第3回「プロフェッショナルな経営者からの質問」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり14年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で5年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第3回「プロフェッショナルな経営者からの質問」

転職なんかする気は無いから、と思っていても、新卒で入った会社でビジネスマン人生をまっとうできるわけではなくなった今、日々何を考え、いかに生きることが自らの市場価値を上げるのか。そのヒントとなる話を今日は少し。

オーナー系とは言いつつも、メーカーであり、二代目、三代目となるとそれほど厳しくも無い、と思っていた会社に、ある日、プロフェッショナルな経営者がやってきた時、ある役員の方からうかがった話です。

——数か月は顧問という立場で、社内の会議に出たり、現場を回って若い人や女性の声にも耳を傾けたりで、何も言わないので少し拍子抜けしていたら、個別ミーティングが始まった。それも役員と部門長を順次片っ端から。

——「自分はこの業界のプロではないので、その自分にわかる言葉で説明して欲しいのだけれど」と前置きされた上で、いきなりの質問攻め。

——「何年今の席に座っている?」「いつまで座るつもりなのかな?」「次はどのポジションに行くつもりで仕事している?」「今のポジションのミッションは何?」「それをまっとうするために必要な能力と経験は?」「自分には何があって、何が足りない?」「足りない部分を埋めるために何をしている?」等々矢継ぎ早に質問される。

——一段落したと思ったら、「次はどのポジションに行くつもりで仕事している?」、で答えたポジションに関してまた、「そのポジションのミッションは何?」「それをまっとうできるようになるために必要な能力と経験は?」「今の自分には何があって、何が足りない?」「足りない部分を埋めるために何をしている?」と怒涛の質問が続く。

——想像に難くないが、同じようなレイヤー全員に、同じ質問をされていくと、当然のごとくこの時点で一次評価が下されてしまうのだと思うと、途中から脂汗が出始めた。

——そして何とか乗り切ったと思ったら、新たな質問が始まった。
「自分の今のポジションの後継者は誰を予定している?」「一人、足りないよね。少なくとも二人以上で競わせないと。二人目、三人目はどこから探してくる? 社内? 社外?」。そして「その唯一の候補者に関して同じこと聞くけど」と言いつつ、「彼には何があって何が足りない。」「足りない部分を身に付けさせるためにどういう機会を与えている?」「それで何年後に彼をこのポジションに上げるのかな?」「彼にとってそのポジション以外で魅力的なポジションは無いのかな?」「このポジション以外に彼が成長するために経験すべきポジションは何?」等々また質問が続く。

——正直、今まで自分なりに真面目に仕事をしてきたつもりでしたが、この面談が終わった後、頭を思いっ切り殴られたくらいの衝撃を感じつつ、けど妙に清々しかったのを覚えています。

今の会社は、今の上司は、このような質問をあなたに投げかけてくれますか。
もしNOであれば、年に一度は真剣に考えてみて、出来れば口に出し、文字に落としてみることを薦めます。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。