第31回「企業と個人の関係」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり15年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で6年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第31回「企業と個人の関係」

日本の大企業人事を経て、複数社の日系外資双方の人事部門を経験された方のお話は、企業にとって、今後のグローバル展開を支える人事制度をどうするかと言う話であるとともに、個人の働き方、生き方は今後どうなるのか、どうあるべきか、と言う点で示唆に富んでいたので共有させて頂きます。

「従来の日本の人事制度は、環境が穏やかな時には良いが変化の時代には対応できない。そもそも日本人にはライフスタイルと言うのが無く、皆で同じ方向を向いて走り、何だかんだ言って皆、お金の為に働いている。地位が上がり、給料が増えることを楽しみに働いている。

しかし会社がもう給与に見合う仕事を用意できなくなっている。一方で中高年はそれまでの知識経験を今の仕事におけるパフォーマンスに結びつけられなくなっている。従って中高年世代においては、マネジメントポジションを上がっている人以外は、給料下げざるを得なくなっている。

そもそも欧米の企業では、新しい知識を身に付けなれば生きていけないし、そうでない人は給料が下がると言うのは常識なのだが、何故か日本だけはまだかなり色濃く年功序列が残っている。日本企業で人事のグローバル化をすると言うことは、これを根底からひっくり返す仕事になる。

まさに人と組織の世界に“黒船来襲”と言うのが現実なのに、まだそれを明確に認識している会社が少ない。上に上がらずとも自分の領域でちゃんと学び続けて仕事をすれば60歳でも65歳でも働ける。しかしそれさえしない人は職を失う、そう言う時代になることを皆が明確に認識すべき。

そして企業は、社員の戦力化の為にトレーニングを施すと言うのは勿論のこと、この個人が成長する機会を提供し続ける会社であることが、結果としてその社員の価値を上げ続け、総和としての会社の価値を上げ続けると言うこともまた、明確に認識すべき。

そしてその視点から逆算して、新卒も中途も採用すべきことは言うまでもない。
こういう人と組織の在り方を理解し、行動に移して頂けるリーダーを、是非、数多く生み出して下さい。」

重い言葉ではあるが、この想いは真っ直ぐ受けとめて今後も精進したい。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。