第32回「業務改革も基本はグローバル係」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり15年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で6年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第32回「業務改革も基本はグローバル係」

ある日本を代表する大企業から、「業務改革×ICT」と言うテーマで、経営幹部外部招聘の依頼を頂き、鋭意サーチ中です。その過程で「業務改革」も基本はグローバル、と痛感しています。

「内部昇格であっても外部招聘であっても、業務改革やシステム刷新と言う仕事は、CEOの全面的なバックアップがないとできない仕事。CEO自らいろんな局面で何度となくしつこいくらいに“彼が言っていることは俺が言っていることとイコールだ”と言い切るくらいでないと。
ITによる経営改革、業務改革が何故継続できたか。それは20年近く前から、取締役会と経営会議の下に、意思決定機関ではなく、環境認識・情報及び問題共有・意見交換の場として、IT戦略会議を設置し、その継続があってこそ今がある。二か月に一度、二時間、CEO以下、営業、生産現場、企画管理の各部門トップとシステムの主要メンバー20名程度で徹底議論というベースが、その後の改革を可能にしたと思っています。
基幹システムの変更に関しては最初の一歩がとても大切。海外をやるからには日本独自を捨てる覚悟をまず決めること。本当に価値あるカスタマズ、オリジナリティかどうか。基本はビジネスにおいてはグローバルスタンダードを採用すべき。そこを最初に全社で確認すること。」

「業務改革、つまりBPRは現場が一番抵抗する。最初からトップを巻き込んで、現場の責任者も出る会議体を作り、そこで最終全てトップ決裁で進める。それでも必ず現場からは揺り戻しがくる。それを押し返しつつの仕事になる。
それと全体最適、効率化、業務標準化を進めると、一部の部署にひずみがくる。それを予め想定して、今回のBPRの意義とそれにかける自らの想いをトップに語ってもらいビデオに録り、現場に配布する。それくらいやらないと駄目。
それとトップと、経営企画を巻き込むことも大切。個別部署とは等距離でいないといけない。
弊社がなぜ上手くやれたか。それは成功事例をまねたのではなく、数多くの失敗事例を集めて、それを教訓とし、世界標準のパッケージソフトに業務を合わせることを徹底させたから。
ユーザー主導でやると結局、効率化も標準化も進まない。実は前回あるERP導入時に経理部主導でやって、大失敗した教訓あり。それを踏まえての今がある。 その上で今後のシステム部門の課題は、基幹系対応から、より顧客に近いフロントへの対応に移ってきていると言うこと。これは基幹系以上にトップの強い意志が必要。」

「BPR、業務改革のツールとしてICTは有効。会社の中を良く知っている人だと実はBPRは上手くいかない。個別業務やそれに関わる人に対して、知れば知るほど正論では進めなくなるし、幹を決めても枝葉をバサバサと切り落とせなくなる。しがらみや経緯を知っていることはプラスには働かない。だからこそ外の人の力が大切。
そもそも、業務改革して、システム化するのが王道のように聞こえるが、これで上手くいった例を知らない。
本気で業務改革やるなら、世界標準のERPソフトに業務を合わせるべき。ちょっと目を離したすきに、作りこみやカスタマイズを始めてしまうが、それを原則全て排除することが大切。
基幹はそのソフトがあるので、後はその周辺の個別対応をどこまで容認するのか。本当にその後使うのか。使わないなら手作業にする。システム化しない。そう言うことまで含めて、トップを巻き込んでやることが大切。
BPR、つまり業務改革はトップの覚悟が問われるし、これをやり切るには外の力は必要。そういうやり切ることに生きがい感じているタイプが良い。」

今後の更なる海外展開や、海外の企業買収を前提とした際に、業務自体をグローバルなシステムでサポートできる標準に揃えておくことこそが大切と。つまりは業務改革も基本はグローバルな視点から、です。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。