[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり14年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で5年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。
第2回「転職とスペシャリスト」
ジョブホッパーなる言葉がある。ゼネラリストと言う言葉もある。これを、もう少し具体的に考えてみるためのヒントとなるコメントを一つ。
ある事業領域のマーケッターとして著名な方と……
——50歳を前にしてこれだけ転職していると、周りにはジョブホッパーと呼ばれるが、自分の職種はずっとマーケティングであり、日本○○(事業領域名)株式会社の中で異動しているような感覚。外資だと、どこへ行っても違和感は無い。
——むしろ新卒で入った日系大手の同期とかを見ていると、ジョブローテーションという名のもとにいろんなことをやらされ、結局何もスペシャリティが無くなっていて、遠からずポストオフになるけれど、プレイヤーとしては時代遅れになっていてどうしたものかと悩んでいる。管理職としても中途半端で外にも出られない。
——そもそも日系企業の組織上の問題点として、こうしたジョブローテーションを繰り返すことで、主要な部門の役員や部長にその道の素人が座っている。自分のいた会社のマーケティング本部長はこの前まで子会社社長で、それ以前は営業畑。結果、外部のプロの力を借りっぱなしになっている。
——しかもそういう素人がレイヤー重ねて座っているので、判断が異常に遅い。そもそも競合外資と違って社内でプロの判断が無い。そのくせ部門の縦割り意識が強く、営業部門がマーケティングへの理解が無かったりする。
——そういうカルチャーの中で育つと、職業としてのプロフェッショナリズムよりも、所属している会社の属性により色濃く染まるので、結果的に転職する際も、転職者を受け入れる際も苦労する。
と言いつつも、先日の面談時の最後に彼は「しかし、この年になると、今一度日系企業で何か役に立てないかと思う。変わるという意識さえ明確なところであれば。」とも言っており、これはある意味で本音であり、外資系勤務者が、45歳、50歳以降をいかに、そしてどこで働くかという難しさの裏返しでもあるのだろうけれども。
この問題は、組織と個人のあり方に関して多くのヒントを与えてくれるので、他のコメントも今後掲載していきます。
(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。