第18回「傾向と対策」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり15年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で6年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第18回「傾向と対策」

久しぶりに私の仕事の話を少し。

新しいお客様や久しぶりの訪問先で、最近はどんな依頼が多いですかとよく聞かれる。
それに対して最近よく使う枕詞のようなフレーズが次の通り。

「所謂リプレイスは、経営トップから部門長クラスまで、当然のごとくいつの時代もあります。
それを別にするとここ数年、特徴的なのは、お客さの依頼が大きく3つに分類できるということです。

国内の人口が減り始め、高齢化が進む。それを踏まえて、これまで出ていなかった海外に出る、もしくはこれまでやっていなかった事業領域に出る。
それに際して最初のくくりは、まさにWhereどこで?、そしてWhat何を?をやるのか、それを決める部門の強化。
具体的に言うと経営企画や経営戦略統括部門での人材ニーズです。

2つ目はそれを決めた後のWho、まさに誰がそれをやるのかと言う相談です。
当然のごとく未知のエリア、未知の事業領域なので、そこでの知識経験を有した人が欲しいということです。
これはマネジメント人材の場合もあれば、技術者のこともあります。
ちなみに、この二つまとめてとでも言うべきなのが、海外事業統括や注力事業の役員のリプレイスの場合です。

そして最近、まさに流行り言葉になりつつあるのが3つ目のくくり、グローバル人事と言う言葉に象徴される相談です。
この言葉自体をバズワードだと言う人もいますが、買収した会社の経営陣、もしくはそこに新たに迎え入れた方を如何にリテンションするかであるとか、そもそものプロパー社員は当然のこと、社内外に広く人材を求め、如何にリーダー候補を発掘し、機会を与え、より優れたリーダーを如何に早く、数多く輩出するかと言う経営課題の解決を託せる人はいませんか、と言う相談です。」

そして、これもまたよく聞かれるのが、「その個々の依頼は難易度が違うと思うのですが、それはそれとして例えば一か月にどのくらいの人に会われるのですか?」「候補者探しのポイントは何ですか?」等々。
その答えはいつも同じ。この業界に足を踏み入れた最初の会社のトップの教えを未だに大切にしていますと。

まずは絶対的な数をこなすと言うこと。
「月間100アポ、年間1200、三年で3600のアポをしんどくてもやり切れば、名刺が少なくとも2000枚は集まる。そうすれば、もしその時点で俺のことが嫌いだったら、この会社出て行っても、お前はもう十分一人で食べていけるようになっているから。」

そして質。「どんな依頼でも必ずその世界の一人者に会って話を聞くこと。そして中途半端に顧客の期待値を自分で判断せず、上から順に紹介すること。拳銃だって弓だって、照準は上から合わせるだろう。一緒だ。」
この会社で7年半お世話になり、そしてこの業界に入って15年目の今も、愚直にこの通りとは言わないまでも、いつも心の指針にしている。

そしてもう一つ忘れてならないのは、そう言う方々から伺った話を可能な限りメモを取り、会社のデーターベースに入力すること。
メモを取り、後から再度まとめると言うのは、社会人1年目からの習慣である。
私の最初の会社でのことを知る人は、そんな習慣は会社としては無かったはずと言われるが、これは入社後に配属された最初の支店で、飛びぬけて仕事の出来る先輩達を目にして、「あ~ぁ、どんなにあがいても一生敵わないな」と思いつつ、それでも戦うためには、と考えて以降、ほぼ一貫して続けている。
これが結果、今の仕事においても、的確な候補者の方を探し出す為だけではなく、そのお会いした方々の実力を把握する大きな助けにもなっている。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。