キャリアアップを成功させる目標設定のやりかたとは

年初や事業年度のはじめ、人事異動のタイミングなどをきっかけに、「今年こそ◯◯を達成したい」と、目標を設定するかたも多いのではないでしょうか。

私も毎年、必ずなにかしらの目標を設定しています。ここ数年は、「1年間で10kg痩せる!」というのが、定番の目標です。ところが、実際は目標達成どころか逆に体重が増えて困っています。

普段ビジネスパーソンに目標達成の指導をしている立場として、これはさすがにまずいと思い、うまくいかない原因をじっくりと考えてみました。すると3つの原因が明らかになってきたのです。

結論として、ダイエットに失敗する理由は、そのまま私の専門であるキャリア構築にも当てはまることに気づきました。

そこで今回は、多くの人が目標を達成できない3つの理由と、うまくいく目標設定の考え方をみなさんに紹介していこうと思います。これから目標を立てたいと検討中のかたは、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。

年初の目標設定で気づいた目標を達成できない3つの理由

冒頭でもお話ししたとおり、目標の内容に関わらず、目標達成が失敗する原因はほぼ共通しているものです。こまかくみれば失敗の原因は多数ありますが、今回はもっとも大きい3つの原因について解説していきます。

  1. つい誘惑に負けてしまう
  2. 達成度の進捗確認を怠っている
  3. 目標達成を公言していない

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

1.つい誘惑に負けてしまう

ダイエットに失敗する最大の理由が、この「つい誘惑に負けてしまう気持ち」ではないでしょうか。最初は順調に進んでいた食事制限も、飲み会でつい揚げ物を食べすぎてしまい、ズルズルと元に戻ってしまった。誰でも一度や二度、こういった経験があるはずです。

精神的に疲れていれば、つい楽な方に流れてしまうのは、ある意味本能といえます。そうやって心と体を守ろうと、脳が指令を出しているのです。ただ、毎回楽な方を選んでいたら、決して目標は達成できないでしょう。

目標を達成したいなら、月並みですが、やはり「自制心」が必要です。そして誘惑に負けずに自制心を働かせるためには、適切な目標設定が欠かせません。

ドカ食いの快楽よりも、ダイエットに成功した自分が得られるメリットに魅力を感じれば、溢れる食欲もなんとか我慢できますよね。つまり、目標を達成できない人は、そもそも目標の立て方がうまくできていないのです。

2.達成度の進捗確認を怠っている

達成度の進捗確認を怠っていると、やはり目標は達成できないケースが多いですね。ダイエットでいえば、途中でどのくらい痩せているかを確認しない人は、ほとんど失敗しています。

逆にダイエットが成功する人は、毎日必ず体重計に乗り、体重(体脂肪)の動きをきちんと記録しているものです。

これはキャリアにおける目標でも、まったく一緒です。うまくいく人は、自分のなりたい姿を明確にし、手帳などにしっかりと書き出しています。また、書き出した目標はそのままにせず、進捗状況や行動のチェックを怠りません。

ただ失敗した人も、おそらく普段の仕事では、きちんと進捗を確認しながら軌道修正をしているはずです。

たしかに、自分の人生がうまくいっていない状態を自覚するのは、気持ちのよいものではないでしょう。しかし、失敗した原因を突き止めて、なんらかの修正をおこなわなければ、状況は変わりません。達成度の進捗状況を冷静に分析する精神力は、本当に重要なポイントです。

3.目標達成を公言していない

目標達成を成し遂げる人は、ほぼ100%周囲に目標達成を公言しています。「今年中に必ず10kg痩せます」と宣言して、楽な方に傾きがちな自分を律し、逃げ道を塞いでいるのです。

またダイエットを公言すれば、痩せるまでは飲み会に極力誘わないなど、自然と周囲のサポートを受けやすくなります。

これは、もちろんビジネスキャリアにおいても、なんら変わりありません。ただダイエットと違い、キャリア上の目標となると、他者の評価が絡んでくる場合もあります。

資格を取って上級職を目指すといったような場合、今の自分とのギャップが恥ずかしくて、同僚や上司にはなかなか言いづらいこともあるでしょう。

しかし目標を達成したければ、それでも積極的に、目標を公言していかなければなりません。目標を自分の中だけに留めておくと、どうしても「まあいいか……」となり、目標達成へのモチベーションが簡単に下がってしまうからです。

