をみても、こういった担当者レベルのトラブルは、判断が困難です。あくまでも個人的経験則からの対策ですが、上記に当てはまる場合、「担当者を代えてもらう」もしくは「そのエージェントと距離を置く」しか方法はないと思います。

ミドルシニア世代は年齢に合った転職活動をすれば、ブラック求人を回避できる

この記事をお読みのかたは、40代以降の、いわゆるミドルシニア世代が多いと思います。正直にいって、ミドルシニア世代は、ブラック企業の格好の標的となっています。30代よりも求人数が少ない状況に焦ってしまい、冷静になれば決して申し込まないようなブラック求人に、飛びついてしまうからです。

たしかに、40代ともなれば、20〜30代のようなたくさんのチャンスはありません。転職市場の中心は20〜30代ですから、こればかりは仕方がないと割り切るべきでしょう。とはいえ40代以降であっても、じっくり探せば納得できる条件での転職は十分可能です。

大事なのは、若手と争わず、ミドルシニアならではの強みをいかに企業へアピールできるかだと思います。ではその強みをどうやって見つけていけばいいのでしょうか。

弊社では40〜50代に限定して、成功する転職準備のやり方についてのZoomセミナーを、無料で随時開催しています。ブラック求人に騙されないためにも、ぜひこういったセミナーで、ミドルシニアの転職の仕方を身につけてください。(もちろん20代でも30代でも、参加はOKです)

もしブラック企業に転職してしまったら

もしブラック企業に転職してしまったら

ここまでブラック求人や、ダメ転職エージェントの見分け方をお伝えしてきました。それでももし、ブラック企業に転職してしまったら、まずは会社の上司や経営者と話し合いになるでしょう。

しかし、ブラック企業の社員に相談しても、状況が改善される見込みはほとんどありません。ただ、そこで諦めてしまうと状況はそのままです。

「これはいくら話をしてもムダだな」と感じたら、今回紹介するしかるべき機関に、なるべく早く相談してください。

まずは労働基準監督署に相談

労働基準監督署は、「労働基準法」や「労働契約法」などに違反する企業を取り締まるための公的機関です。ブラック企業といえば、労働条件が違法なケースも多く、労働基準監督署に相談するのは本来ものすごく有効な手段といえます。

しかし実際のところ、労働基準監督署はなかなか動いてくれないことが多いようです。とくにパワハラなどのケースは、管轄外として積極的には対応してくれません。

とはいえ残業代の未払いなど、労働基準法に関する問題であれば、ブラック企業に対して「是正勧告」をしてくれるはずです。是正勧告は無視されてしまえばそれでおしまいですが、それでもなにもしなければ状況はまったく改善しないでしょう。

とりあえず労働基準監督署へ一度相談にいき、その対応次第で次の手を打つというのが、ブラック企業対策のファーストステップになるかと思います。

こじれそうなら弁護士に相談

労働基準監督署に相談しても改善しない場合や、不当解雇のようなケースでは、弁護士に依頼するのがもっとも確実です。弁護士が間に入れば、相手も法律という土俵に上がるしかないので、ひどい労働条件をムリやり押しつけるやり方は通用しなくなります。

また、実際の交渉や裁判の対応はほぼ弁護士がおこなうため、あなたの精神的な負担はほとんどありません。強いていえば、20〜30万円の弁護士費用がネックといえますが、回収する未払い残業代や慰謝料などで相殺できるはずです。

ただ、弁護士に依頼して法的に解決したとしても、そのまま働きつづけるのは相当ストレスがかかるでしょう。転勤や部署替えなど、違法ではないやり方で、あなたに報復をしてくる可能性は高いです。そうなれば、ムリしてその会社で働くのはあまり得策ではありません。

体を壊す前に転職しよう

もし本当にブラック企業でツライ待遇を受けているのであれば、一刻も早く会社を辞めたほうがいいかもしれません。なかでも40代後半から50代の世代は、注意が必要です。

20代と違い、この世代の多くは、「最低でも同じ会社で3年は働くべし」という価値観をもっています。しかし我慢してブラック企業に3年勤めても、なにも得るものはありません。これは断言します。

仕事はまた転職すればいいのです。40代を過ぎても、しっかりと戦略を立てれば転職は十分可能です。それよりもムリをして体を壊したら、転職もできなくなります。

ちなみに、どうしてもスムーズに辞められないと思ったら、「退職代行サービス」を利用するのもひとつの方法です。

まとめ

今回は、ブラック企業が出す「ブラック求人」と、「ダメエージェント」について詳しく解説してきました。

ポイントさえつかめば、求人情報をみるだけで、その求人がブラックかどうかはわかるようになります。自分の転職エージェントがそういったブラック求人を紹介するかどうか、しっかりとチェックしてみてください。

それでも運悪くブラック企業に転職してしまったなら、迷わずに行動しましょう。体と心さえ無事ならば、いくらでも再転職は可能です。決してムリだけはしないようにお願いします。