第4回「企業は何を見ているか」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり14年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で5年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第4回「企業は何を見ているか」

転職をするということは、新しい会社に入るということ、迎えて頂くということ。
では、その時、その企業は何を見ているのか。そんな視点から今日は少し。

<ある大手企業幹部がライバル会社のことを評して。>
「新卒採用からして違います。是非は別問題ですが、最終面接段階で、あの会社は学生のプライドとか自信を木端微塵にして、大半は泣かせるそうです。それを超えてぜひと言ってくる学生だけ採るようにしているそうです。いや実は自分も泣かされてしまって、今この会社にいます。ウチは優しいんですよ。見栄とか虚飾もわかって認めてくれる。どちらが良いかはわかりません。それがひいては社風の違いでしょうから。
けれど、採用にかけるエネルギーは明らかに向こうが上ですね。中途でもそうでしょう。弊社は経験とか技能に重きをおいていますが、彼らはエネルギーレベルとか、地頭の良さとか、根本的な力が判断基準ですものね。それを判断するのってすごく難しいとは思いますが、少なくとも若い人たちの採用ではそのほうが正しいと思うし、幹部職でも、絶対に忘れてはいけない視点ですよね。」

<著名IT企業、元日本法人代表の話。>
「何故あの会社が強いのか。やはり、徹底して優秀な社員の採用にこだわり、そして仕事は彼らに任せる、これに尽きます。どういう基準で選ぶかはともかく、入社後は週に一回30分のミーティングのみ。それも上意下達でなく、むしろアジェンダは部下からという世界ですから。
実は少し考えればわかりますが、本当に優秀な社員じゃないと機能しないということです。しかも、全ての議論はデータに基づいて行います。勘や経験での議論だと、シニアな人が優位になるので、それでは互いの時間を取る意味がありません。それで360度評価をして、データもすべて公表しますので、その仕組みを前提とした上でチャンと機能するレベルの人を採用するとなると、それは皆真剣です。」

<あるスタートアップ企業を成功に導いたCOOの話。>
「組織を強くする最大のポイントは採用です。ちなみに5年間、毎年10名の採用に2000名前後のレジメを集め、自ら毎月最低20名は会って、月に一人、それでも年間では10名程度、率先垂範で必死に採用しました。
基準はただ一点、本当に一緒に働きたいか。それを真面目さというか、最後まで逃げずに努力するかという視点で。過去最も苦しかったことを聞き、それをどうやって乗り越えたかを、しつこく詳細に聞けば、ギリギリまで仕事した経験があるかどうかはわかる。絶対に逃げないことが全て。話を聞いていて軽い人は必ず逃げる。自分で責任取らない人の言葉はどこか他人ごとに聞こえる瞬間がある。
そして最後にこの会社で何をしたいのかを聞く。それがきれいごとではなく、コンサルファームっぽく理路整然としている必要も無く、腹の底からそう思うまで考えてきたんだなと思える話が聞けるか。そうじゃないときは「ごめん、それはウチではできないんだけれど」と突っぱねてみるとすぐ本気度もわかりますから。」

ちなみに今回のテーマは、インタビューに備えましょう、という話でありません。イザという時のために、日々、何をすべきか、そのヒントだと思って頂ければ幸いです。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。