うまくいく目標設定のやりかた

うまくいく目標設定のやりかた

目標達成をできない原因が明確になったところで、今度はうまくいく目標設定のやりかたを解説していきます。

なりたい自分を明確にする

まずは「なりたい自分」を明確にすることが、目標設定のスタートです。内容について、とくに制限はありません。「あと3年以内に昇進する」でもいいし、報酬を目標に設定するのもよいでしょう。

ポイントは、本当になりたい自分を正直に出すことです。たとえば「夏までに5kg落とし、カッコいい自分になって彼女にプロポーズする」という目標があれば、おそらくドカ食いはしないし、キツイ運動も頑張れるはず。

キャリアの目標についても、同じように、「達成した姿を想像したら楽しくてしかたがない」ワクワクするものを選んでください。そうすれば目標達成の確率は、間違いなく大きくアップします。

ただそうなると、当然目標の難易度は高くなり、「本当にできるかな」という不安を感じることもあるでしょう。でも、たとえ不安を感じたとしても、まったく問題ありません。

今の自分が力不足だと思うのなら、目標達成までに必要な項目を明確にして、ひとつずつクリアーすればいいんです。目標達成のために必要な行動計画の立て方については、のちほど解説します。

なお、キャリア設定については、別記事で詳しく解説しています。ぜひそちらの記事も確認しておいてください。

目標を短期・中期・長期ごとに設定

目標達成が苦手な人は、目標を「短期・中期・長期」の3フェーズにわけて計画を立ててみてください。それだけでも、「いつ・なにを・どれくらい」やればいいのかが明確になり、目標と実際の行動にズレが起きにくくなります。

一般的に目標といえば、「40歳までには独立したい」というような、長期目標(数年単位)をイメージする人が多いと思います。いわゆる、将来の夢というやつですね。もちろん長期目標は大事ですが、達成時期が遠すぎるため、単体では絵に描いた餅になりやすいのが欠点といえます。

そういった欠点を補ってくれるのが、「短期目標(毎日 / 週間 / 月間)」と「中期目標(半年〜1年後)」です。

おおよその目安として、それぞれ以下のような意識で目標を設定すると、スムーズに動いていけるでしょう。

  • 短期:基礎をつくる期間と割り切り、目標の難易度は低めに設定
  • 中期:短期目標で培った基礎力を元に、行動量を増やす
  • 長期:あいまいになりがちな目標を、できる限り具体的に落とし込む

ちなみに、年初に設定する目標は基本的に年内で完結するものが多く、いわゆる中期目標に当たるかと思います。中期目標がもっとも、具体的かつ重要な内容が多くなるので、ぜひ目標をじっくりと検討してみてください。

目標を具体的な行動計画に落とし込む

目標は、あくまでも大きな指針です。そのため、目標という目的地までスムーズに到達するには、途中でやるべきことを具体的にこまかく設定する必要があります。今回は行動計画設定についての詳細な解説は避けますが、以下のポイントはできるだけ守ってください。

  • 期限を設定する
  • 具体的な数値を盛り込む
  • 行動の難易度を高くしすぎない
  • 行動量を適切に設定

なかでも留意すべきは、やはり期限数値でしょう。「来年の3月中には、売上1,000万円を達成する」というように、目標にはきちんと期限と数値を設定する人も、こまかい行動になると結構いい加減になりがちです。

結局、目標は、こまかい行動の積み重ねなんですよね。だから、行動計画にも必ず期限と数値を盛り込むように意識しないと、思うような結果は出せません。

なお、設定する行動計画は、今の自分を基準にしてはダメです。あまりにも無謀な計画は論外としても、あくまでも「理想の自分を達成するために必要な行動」という観点から、具体的な行動を決めるようにしましょう。

定期的に修正を入れる

具体的な目標設定が終わり、実際に動き出した段階で、定期的に修正を入れていきます。

まず確認すべきは、目標に対する自分の気持ちです。通常は目標の期日までに時間的距離があるため、途中で気持ちが変わってしまうことも十分に考えられます。達成したい気持ちが薄れているのに、一度決めたという理由だけで突き進んでも、決してうまくはいきません。

