Vol.1 ピエール・エルメ・パリ・ジャポン株式会社
フランスの高級パティスリーブランドとして有名なピエール・エルメ・パリ。東京青山の本店をはじめとしてデパ地下・高級ホテルなどに出店し、百種類以上ものフレーバーバリエーションのマカロン、チョコレート、ケーキなどが大きな話題と人気を集めています。
同社は、実は日本で始まった会社。フランスで活動中だったピエール・エルメ氏に注目したホテルニューオータニが招聘、1998年にエルメ氏とルデュ氏、そして現在はフランス本社のCEOを務めるシャルル・ズナティ氏の三人で出店しスタート。第2号店は東京ディズニーリゾート内のイクスピアリ、第3号店がパリへの出店と、日本に深く根を下ろしている企業です。
——今、会社はどんなステージに来ていますか?
1998年に三人で作った会社ですが、今は全世界で600人以上、日本だけでも200人弱の会社になりました。私自身は、元はパティシエ。ピエール・エルメと一緒にお菓子を作っていました。必要に迫られて経営を手がけるようになり、財務もマーケティングもブランディングもやってきました。しかし言ってみれば、形としてはお菓子屋さんの延長線上で会社が大きくなってきたようなものです。しかし、ここからもう一段、企業として成長しようとすれば、他の分野で経験を積んできた専門家が必要になってくると思っています。(ルデュ氏)
——どんな分野の専門家が必要ですか?
財務や人材教育、製造、IT化対応…いろんな分野で専門家の眼が必要になってくると思います。特に財務、数字のコントロールはより重要になってくると思います。(ルデュ氏)
——そのような専門家の採用を検討する際、年齢は関係ありますか?
当社はまだ若い会社です。実務レベルでの経験者が足りません。年齢に関係なく若い社員を教育できる人材が必要です。また、ステージアップしていくためにはビジネスモデル・出店施策・仕事のやり方、すべての面で経験に基づいてロジカルにつくっていける人が必要です。(ルデュ氏)
若い社員で力を合わせて事業をつくっていますが、結果を残してきた方の経験は、これから重要になってくると思います。(松本氏)
——専門性のほかに重要なことはありますか?
パッションと自分のキャリアについてのビジョンです。採用活動でがっかりするのは、この二つをしっかりと持っている人が少ないことです。いきなり休暇やポジションなどの条件から話してくる人が少なくない。(ルデュ氏)
ミドル以上の方の応募でも、何よりも最初に「土日は休めるのか?」と聞いてくる人が多く、本当に驚きます。もちろん、休みは重要ではないということではありませんが、仕事を選ぶ基準として違和感を覚えます。(松本氏)
私たちは、この会社でなぜ働きたいのか、この会社と想いを一つにできる理由は何か、そして、もし自分が入ったらこの会社のためにどんな貢献ができるのかを語って欲しいのです。(ルデュ氏)
ブランドへの憧れだけで申し込んでくる方もいらっしゃいます。しかし、私たちが求めるパッションというのは、そういうことではありません。ピエール・エルメ・パリで働くかどうか以前に、仕事自体へのパッションや、仕事を通じて実現したいことは何かを聞きたいと思っています。それがあれば、たとえ当社がキャリアの通過点であっても良いのです。
面接をすると皆さん、それまでのお仕事での「実績」ばかりを語られますが、その実績を上げた背景にある、その方自身のパッションや力を知りたいと思います。(松本氏)
——先ほど専門家が必要だとのお話がありましたが、例えば財務で言えばCFOの経験者でなければダメだ、などということはありますか。
そういうことではありません。資格や肩書きではなく、実務能力です。一定の仕事をしてきた人は、何かしらの力を発揮してきているはずです。これまでにご自分が蓄えてきた能力は何かを、しっかりとわかっていて発揮してくれる人なら、資格や肩書きは関係ありません。まだまだ成長する企業ですから、むしろ肩書きや既成の概念に囚われない柔軟性が必要です。世の中の変化のスピードはどんどん早くなっています。ITの進化がそれを加速しています。15年前、カーナビはとても高価なものでした。携帯電話は通話機能しかないのにとても大きかった。しかし、いまは手のひらサイズのスマートフォンの無料ナビゲーションアプリがどこへでも連れて行ってくれる。こんなに進化するとは思わなかった。ECが進歩していけば、ひょっとしたら当社も店舗を持たなくなっていくかもしれない。あるいはいつまでもパティスリーだけの会社ではないかもしれない。そういう予測し得ない15年、20年を見据えていま何ができるかを、目の前の役割を超えて考えられることが大事です。
未来をつくるのは自分次第です。私たちがどう考え、どう動くかにかかっている。そういう情熱を持っているか、そして未来を共にできる信頼関係を育めるか、そして一緒に働いていきたいと思える人物か、ということを何より大切に見ています。(ルデュ氏)
2015年12月22日公開