第19回「部門の利益と会社の利益」-中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

リクルートエグゼクティブエージェント 中村一正氏の連載コラム「キャリアを考える」

[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり15年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で6年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。

第19回「部門の利益と会社の利益」

言葉は少し古いが、二人の著名な経営者を支えた“参謀”の言葉を二つ。仕事に取り組むスタンスの参考まで。

「彼から学んだことはとても大きい。
着任して、個別のリーダーを自分の目線で見極め、自分やその部門の都合優先のマネージャーを片っ端から外して、後任には会社としてのゴールに真っ直ぐな人材を配置した。

そして末端の社員とまで、長い時間ではないが頻繁にコミュニケーションをとっていた。PCの稼働状況で深夜まで仕事している社員を確認すると、わざとらしくなく、まるでたまたま通りかかったようなふりをして激励していた。そういう意味では人たらしであり、本当に良い人かは別ですし、本当は悪い人かもしれませんが(笑)、それでも赤字の会社を半年で黒字にしたその時の手腕は学ぶことが多かった。

年、半期、四半期の振り返りの際に激励することも当然大切だけれど、人のやる気に拍車をかけるのは、本人の努力が実った瞬間に一声かけてやることだと、身に染みて学んだ。」

「何故この企業グループの大改革が上手く行ったのか。何故そこまで全体を俯瞰できるのかと改めて問われてみて、自分のことを言えば、決して先天的な何かではなく、会社で学んだことが多いと思う。

ある管理部門のマネージャーとして最初の大きな統合をした時も、プロジェクト自体は事業部から来たメンバーが進めるので、自分は昔のサッカーで言うスイーパーに徹しようと。誰かが全体を見ていないと物事は上手く進まないし、その全体を見ている人が、いざと言うときは決めないとね。

財務にしても、法務や監査、内部統制の仕事も、その部門の立場でモノを言うのではなく、会社として進めるべき事業であれば、それを上手く進める為にはどうすべきか、自分に何が出来るか、と言うスタンスで仕事をした。

そうすれば事業サイドのメンバーにとって自分はうるさい管理部門の人間では無く、自分の仕事をサポートしてくれる人間になるので、結果的にその後かなり強引にグループ大再編を進める際にも、味方が数多くいて、その結果上手くいったと思う。今振り返るとそう言うことかな。」

念の為に一言。部門利益と、会社全体の利益のどちらかを優先すべきかと言う際に、管理部門であれば、ルールを守ることが重要なのは言を俟たないことは言うまでもないが。


中村一正

(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。