[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり15年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で6年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。
第23回「定点観測と変節」
ある業界大手企業経営者からの一言。
「もし自分が変節したと思ったら必ず言ってくださいね」と。
「どんな経営者のもとで仕事をするのがお勧めですか?」と聞かれ、「経営者にはいろんな欲があると思うのです。金銭欲、支配欲、名誉欲、事業欲等々。それにオーナー経営者の場合は後継者としてのご子息への愛情みたいなものも出てきます。当然、経営者と言う方々は人一倍そういう欲が強い方だと思ってお付き合いしていますから、かなりの極論、暴言でも私は驚きません。但し、私は事業欲が一番強い経営者のもとで働くことをお薦めしています。
もっとも、そういう経営者であれば結局問われるのは本当に仕事ができるかどうかですから、いつにもまして真剣に、候補者の能力、経験を見極めて紹介します。
但し、紹介時点では明らかに事業欲が最も強いと思っていた経営者の方でも、会社のステージや、外部環境、それにご年齢等で変節されることがあるのも事実です。
従って紹介させて頂いた方には、明らかにそうなった際には必ずご連絡下さいとお伝えするようにしています。」との回答に対して、まさに間髪を入れず、である。
加えてその方の「時間があれば現場を見て回っている。それも必ず毎年決めてみている所がある。そうすることで経営判断に大切な変化を自ら感じることができる」と言う言葉に「定点観測が重要と言うことですね。」と返したら、「そう、だから中村さんもちゃんと定点観測してくださいよ。仕事の依頼していないときに半年毎と言うのは短いかもしれないけれど、少なくとも一年は空けずに来て下さいね」と。
この言葉が私のような職業の人間をどれだけ勇気づけるか、わかっての発言なのか、それとも本音なのか、いずれにしても凄い経営者であるのは間違いない。
けど言えるかな、もしそんな状況が訪れた時、「最近、ちょっと変節されているような印象を受けますが」と。もっともこの方であれば、自ら気付いて席を立たれると思うのだが。
(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。