定年後を見据えて~シミュレーションの振り返り(後編)~

人生100年を見越してゴールから考えるシミュレーション

今回は前回ご紹介したAさんのケースを踏まえ、ご自身のシミュレーションをどう捉えるかを考えてみましょう。

定年後の「自由時間」は12年以上

厚労省によると現在男性の健康寿命は72歳、女性は75歳くらいと言われています。体力もあり、独立して日常生活を送れるとされる期間です。

シミュレーションでは61歳を基準にしましたので、少なくともその後12~15年間は自由に時間を設計できることになります。12年あれば23歳で就職した人が35歳になっていますね。ご自身の記憶をたどってみれば、その間には仕事・家庭などの環境に加え、ご自身の内面にも様々な変化があったのではないでしょうか。

今は一日の大半を仕事の時間に占められていると思いますので、退職したらしばらくはゆっくりと過ごし、好きなことをして日々を送りたいと考えるのもメリハリがあって素敵だと思います。また上記のシミュレーションでも、趣味などで毎日びっしりと予定が埋まった方もおられるかもしれません。

とはいえ、12年間という時間を冷静に考えた時、ずっとゆっくりし続けるのか? 趣味や旅行だけで12年間毎日過ごしていけるのか? と考えた方もおられるのではないでしょうか。

想定した必要時間は今の体感基準だったという誤算

ここでAさんが在職中に想像していた退職後の人生設計を見返してみると、予定していた行動について必要な時間数までは想定していなかった、ということが特徴として挙げられると思います。

Aさんが「やることがたくさんあるな」と楽しみに考えていた多くのことは、1日4時間弱×7日=計28時間で済んでしまいました。
これは土日の休みと平日の在宅時間をうまく使えば出来ることだった、とも言い換えられます。
つまり在職中のAさんの「退職後に悠々自適に過ごす時間」というのは、既に持っている自由時間を基準に考えていたということができるでしょう。

思い返してみれば学生時代から在職中の今に至るまで、まったく自由に、勉強や仕事から解放された時間というのはどれほどあったでしょうか。
多くの方は長くて1ヶ月程度かと思います。
逆に言うと、何もせず一日を自由に好きなことだけに使い、それを数年に渡って続ける、ということに私たちは慣れていないのです。
これこそが、Aさんの「やることがたくさんあるな」と感じたが実際は午前中だけで終わってしまった、という時間感覚の理由だったのです。

コミュニティとしての職場の重要性

また、人は多かれ少なかれ社会と関わって生きているわけですが、退職すると「社会」の内のひとつである「職場」が無くなることになります。つまりコミュニティですね。重さは違っても、家庭や地域・趣味のサークルなどと同じ「人の集まり」です。

コミュニティへの参加は楽しさとともに所属している安心感も与えてくれます。
仕事をするということはお金を得ることもさることながら、社会にコミットするための機会としても捉えることができると思うのです。職場・仕事はご自身で思っている以上に重要な「居場所」になっているのではないでしょうか。

さらに仕事で稼いだお金は(年金と退職金だけで暮らすことと比較して)自由に使っていい、という考え方も心の余裕につながります。将来にわたって十分な資金計画がある場合は別として、Aさんの例でも、当初は「多様なひとと交流する」という希望に気づいておらず、資金計画を立てていなかったことから、仕事をしていなければ今のように気軽に飲みに行ったり遊びに参加したりは出来なかったかもしれません。

このようにご自身のできること、特技、能力を活かして社会との接点を創ることで、仕事と趣味を両立させつつ、やりがいとお金という精神と物質の両面を満足させることができるのではないでしょうか。

シミュレーションを考える3つの視点

さて、ご自身のシミュレーションでは、

  • たくさんある時間を、満足できるような使い方で埋められたでしょうか?
  • 趣味や楽しみを行うために、必要な金額の予想はついたでしょうか?
  • ご家庭以外に、居場所としてのコミュニティはいくつあるでしょうか?

時間、お金、コミュニティという3方向から今一度見直してみてください。

シミュレーションのうち埋められなかった時間があったら、もしくは時間が余りそうだと感じたら、ぜひ社会に参加する行動を追加してみてください。仕事に限らず、ボランティア等でも構いません。ただしボランティアを続けるにも資本が必要なので、ご自身の希望や想いを精査して、バランスよく時間とお金を配分してみることをおすすめします。

ここまでくれば、キャリアを創る第一歩を踏み出せたことになります。
どうか「手間がかかる」などと思わないでください。キャリアを創るためには時間がかかるものなのです。ですから在職中のうちに一歩一歩進めていくことが大事なのだとお伝えし続けています。