第12回「キャリアインタビューからの学び」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり14年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で5年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第12回「キャリアインタビューからの学び」

先日、ある経営者の方のキャリアインタビューを行った。彼はオーナー経営者ではないが、その会社の現在の姿があるのは、彼の力によるところが大きく、社名は誰もが耳にしたことのある会社である。

きっかけは、「そろそろこの会社での仕事も一段落したので次の機会を探し始めようと思うのだが」と相談を受け、職務経歴をまとめて頂くよう依頼したところ、「実はエージェント経由での転職は遠い昔に一回限りなので、書いたことが無く、どうしたものか」と。

数年前にある方のご紹介でお会いして、人材採用のご相談も頂いたことがある方ではあったが、改めてインターネットで彼自身のことを調べようとしたら、その会社の知名度とは裏腹に、極めて限られた情報しかなかった。
そこで約2時間のキャリアインタビュー。その時間を通じて痛感したのは、若かりし頃からの圧倒的な当事者意識と、それゆえに全ての経験が今現在も使える引き出しとなっているということ。それと一緒に働く仲間達への尊敬の念と、絶妙な距離感。

やらされた仕事の当事者意識は低く、仕事の記憶も曖昧である。しかし自らが主体的に取り組んだ仕事は、仮にそれが新人時代の外部セミナーへの参加であっても、将来の血肉になる。
そして上のポジションに上がる過程でも、自ら経験済のジュニアなポジションにいる人、そして自分が未経験な領域でより顧客に近い現場にいる人、そういう方々とのコミュニケーションを厭わず、いやむしろ積極的にそういう場を作り、そして先入観無しに彼ら、彼女らの想いを受け止める。
そして人生の岐路においては、ある意味冒険的な選択にも見えかねないが、チャレンジングな選択をする。リスクリターンは明確に分析しつつ。
責任あるポジションに着いた際に、経営課題を時空間的に広大に俯瞰する力とともに、時間軸に沿って優先順位をつけ、それを自ら率先垂範して徹底する意志と能力。

こういう全てのベースにあるのが、繰り返しになるが圧倒的な当事者意識と、一緒に働く仲間たちへの尊敬の念、そしてその彼ら彼女らとの絶妙な距離感である。

当事者意識を持って経験したことしか、結局のところ活かせる経験値にも、使える能力にもならないということを再認識するとともに、より身近で平易な言葉でそのスタンスを形容するなら、困難な局面さえも“楽しむ”、それはにこやかにという表層的な意味では無く、心の有り様として、ということに尽きるなと改めて痛感した時間だった。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。