また、グローバル化やさまざまな技術革新により、時代の流れはますます速くなってきました。そうなると、目標達成前に、設定した前提条件が崩れてしまう可能性も考えられます。そういう場合は、おそらく目標の下方修正や、行動計画の変更が必要になるでしょう。

目標の変更は、正直面倒な作業です。状況が変われば、またイチから作り直さなければなりませんからね。しかし、それでも今の自分が目指す目標へ向けて、何度でもアップデートをしていくべきです。

目標は、将来なりたい自分の理想像。どうか、そのことを忘れないようにしてください。

仲間と一緒におこなう

目標設定や行動計画を決めるのは、あくまでも自分です。しかし自分ひとりだけでは、どうしても甘えが入りやすく、精度の高い目標設定は正直かなり大変だと思います。

そういった事態を避けるには、目標設定を仲間と一緒におこなうのがオススメです。もちろん仲間に、目標を決めてもらうわけではありません。第三者の客観的視点から、自分でも気づいていない「自分の特性や思考パターン」を探すお手伝いをしてもらうのです。

ただ身の回りにいる家族や友人をパートナーに選ぶと、どうしても普段のつきあいを通じて生まれた思い込みが、正しい目標設定の邪魔をします。

だから私たち社会人材学舎では、新しい仲間と共に学ぶ場「知命塾」を用意し、たくさんの塾生をサポートしているのです。

正しい目標設定には、正確な自己分析が欠かせません。先入観のない新しい仲間と、導いてくれる講師のサポートがあれば、きっと本当になりたい自分の姿がみつかるでしょう。

なお、いきなり知命塾には参加しづらいという人のために、「強み発見・キャリアの棚卸しについての無料キャリアセミナー」を随時開催しています。これは、知命塾で得られるノウハウの一部を、無料で体験できるものです。どうぞお気軽にご参加ください。

シチュエーション別キャリアアップのポイント

シチュエーション別キャリアアップのポイント

いくら目標設定がうまくできても、実際の行動に反映できなければ意味がありません。さらに、人によってキャリアアップを狙う場所は異なります。そこで最後に、現職・転職といったシチュエーション別に、キャリアアップのポイントをお伝えしていきます。

今の仕事で実績を積む

社内でのキャリアアップを目指す場合、昇進や給与額のアップが具体的な目標になってきます。では昇進や昇給を手に入れるには、具体的にどのような行動をしていけばいいのでしょうか。

やるべきことは限りなくありますが、まずは以下の3点を意識してみてください。

  • とにかく目に見える結果を出す
  • チームを導くマネジメント力
  • 人間関係を築いておく

社内でキャリアアップを目指すなら、まずは今の仕事で実績を上げるのが最優先事項です。人に説明できる具体的な実績があれば、社内での昇進・転職どちらの道を選んでも、間違いなく大きな武器になってくれます。

また、役職がつく年齢になると、チームを率いてプロジェクトを担当する機会が増えてくるものです。知識や経験の足りないメンバーをサポートして、いかに結果を出していくか、会社はこういったマネジメント力を非常に重視します。

そのためには、日頃から同僚や部下とコミュニケーションを図り、少なくとも嫌われない程度の信頼関係を築いておかなければなりません。

転職でキャリアアップはむずかしい?

転職でキャリアアップを目指すなら、まず自身の強みやスキルを明確にすることからはじめましょう。企業は中途採用者に対して、即戦力となるスキルや経験を求めています。従って、企業に対して自分の強みやスキルを提示できなければ、採用の確率は大きく下がってしまうのです。

自己分析が終わったら、次は転職を希望する企業(業界も含む)を徹底的にリサーチします。その会社で求められる条件と自分のスキルが合致するか、企業風土が自分に合っているか、しっかりと確認してください。

また、「できること」と「やりたいこと」のバランスを取る意識も重要です。「せっかく転職するのだから」と、やりたいことを目標の中心に据えてしまえば、やはり転職の門戸は極端に狭くなってしまいます。

