[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり16年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で7年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。
第41回「オペレーションを極める」
業種業態や年齢に触れるだけでわかってしまいかねない方の話なのだが、それでも共有したく。
その方からの学びは、オペレーションを極めると言うこと。それもマネジメントとして。彼の言葉を出来るだけ匿名性が担保できるように修正して記します。
「まず個人としての仕事のスタンスとして、数字に対してコミットしてやり続けると言うこと、これが一番。店舗開発時代、それは自分が必達と決めている結果から、プロセスを逆算して、それを徹底的に数値管理し、その上で、効率的な方法も日々トライアンドエラーを繰り返しつつ探求し続けた。」
「店舗開発としてのマネジメントにおいては、最初にマネージャーになった時に、その課での年間契約を倍増した。これは『プロセスの見える化』を徹底し、ノウハウ共有して、誰でもできるようにした結果である。その後、これを全社展開し、元々その業界の人を中途で採用して、個人の裁量任せにしていたのだが、今では新卒プロパーで成果をチャンと出せる職種になった。」
「店舗開発も店舗運営も、突き詰めていくと『共有化』で成果を出してきた。熟練した職人でなくても、仕事ができる体制、仕組み作りをすれば数値は劇的に良くなり、安定する。それ故に、自分が離任した後も、その部門の数字は暴れない。」
「店舗開発は実は数字のモチベーションはあるのに、何をやるべきかが正直曖昧な職種だった。それで出店基準として数百の項目の中から、論理的、合理的に重要な項目をまずピックアップし、その上で、それを全員に周知徹底して、各重要項目に拘ってプロセス管理をする。それはまず課員自身が、そしてマネージャーが。」
「『今月はどこが契約になるんだ』では部下の仕事は見えて来ない。これをやっていると結果ありきで、守るべき重要項目を妥協して、結果作った店の生産性、効率が下がり、店を作るのが怖くなり、腕が縮むと言う悪循環になる。マネージャーは部下の仕事のプロセスをどう管理するか。それが最も重要。」
「これに対して店舗運営はやるべきことはもうわかっている。従って、如何にエリア担当が、そして店長やスタッフがやる気になるか、それを徹底して考えた。それと2:6:2とか2:7:1とかの議論はせず、やるべき仕事とそれによって達成できる数値にだけフォーカスした。下の2とか1を詰めても仕方ないし、真ん中の6とか7も序列にフォーカスすると危機感もひっ迫感が生まれない。
けど、やるべきことがわかっている仕事について、『ここまでのことをやれば、ここまでは行く』と言うことを事前に互いに認識し、それでいざGOとやると実は195/200位はその数字に行かない。けどそこで激昂するのでもなく、淡々と、『ここまでのことをやれば』のプロセス管理を徹底させる。
ここで大切なのは、『やらせる』ではなく、彼らが自らやっている感覚にすること。その為には店舗見学とコミュニケーションが大切。どんなに管掌する店舗の数が増えても、丁寧に見て回って、良いことも悪いことも、出来れば良いことは特に、フィードバックを小まめに、積極的にする。」
「ちなみに店舗開発から、最初に店舗開発のゾーンマネージャーとして着任した時に、店を見て回り、徹底した『現状分析』をすることから始めた。仕事の9割は現状分析だと思っている。これを徹底してやると、やるべきことが同時に見えてくる。『何をしよう』の前に、徹底して現状を調べる。環境が変わっても迷わずまずは徹底した現状分析、これから仕事はスタートする。」
この方から伺った話は、多店舗展開をする業種業態の方にとっては、福音書とでも言うべき話であり、もっとリアルに、もっと躍動感を持って伝えたいのだが、匿名性を犠牲にはできないので、上記でその一端を理解していただければ。
(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。