[中村氏より]
エグゼクティブ領域の紹介事業に携わるようになり15年目。
最初の9年間は縄文アソシエイツ、ハイドリック&ストラグルズと純粋なヘッドハンター。
そして今はリクルートグループにいますので、リテーナー以外にも、成功報酬型でのサービスも提供できる状況で6年目。
この連載は、そんな私が日々残している、クライアント企業や、キャンディデートの方々との面談メモをベースに、企業名、個人名が特定できないよう配慮しつつ、記述させて頂いております。
第25回「成長の機会」
ある退任された経営者の方との会話から。
「もうフルタイムで勤務することはないと思う今だからこそあえて言うけれど、もっと厳しい激しい経営者の下である時期を過ごしていたら、もっと違ったリーダーであった自分がいそうな気がするんだよね。
例えばこれまで中村さんのような方たちから、何度となく、日本電産やファーストリテイリングと言うような外部人材の採用に積極的な会社の紹介を受けてきたんだけれど、その中には本当に高いポジションの人を高い年収で採用してくれる会社として、ある意味ビジネスで割り切って紹介しているんだろうなと言う人もいたし、一方で会社のことや経営者のことを本当によく調べて、下手したらそこの社員と言うか、人事担当の役員より、会社や経営者のことが好きなんだろうなと思うコンサルタントの人もいた。
自分が悪いのはそういうところに目が行ってしまって、自ら働く場としてそういう著名な経営者の方々の会社を考えきれなかったということなんだけれど。
けどやはり、経営トップと言うのは「成長」を必死で求めるべきだと思うし、それに向けて全精力をつぎ込むべきだと今更ながらに思う。
「売上至上主義の弊害」とか「成長が全てを癒すなんてのはありがちな議論ですね」なんて言うやつがいるけれど、後輩達に何を残せたかと考えた時に、やはり「成長」こそ企業経営者は真剣に追求すべききと今更ながらに痛感するね。
急成長している会社は、絶えず社員一人ひとりが自らの能力をストレッチすることが求められるし、他では考えられないくらいの年齢で組織をマネジメントせざるを得ないポジションに就かされ、そこである時は成功し、ある時は失敗し、けど、仮に失敗していてもそれをとがめている余裕なんかないくらい成長していればまた次の機会が与えられて、そうして会社が成長する。
繰り返しになるけれど、その過程で自ずと社員が、特に中間層が、自らの能力を極限まで出し続けるしかないポジションが生まれ、そして人が育っていくことでさらに会社が強くなり、成長が加速する。そういう好循環が生まれる。
それは当然、直線的では無く、ある時は停滞する局面もあるかもしれないけれど、やはり誰よりもまずリーダーが「成長」を自らに、そして自らの会社に課していたら、それは必ず末端の現場まで伝わるから。
仮にオーナー経営者では無く、組織人として偉くなった人でも、そういう熱量を持っている人が、組織のトップにはつくべきだと今改めて確信している。
だからこそ、若い人達から相談を受けたら、そういうリーダー自体が日本では希少なんだから、そういう機会はただ世の中の風評だけでなく、自らの成長の機会として、真剣に考えてみたら良いとアドバイスするようにしている。」
(株)リクルートエグゼクティブエージェント シニアディレクター
1984年野村證券入社、中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事。その後外資系生保会社へ転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年、外資ビッグ5の一角であるハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと、一貫してエグゼクティブサーチ業界。小売・サービス、消費財を中心に、業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系中堅成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。