できることを全力でおこない、まずは結果を出す。そうすれば、会社から高い評価を受けて、あとは自然とやりたいこともできるようになっていくはずです。

異業種でも通用するキャリアを意識しておく

現在働く会社ではなく、業界そのものに不満や不安を抱えている場合、異業種への転職が選択肢に上がってくるでしょう。とはいえ、今までと違う業界で働くわけですから、異業種でも役立つスキルを身につけておかなければ、まったくゼロからのスタートになってしまいかねません。

業界や職種が変わっても役立つスキルとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • コミュニケーション力
  • 問題解決力
  • 論理的思考力
  • 情報収集力
  • 計画作成力
  • 交渉力
  • マネジメント力

こういった、どこにいっても通用する普遍的な能力を、「ポータブルスキル」といいます。業界が変わっても、基本的な対人スキルや仕事を進める能力が備わっていれば、それほど時間がかからずに対応できるはずです。

もし現時点で自分のポータブルスキルが不足していると感じているなら、まずはポータブルスキルの充実を目標にしてください。いっけん遠回りに感じるかもしれませんが、確固たる実力がついてからでも、転職活動をはじめるのは遅くありません。

独立開業は在職中に下地をつくってから

独立開業を検討している人は、社内でのキャリアアップや転職よりも、さらにシビアな目標設定が必要になります。独立での成功は容易ではありませんし、なによりもいったん会社員としてのレールを外れてしまうと、同程度の条件で復帰するのは非常に困難です。

一国一城の主として今後の人生をしっかりと歩んでいくためにも、在職中にできる限りの準備をしておきましょう。やるべきことは際限なくありますが、まずは以下の4点を確実にクリアしておきたいところです。

  • 独立に必要なスキルの習得
  • 会社に依存しない人脈の構築
  • 家族の理解とサポート
  • 当面の生活資金の確保

スキルや人脈、開業資金については、多くの人が意識しています。ところが、家族の理解や生活資金の確保は、どうしてもおろそかにしがちです。「頑張るから家族なら応援してほしい」と、つい甘えてしまうのかもしれません。

しかし、あなたが失敗すれば、家族にも大きな影響を与えてしまいます。そのことを決して忘れずに、家族としっかり話し合い、当面の生活費をしっかりと確保しておくようにしてください。

40代からキャリアチェンジは可能か?

40代は、社会人人生の円熟期ともいえる時期です。現在まで築いてきたキャリアから外れ、転職や独立といった新しい道を歩くのは、かなり勇気が必要でしょう。

しかし、40代には、長年培ってきた経験やスキルがあります。そのキャリアを必要としてくれる場所さえ見つかれば、いくつになってもキャリアチェンジは十分可能です。

たとえば、地方の中小企業やベンチャー企業の多くは、専門知識やマネジメント能力に優れた人材の確保に四苦八苦しています。どれだけ技術力があり業績がよくても、知名度や信頼度に勝る大企業に、よい人材を取られてしまうのが現実です。

そういった企業をターゲットにすれば、過度な競争に巻き込まれず、よい職場で働ける可能性が大きくアップします。

ただし、確固たる実力がなければ、いくら人材を求めている企業でも簡単に採用はしてくれません。自分の市場価値を高めるために、前述のポータブルスキルをはじめ、常に新しい知識を学び続ける意識が必要です。

私どもが運営する「知命塾」では、社会人の学び直し(リカレント教育=仕事を続けながらおこなう、個人のキャリアアップ・生涯現役でいるための学習など)をお手伝いしています。こういった第三者のサポートを受けながら、自分に必要な能力をいつまでに身につけるのか、しっかりと目標を設定していきましょう。

まとめ

目標がなかなか達成できないという人は、まず3つの原因に自分が当てはまるかどうか、冷静に確認してみてください。

もしひとつでも当てはまるようなら、今回紹介した「うまくいく目標設定のやりかた」を実践してもらえば、必ず状況はよくなるはずです。

ただ本文でもお話ししたとおり、独力で正しい目標設定をするのは、決して簡単ではありません。知命塾のような第三者のサポートを受けて、本当に自分の望む目標設定をおこなっていただきたいと思います。