第39回「若い人からの学び」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり16年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で7年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第39回「若い人からの学び」

39歳でこの業界に入り、次の5月には17年目になる。駆け出しの頃は、お会いする人はほぼ皆さん年上で、ひたすら学びの日々だったことを思い出す。

そうこうしている内に、いつの間にかお客様である社長も、担当役員の方も、同世代の方が増え、そして最近、候補者のターゲットとしては、40歳代は当然のこと、元気な成長企業だと執行役員クラスでも30歳代をターゲットとする依頼も増えて来た。

当初は、そう言う若い方達とお会いしていると、面談の最中、ふと、もうすぐ30歳になる長男の顔が思い浮かび、「あいつにさえロクにちゃんとビジネスとか、キャリアの話なんかしたことないのに」と、少しドギマギすることがあったが、それはそれ、やはりプロとして対峙すべきと思い直し、やっと最近はそう言う心の揺れも減ってきた。

そしてその30代、40代前半から半ばまでの方達と話していると、新卒入社後、今の年齢に至るまでの時代背景等があまりに違うことが、人生観とか、仕事観にこんなにも大きな影響を与えるのかと思うことも多々ある。
そう言う違いが、最初は驚きでもあり、その内そこに楽しみも発見し、そして最近は素直に学ぶことが増えている。

彼らの世代で仕事ができると言う評判の方々にお会いすると、これはその上の世代とも共通ではあるが、良く現場が見えている。しかも当然の如く主体性を持ってチームを引っ張るが故に成果を出しているのだろうが、何故、どうして、これまで実績を挙げて来たのかを問うと、説明が妙に客観的というか、因果関係まで明確に説明頂ける。それも聞いていて心地良い方が多い。

まだ絶対数が十分では無いので確定的に言っていいのか悩ましいのだが、スポーツの世界の解説やコーチングの変化に通じるものがある。確かに、元気溢れて、擬態語や擬音語盛り沢山な解説、コーチも場を盛り上げるには必要だと思う。しかし、人を育成し、組織を強くするには、それにも増して、冷静に分析し、何故を追求し、数値を元に因果関係を明確に語られると、その言葉の納得性が違い、結果も違う。

これまでもずっと仕事が出来ると言われる方々との会話の中で、同じようなことを感じることは多々あったのだが、今までとは違って良い意味で冷めている彼らのそれに触れるにつれ、もっと早く彼らを上にあげる機会を増やしても良いのではと感じることが増えている。
そしてその新しいタイプのリーダーを、一世代上のメンバーが如何に支えるか、そんなことも考え始めて良いのでは、そんなことをここ最近何度となく思い、確信を持つにはまだまだ彼等との面談の質と量が足りない為、本件は続編ありと言うことで。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。