第16回「他山の石」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり15年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で6年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第16回「他山の石」

数千億規模の上場企業の役員として、数年前に紹介をした方との会食の席で。
ちなみに彼は超アグレッシブで、いつもビジネスを如何に拡大するか、もしかすると寝ている間にも考えているかもしれないタイプ。その彼が珍しく愚痴を。

中村さんの紹介ではない旨確認しているのですが、この春に他社から来た役員が酷い~と。
「自分には甘く、部下には厳しい典型で、かつマイクロマネジメントで部下のやる気をそぐ。」
「自分では仕事取って来られないくせに、部下の仕事の成果を横からかすめ取り、挙句にその当該部下を、仕事の進め方が悪いとか、会議の仕方が下手だとか言って貶める。」
「部下の意見を聞き、部下に考える習慣をつけさせ、そして自ら言い出したことに対してやらせてみて育てようとしている管理職を、部下に舐められて管理できていないと上席者に告げ口する。」
「タイトルで場を仕切りたがり、実のある話が出来ず、場がシラケる。」
「会議の場で、専門領域以外の事業に関して、バクとした否定的な意見を言って勝ち誇る。」
「必要以上に部下を同行しての企業訪問をしたがる。顧客からあれは何と、言われてしまう状況が起きている。」
「そのくせ自分では何も決めようとしない。責任を取ることを回避しつつ、成果は自分のものに、と言うのがある意味天才的。」
「本人は同行をしたがっているが、部下からその声がかかることは既に皆無になっていることを本人は自覚していない。」
等々。

僅か十数分程度だっただろうか。機関銃の如くファクトを列挙して、「あ~、スッキリした。すみません、こんな話につき合わせちゃって。大丈夫です。ちゃんと駆逐しますから(笑)」と。
そこからはまたひたすらビジネスの話。まさに立っているものは親でも使えではないが、専門外の私の人脈でも使えるものは使いたいと言わんばかりに話が続き、「よし、また明日からガツガツ行きますから」と、ニコッと笑ってお別れ。

良いよな、この性格。
この性格は見習って、彼が珍しく愚痴った方は、他山の石としようっと。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。