第30回「人事の方への警告」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり15年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で6年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第30回 「人事の方への警告」

エグゼクティブサーチファームや転職エージェント等々の方々には、仕事の邪魔をするなと、お叱りを受けそうだけれど、日系外資双方の相応のサイズの企業の人事の方への警告です。

御社の第一選抜の人達のモチベーションコントロールは大丈夫ですか?

これは私の目から見て、間違いなく、当該企業の社長候補の一人であり、少なくとも役付役員レベルまでは行くであろうと言う方々のコメントです。

「今回はお声かけ頂き有難うございます。正直、今までも中村さんのような方とお会いする機会は何度もありました。しかし、それはどこか興味半分、それと将来何か起きた時の為、でしかありませんでした。しかし、今日は違います。
つい最近、会社としては実は若返りを図ったんです。しかしそれで各ポジションの責任者クラスと言うのが、自分の少しだけ上の世代になってしまって、そうすると自分が求める成長の機会が数年、この会社の中には無いと言うのが明確になってしまったので、であればそういう機会を頂ける可能性は、積極的に話を聞いてみたいと思っています。」

「はい、会社からは十分すぎる説明を受けました。しかし、会社の期待値に自分のやりたいことを合わせなければいけないのか、そこが釈然としないのです。20代や30代の時は、何事も経験だと思って積極的に未知のこと、未経験のこともトライしました。
しかしこの歳になると、一人のビジネスマンとして、業界トップレベルで戦える仕事以外をするのは、それは会社にも自分にも果たして正しい選択なのかと、素直にそう思ってしまうわけです。
それは専務にも人事担当の役員にも説明しましたが、彼らは“更に高い地位で仕事をしてもらうために、どうしてもこのポジションを経験して欲しい”の一点張りです。
であれば不振子会社の経営陣として出して頂いた方がまだ自分としては納得がいくのですが。
と言うことで、その気持ちはありがたく受け止めつつ、また自分をそれなりに世の中で評価して頂ける****にして頂いたことにも感謝しつつ、やはり自分の人生ですから、自分のこれまでの経験が活きる場を探したいと思っていますので、宜しくお願いします。」

「ご無沙汰しています。中村さんとお会いするようになってもうかれこれ10年近いですよね。 実はこうして会社の階段を上がってくると、ここから先はある程度見えてきています。 かと言って**系でない自分は社長にはなれません。つまり副社長までです。 そうやって考えて行って、その席に何年座れるかと考えた時、当社には役員定年制があるので、自ずと見えてくるわけです。 率直に言うと、意外と短いな、と。であれば、一度、集中的に外の機会を積極的に聞こうと、そう考えていますので、是非、宜しくお願いします。」

いずれも、当該事業会社の人事の方にとって、簡単に答えが探せる話ではないと思いつつ、なかなか考えさせられるコメントだったので、共有させて頂きます。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。