第17回「グローバル化にむけて」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり15年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で6年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第17回「グローバル化にむけて」

人事シリーズ第二弾。今日はある外資系人事の方からの学びを共有します。以下は彼の言葉を私なりにまとめたものです。心からの彼への感謝の念を込めて。

『本社のヘッドクォーターやアジアパシフィックのHR(人事)の責任者に日本人が少ないのは何故だろう。
日本市場が大きく、日本法人も相応のサイズがあるからその中で満足しているのではないか。
シンガポールや香港のメンバーは最初から所属組織の外に見開いている。キャリアアスピレーションがあるので、日々の仕事、生活が違う。
弊社でも日本法人の売上利益貢献は高いのに、リーダーのロールを果たしている絶対数が少なすぎる。リーダーシッププログラムに乗っている人が少ない。

日本語と言う特殊な言語、日本人と言う均一な価値観、日本的な極めてユニークな商習慣の中で培った意思決定、そしてそれを身に着けているリーダーが、グローバルな拠点を一体感を持ってやるにはすごくハンディがある。
それ故に普通に自然体にではなく、本当に日々意識して努力しないとグローバル化は進まない。

まずはコミュニケーションの受発信から。
そして海外の社員の採用育成、そして彼らとのコミュニケーションと。やることは沢山ある。

ちなみに外資系を複数社経験して言えることは、グローバルな経営、HRが上手くいっているかは社員の質を見ればよくわかる。
良い人を現地でちゃんと採用できているか、社内でプロモーションの機会があるのか。
HQに行くチャンスが開けているのか。
そういうことが結局、その国々でもジョブマーケットにおける位置を決め、新卒中途含め採用できる人のレベルも決めてしまうと言うことが、実感として今は言える。そして突き詰めていくと、その社員の質が経営の数字を決めていく気がする。

日系企業の現地法人のHRの悩みは、ブランドが弱いと良い人が採用できない。
採用できても社内にキャリアパスがないのでやめていく。
けど、組織が小さいから仕方ない、上に日本人がたくさんいるから仕方ない、の堂々巡り。

そう考えると、経営管理職のポジションが、子会社、買収された会社の人たちにもオープンであるということが大切。海外と海外で動く、海外から日本の本社に動く、そしてまた外に出ていく、その流れができると組織は変わる。
それもただ単に転勤を可能とするだけではなく、意思決定の場がオープンになっていて、そこが閉ざされていないと世界中の拠点が認識できるようになることが大切。

そう考えると、日本の本社を本社とひとまとめにしないで、日本向けの事業を統括する組織と、グローバルな事業を統括する組織にちゃんと分けて、後者はやはり英語を標準語にしないと。これができると人の流れもスムーズになる。

ここを分けずに全て英語化までする必要はないと思う。だって前者の少なくとも現場の人には必要ないですし、グローバルな本社機能のポジションを目指さないと言う選択肢もあって良い気がします。
日本の本社の中枢の人は学歴も高く、頭も良いので決めてしまえば必ず何とかなると思います。

ずっと日本に軸足を置いてきた企業が、グローバルに軸足を移すのは明確なモチベーションが必要。
海外マーケット攻略だけでは必ず行き詰まる。
AとBは違うということから学べる次元を超えて、違うものが一体化することで到達できる世界がある。
けど最初の5年はAとBでシナジーを生むことが大切と割り切って。そう言うステップバイステップで良いわけですが。

日本企業の海外M&A失敗の原因もここにある。
主要な人材が流出してしまってからでは遅い。
極論すると最初からうまくなんかやれないんだから、買収時の経営陣にリテンションボーナスをガバッと提示して3年はいてもらい、学ぶことは学ぶと徹したら、意外と見えてくるものじゃないかと思う。

つまるところグローバルに本当に人を動かしてリーダーを育成できるか、日本人以外のリーダーも育て、リテンションできるかは、「本社がグローバル化しているか、本気でしようとしているか」×「本人がグローバルな経験をどれだけしているか、それを望んでいるか」だと思うし、そこを確認しながらであれば、失敗からも学ぶことは大きい。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。